
資金ショートは、支払いに充てる現金が足りなくなることです。赤字の会社だけの問題ではなく、利益が出ていても、支払いが入金より先に来れば起きます。
この記事では、資金ショートが起きる原因と防ぎ方、そして起きそうなときにすぐやることを、使える公的な制度とあわせて説明します。
資金ショートとは
資金ショートは、給料、仕入れ代金、借入れの返済、税金などの支払いに対して、手元の現金や預金が足りなくなる状態です。「キャッシュアウト」はお金が出ていくことを指し、資金ショートとは意味が異なります。
赤字や債務超過とは別のものです。赤字は一定期間の収益より費用が多い状態、債務超過は負債が資産より多い状態で、どちらも決算書の数字です。資金ショートは、その日に払うお金があるかどうかの問題です。決算書で利益が出ていても、支払いの日に現金がなければ、資金ショートになります。帳簿上は利益が出ているのに、資金が回らなくなって倒産することを「黒字倒産」と呼びます。
資金ショートが起きる原因
資金ショートの原因は、大きく分けて、入金と支払いの時期のずれと、予定していなかったお金の出入りです。
売上の入金より、支払いが先に来る
取引先からの代金は、契約によって、売上を計上した月の翌月や翌々月に入金されることがあります。一方で、仕入れや外注費、給料は、それより先に払います。
スマートフォンでは、下の図を横にスクロールできます。
上の架空の例では、300万円の仕事で外注費が200万円なので、利益は100万円です。ところが、外注費の支払いが5月末、入金が6月末なので、5月末には現預金が50万円まで減ります。このときに別の支払いが重なれば、足りなくなります。
売上が伸びているときほど、このずれは大きくなります。仕事が増えるほど、先に払う仕入れや外注費が増えるためです。
売上が急に減る
取引先の倒産、大口の取引の終了、季節の変動などで売上が減っても、家賃や給料などの固定費はすぐには減りません。取引先が倒産すると、売掛金そのものが回収できなくなることもあります。
納税・賞与や、急な支払いが重なる
納税、賞与、設備の故障、借入金の返済開始など、毎月はない支払いが重なると足りなくなります。前年の実績だけで資金繰り表を作ると、こうした支払いが抜けやすくなります。資金繰り表の記事では、AIに前年の実績だけで作らせた表に、納税と賞与が入っていなかった例を紹介しています。
資金ショートを防ぐ方法
資金繰り表で、足りなくなる月を先に知る
月ごとの入金と支払いを並べた資金繰り表を作り、手元の現預金が最低ラインを下回る月がないかを見ます。節約社長編集部では、最低ラインを月商の2か月分と決めています。作り方はAIを活用した資金繰り表の作り方で説明しています。
融資は、足りなくなる前に申し込む
日本政策金融公庫の融資は、申込みから送金まで1か月程度かかります。資金不足が見込まれたら、支払いの1か月以上前を目安に、取引のある金融機関や公庫に相談してください。必要な額は必要運転資金の計算ツールで、返済額は金利・返済シミュレーターで試算できます。
入金を早め、支払いを遅らせる交渉をする
取引先との支払条件(何日後に入金されるか)を短くしてもらう、仕入先への支払条件を長くしてもらう、前金や着手金を受け取る、といった交渉です。下請法を改めた取適法の対象になる取引では、受注する側への支払期日は、受領から60日以内と決まっています。詳しくは取適法の記事で説明しています。
固定費を見直す
家賃、使っていないサービスの契約、保険などの固定費は、売上が減っても出ていきます。毎月のことなので、小さな額でも1年では大きな差になります。
資金ショートしそうなときにすぐやること
足りなくなりそうだと分かったら、次の順で動きます。どれも、支払いが遅れる前に始めることが大切です。
いつ、いくら足りないかを日単位で出す
月単位の資金繰り表では、月の途中の支払いで足りなくなる日が見えません。今後1〜2か月の入金と支払いを日付順に並べ、足りなくなる日と金額を出します。
支払い先に、遅れる前に相談する
支払いを遅らせてもらうときは、黙って遅らせず、事前に相談します。給料はほかの支払いより先に確保します。
税金・社会保険料は、納期限の前に相談する
税金は税務署、社会保険料は年金事務所に相談すると、条件を満たせば、猶予制度を利用して分割納付できる場合があります。申請期限のある制度もあるので、払えないと分かった時点で相談してください。
金融機関に、融資と返済条件の変更を相談する
取引のある金融機関や日本政策金融公庫に、セーフティネット貸付などの融資を相談します。現在の借入れについては、返済額を一時的に減らすなどの返済条件の変更(リスケ)も相談します。リスケは、借入れのあるすべての金融機関に相談するのが原則です。
ファクタリングは、一時的なずれのときだけ使う
入金の見込みがはっきりしていて、そのずれを埋めるだけならファクタリングも選択肢です。ただし契約のたびに手数料がかかり、赤字の穴埋めに毎月使うと、手数料の分だけ苦しくなります。ファクタリングと融資の違いも確認してください。
資金繰りが苦しいときは、売買を装った違法な業者や、登録のない貸金業者(ヤミ金)にも注意が必要です。見分け方は違法なファクタリングの見分け方で説明しています。
資金ショートしそうなときに使える公的な制度
資金繰りの支援制度
| 制度 | 内容 | 相談先 |
|---|---|---|
| セーフティネット 貸付 | 売上の減少など、外部の要因で一時的に業況が悪化した事業者向けの融資。国民生活事業の融資限度額は7,200万円 | 日本政策金融公庫 |
| セーフティネット 保証 | 取引先の倒産や業況の悪化などで経営に支障がある中小企業が、通常とは別枠で信用保証協会の保証を受けられる制度 | 市区町村で認定を受け、金融機関か信用保証協会へ |
| 国税の 換価の猶予 | 一度に納めると事業の継続が難しくなるおそれがあるとき、申請により分割で納める。納期限から6か月以内に申請 | 税務署 |
| 厚生年金保険料等の 換価の猶予 | 一度に納めると事業の継続などが難しくなるおそれがあるとき、申請により猶予を受ける。納期限から6か月以内に申請 | 年金事務所 |
どの制度にも細かい要件があります。国税の猶予は原則として担保が必要ですが、猶予を受ける額が100万円以下の場合などは不要です。利用できるかは、各窓口に早めに確認してください。金融庁は金融機関に対し、返済条件の変更などの申込みに迅速かつ柔軟に対応するよう、繰り返し要請しています。
よくある質問
資金ショートすると、どうなりますか?
支払いが止まると、取引先との取引が続けられなくなったり、借入れの返済が遅れて金融機関から一括での返済を求められたりします。税金や社会保険料を滞納すると、財産を差し押さえられることもあります。こうなる前に、支払い先や金融機関、税務署に相談してください。
黒字なのに資金ショートするのはなぜですか?
利益は売上と費用を計上して計算しますが、現金は入金された時点で増えるからです。入金より先に仕入れや給料を払っていると、利益が出ていても現金が足りなくなります。売上が伸びている時期ほど起きやすくなります。
個人事業主も、やることは同じですか?
不足する日と金額を確認し、早めに相談する点は同じです。日本政策金融公庫の国民生活事業は個人事業主も利用できます。国民健康保険料は市区町村などの保険者、国民年金保険料は市区町村の国民年金窓口や年金事務所に相談し、上の厚生年金保険料等の猶予とは区別してください。
どこに相談すればよいか分かりません
まずは取引のある金融機関と、日本政策金融公庫に相談してください。商工会議所・商工会や、各都道府県の中小企業活性化協議会でも、資金繰りや経営改善の相談を受け付けています。
参考資料
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