未来のカスタマーサポート担当者に求められるのは「コントローラー型」の問題解決力

マーケティング

 これまでカスタマーサポート担当者に望ましい人は、マニュアル(スクリプト)に従い、お客様の声をしっかり受け止め、台本どおりの解答ができる人と言われてきました。しかし、単純なカスタマーサポート業務がAIチャットボット等に移りつつある今、カスタマーサポート担当者に求められる資質は全く違うものとなり始めています。以下、詳細にご説明しましょう。

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ECサイトとは、オンラインの「自動販売機」

 こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。

 このところ、ネットの浸透による「セルフサービス化」の進展について幾つかの記事を執筆してきました。

 参考リンク1:『人の介在無くしてもはや発展無し?!リアル店舗化する企業のウェブサイト』
 参考リンク2:『ネットの背後にスタッフ8人が待機。「オンライン接客」が好評なイエッティのケース』
 参考リンク3:『チャットで転職相談。1日に150人の相談にのるジョブクルの転職エージェント』
 参考リンク4:アナログの逆襲!経験豊富な対面販売員がECサイト運営で活躍しはじめているワケ

 今回は、セルフサービス化の進展によって、カスタマーサポートの仕事がますます難度の高いものになってきている中、カスタマーサポート担当者としての優れた資質が、今まで適していると考えられていた資質とは異なってきた、という興味深い事実をご紹介してみたいと思います。

 以前の記事でも指摘したように、Webサイトはユーザーが自ら情報を収集したり、欲しい製品を検索し、比較検討して自ら購入を行う「セルフサービス型」のチャネルです。

 わかりやすく言うと、ECサイトとは、オンラインの「自動販売機」だということですね。

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単純なカスタマーサポートはAIの業務領域となりつつある

 ただ、セルフサービスでは、必要な情報をすぐに見つけることができない、あるいはFAQ(よくある質問と答え)には掲載されていないことを知りたい場合、ユーザーは、「カスタマーサポート」に電話やメール、チャットなどで問い合わせることになります。

 今のところ、電話やメールでのやりとりは生身の人間が対応していますが、チャットの場合は、最初はAIチャットボットが対応し、解決できない場合は生身のオペレーターに切り替わるという仕組みが普及しつつあります。

 今後は、チャットだけでなく、電話やメールでのやりとりについても、最初のうちはAI、すなわち「人工知能」が対応するようになっていくものと思われます。

 もちろん、すべての問い合わせにAIが最適な対応ができるようになるのは何十年も先のことでしょう。当面は、どこかの時点で、AIからオペレーターへと顧客対応を引き継がなければならないケースも相当数発生するはずです。

 この場合、オペレーターは今までよりも高度な顧客対応スキルが求められることにお気づきでしょうか。もし、シンプルな問い合わせ内容なら、AIが解決してしまうはず。AIで解決できなかったということは、なんらかややこしい問題や状況が絡んでいる可能性が高いわけです。

 すなわち、セルフサービス化が進展し、またAIが賢くなればなるほど、最後に生身の人間に回ってくる応対業務は、対応が極めて難しいものになるのです。

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生身のカスタマーサポート担当者に求められる「コントローラー型」の資質が調査で判明

 現在のカスタマーサポートも、過去の膨大な対応履歴を分析して、「こんな問い合わせにはこう答えるとよい」というトークスクリプト(台本のようなもの)を作成、随時更新して一定以上の顧客満足度を得られるような対応を目指しています。

 それでも、問い合わせてくるユーザーは多種多様、複雑な性格を持つ生身の人間です。杓子定規にスクリプトを読み上げるだけでは、そうそう簡単に解決しない問い合わせが今後増えてくるものと思われます。

 さて、従来、カスタマーサポート担当に向いているのは、人の話を親身に聞くことができ、人を助けたいという意識が強い人だとされてきました。しかし、米国のコンサルティング会社、CEBが行った1440人のカスタマーサポート担当者対象の調査によれば異なる結果が得られたのです。

 同調査は、「平均顧客対応時間」といった生産性の指標、および、「顧客満足度」のようなサービス品質の指標を加味して、優れたカスタマサポート担当者のタイプが誰かを分析したところ、ユーザーの話を親身に聞ける「共感型」ではなく、話を聞くだけでなく、自分なりの意見を提示して顧客を主導し、解決に近づけようとする「コントローラー型」であることがわかったのです。

「共感型」がある種、‘受け身’の対応をするのに対し、「コントローラー型」は‘能動的’に対応するタイプ、だと言えるでしょう。

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複雑なコミュニケーションでこれからの担当者に求められるのは「問題解決」すること

 なぜ、共感型よりもコントローラー型のほうが生産性や顧客満足度が高くなるのでしょうか?それはおそらく、共感型が問い合わせてきた人の話をだらだらと聞くばかりで、肝心の問題解決をすぐに行おうとしないからでしょう。

 一方、コントローラー型は、相手の話をもちろん聞きますが、大事なのは「問題解決」だとわかっているので、できるだけ迅速に問題が解決するような提案を行おうとするからでしょう。結果的に、対応時間も短く、ユーザーの満足度も高くなるというわけです。

 前述したように、生身の人間が対応する問い合わせは、今後ますます複雑なものになってくる可能性が高いでしょう。となると、カスタマーサポート担当者としてふさわしいのはより一層、「コントローラー型」になってくるものと思われます。

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松尾 順

株式会社ジゾン
コンサルティング準備室 室長

早稲田大学商学部卒。マーケティング・プロデューサー。
ニールセン・ジャパン、CRC総合研究所でマーケティングリサーチ、コンサルティングに従事した後、電通ワンダーマンで、データベース・マーケティングやCRMの企画・プロデュースを経験。さらに、ネットベンチャーの立ち上げにも執行役員として参画した。

現在は、心理学、行動経済学といった消費者心理・行動の理解に役立つ学問分野の研究を活用し、売れる商品づくり、効果的なコミュニケーション開発に取り組む様々な企業をマーケティングリサーチからマーケティング施策の企画・運営までトータルに支援している。

株式会社ジゾンでは、CMSシェアナンバーワンのソフトウェア「HeartCore」の導入に伴うマーケティングコンサルテーションを担当している。

【著書】
『ブランディング戦略―ブランディングの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ) 』誠文堂新光社
『[実務入門] 営業はリサーチが9割! 売上倍増の“情報収集”完全マニュアル (実務入門)』日本能率協会マネジメントセンター
『先読みできる!情報力トレーニング (ビジマル)』TAC出版

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