
お金が足りなくなりそうなとき、銀行や日本政策金融公庫に融資を相談するか、売掛金を売るファクタリングを使うかで迷う社長は多いと思います。ファクタリングでは入金の早さがよく紹介されますが、手数料を引いた受取額や、ほかにかかる費用も確認が必要です。
この記事では、ファクタリングと融資の違いを、費用・入金までの日数・決算書への影響の3つで比べます。節約社長編集部の結論は、まず融資を検討し、融資が間に合わないときや融資を受けられないときにファクタリングを使うです。
ファクタリングと融資の違い
ファクタリングは、取引先から後で受け取る代金(売掛金)をファクタリング会社に売って、入金日より前に現金を受け取る取引です。融資は、銀行や日本政策金融公庫などからお金を借りて、利息を付けて返す取引です。ファクタリングの仕組みはファクタリングとはで説明しています。
ファクタリングと融資の比較
| 項目 | ファクタリング | 融資 |
|---|---|---|
| 取引の形 | 売掛金を売る | お金を借りる |
| 返す義務 | 売掛金の売買なら借入れのような返済はない。2社間では、取引先から回収した代金をファクタリング会社へ送る。契約による負担も確認する | 元金と利息を返す |
| 費用 | 手数料。売掛金の額に対する割合で決まる | 利息。借りた額と期間に応じてかかる。保証料がかかる場合もある |
| 入金まで | 最短で即日の入金をうたう会社がある | 日本政策金融公庫で1か月程度 |
| 審査の対象 | 主に取引先の支払い能力 | 主に自社の決算と返済能力 |
| 使える金額 | 売る売掛金の額まで | 返済能力に応じて決まる |
| 決算書 | 売掛金が減り、現金が増える。手数料は費用になる | 現金と借入金が増える。利息は費用になる |
ここからは、経営者が判断するときに差が大きい、費用・入金までの日数・決算書への影響の3つを順に見ていきます。
ファクタリングと融資の費用の違い
費用の差が、いちばん大きな違いです。ファクタリングの手数料は、1回の取引ごとに、売掛金の額に対する割合でかかります。融資の利息は、借りた額と借りている期間に応じてかかります。計算の仕方が違うので、手数料と金利の%をそのまま比べず、同じ金額を用意するのにかかる費用を円で比べます。
1回だけ使う場合
30日後に入金予定の売掛金100万円を、2社間ファクタリング・手数料10%で売ると、手数料は10万円で、受け取るのは90万円です。同じ90万円を年利4%で30日借り、1年を365日として日割りで計算すると、利息は約2,959円です。
12か月続けて使う場合
毎月の入金が支払いに間に合わず、90万円の不足が12か月続く場合を考えます。ファクタリングは、翌月に入金予定の売掛金を毎月売り、手数料を引いた受取額が90万円になる条件です。融資は、90万円を1年間借りておき、期日に元金をまとめて返す条件です。
融資の一括返済は比較のための仮定です。日本政策金融公庫の国民生活事業は原則月賦払いなので、実際の返済条件は申込先で確認してください。
90万円の不足が12か月続く場合の費用(架空の例)
2社間・手数料10%では、毎月100万円の売掛金を売ります。1年間に売った売掛金1,200万円のうち、120万円が手数料になります。取引先の承諾を得る3社間・手数料3%では、毎月927,836円の売掛金を売り、手数料を1円未満切り上げて27,836円とすると、受取額は90万円です。12か月の手数料は33万4,032円になります。融資で90万円を1年借りた場合の利息は、3万6,000円です。
どれも架空の例です。この例では、毎月のファクタリング手数料が積み重なり、融資の利息との差が大きくなります。実際の融資には保証料などがかかる場合があり、ファクタリングにも手数料以外の費用がかかる場合があります。借入れの返済方法や、売掛金の支払期日によっても条件が変わるので、受取額・期間・追加費用をそろえて比べてください。自社の数字は、ファクタリング受取額計算ツールと金利・返済シミュレーターで試算できます。手数料の相場はファクタリングの手数料で説明しています。
ファクタリングと融資の入金までの日数の違い
ファクタリングには、最短で即日入金に対応するサービスがあります。公式サイトで「最短2時間」「最短30分」などをうたう会社もあります。ただし、最短の時間は入金を保証するものではなく、書類の不備や審査、申込時刻などによって変わります。
融資は、申込みから入金までに日数がかかります。日本政策金融公庫は、国民生活事業をはじめて利用する人向けの案内で、申込みから融資金の送金が完了するまでの日数を1か月程度(土日・祝日を含む)としています。銀行の融資や、信用保証協会の保証が付く融資も、審査に日数がかかります。
融資は、お金が足りなくなる前に申し込む
ファクタリングを選ぶ理由が「融資が間に合わない」なら、お金が足りなくなる時期を早めに知ることで、融資を相談する時間を確保できます。
節約社長編集部では、手元の現預金の最低ラインを月商の2か月分と決めています。資金繰り表でこのラインを下回る月が見えたら、その月より前に手を打ちます。融資を使うなら、必要な日から逆算し、審査や手続きの期間に余裕を持って相談します。お金が足りなくなる月の見つけ方は資金繰り表の作り方で、入金と支払いのずれで必要になる額は必要運転資金の計算ツールで確認できます。
ファクタリングと融資の決算書への影響の違い
売掛金の売却として会計処理できる取引では、借入金は増えません。ただし、決算書全体で見ると、手数料によって利益が減る影響もあります。スマートフォンでは、下の図を横にスクロールできます。
融資は借入金が増える
融資で90万円を借りると、貸借対照表の現金と借入金が90万円ずつ増えます。利息は、借りている間に少しずつ費用になります。返済すれば、現金と借入金がその分だけ減ります。
ファクタリングは借入金が増えず、利益が減る
売掛金100万円を手数料10%で売ると、売掛金が100万円減り、現金が90万円増えます。借入金は増えません。差の10万円は費用になり、その分だけ税引前の利益が減ります。毎月使えば、1年分の手数料が税引前の利益を減らします。
金融機関が融資の審査で見るのは、借入金の額だけではありません。利益から借入れを返していけるかも見ます。借入金が増えないからといって、決算書がよくなるとは限りません。自社の決算書の数字は決算書チェックで確認できます。
ここでは、売掛金の売却として会計処理できる取引を前提に、税金などを省略しています。「償還請求権なし」という表示だけで扱いが決まるわけではありません。契約の内容や実態に応じた会計処理、手数料の勘定科目は、顧問の税理士に確認してください。
ファクタリングと融資のどちらを選ぶか
費用・日数・決算書への影響を合わせて考えると、先に検討するのは融資です。ファクタリングは、融資では間に合わない、または融資を受けられないときの方法として考えます。
融資が向いている場面
- お金が足りなくなる時期が、1か月以上先とわかっている
- 足りない額が、売掛金の額より大きい
- 入金と支払いのずれが、毎月続いている
- 設備や人を増やすなど、何年かかけて返すお金が必要
ファクタリングが向いている場面
- 支払いの日が近く、融資の審査が間に合わない
- 大きな仕事を受けて、仕入れや外注費の支払いが入金より先に来る。その後の入金で資金繰りが改善する見込みがある
- 創業したばかりで決算の実績がなく、融資を受けられなかったが、支払いの実績がある取引先の売掛金がある
両方を使う方法の一つは、ファクタリングで目の前の支払いを済ませ、その間に融資を申し込むことです。ファクタリングを使ったら、同じことが来月も起きないかを資金繰り表で確認し、次からは融資の相談に間に合うように準備します。
使う場合は、手数料と手数料以外の費用を含めた受取額を、複数の会社の見積もりで比べてください。売買を装った違法な業者もいるので、契約の前に違法なファクタリングの見分け方も確認してください。
でんさいの割引と売掛金を担保にした融資
売掛金を早く現金にしたいときは、ファクタリングのほかにも方法があります。取引のある金融機関で扱っているかを確認してみてください。
でんさいの割引
取引先から電子記録債権(でんさい)で支払いを受けている場合、取引金融機関で割引を受けて、支払期日より前に現金にできることがあります。必要な額だけ分けて割り引くこともできます。ただし、割り引いたでんさいが期日に払われなかった場合は、自社が支払いの責任を負います。扱いや審査は金融機関によって違います。
売掛金を担保にした融資
売掛金や在庫を担保にしてお金を借りる方法です(ABLとも呼ばれます)。信用保証協会にも、売掛金などを担保にする融資の保証制度(流動資産担保融資保証制度)があります。売掛金を売るのではなく借りる取引なので、利息がかかり、返済が必要です。条件は、取引のある金融機関や信用保証協会に確認します。
よくある質問
ファクタリングを使うと、融資の審査に影響しますか?
本記事の調査では、利用の有無だけで融資の可否を判断できる公的な基準は確認できませんでした。手数料は決算書の費用に表れるので、毎月使っていれば利益を減らす要因になります。融資の相談では、使った理由と、今後の資金繰りの見通しを説明できるようにしておくとよいでしょう。
赤字でもファクタリングは使えますか?
ファクタリングの審査では、主に取引先の支払い能力が見られるため、自社が赤字でも使える場合があります。ただし、赤字の穴埋めに毎月使うと、手数料の分だけ翌月の入金が減り、資金繰りはさらに苦しくなります。この場合は、融資の相談や支出の見直しを先に考えてください。
融資を申し込んでいる間に、ファクタリングを使ってもよいですか?
支払いに間に合わないなら、目の前の支払いをファクタリングで済ませ、融資の結果を待つことはあります。そのときは、融資の相談の場で、ファクタリングを使ったことを隠さず、その理由と、今後の資金繰りの見通しを説明してください。
個人事業主でも、考え方は同じですか?
同じです。日本政策金融公庫の国民生活事業は個人事業主も利用できます。費用と入金までの日数を比べ、支払いまで時間があるなら融資から検討してください。
参考資料
- 日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」(申込みから送金までの日数、2026年10月18日確認)
- 日本政策金融公庫「金利情報」(2026年10月18日確認)
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」(2026年10月18日確認)
- 全銀電子債権ネットワーク「でんさいネット説明資料(でんさい基礎編)」(割引・譲渡と譲渡人の責任、2026年10月18日確認)
- J-Net21「信用保証協会の仕組みと、利用するメリットや留意点について教えてください。」(流動資産担保融資保証制度、2026年10月18日確認)
- 全国信用保証協会連合会「さまざまな保証制度」(ABL保証の概要、2026年10月18日確認)
- 企業会計基準委員会「金融商品に関する会計基準」(金融資産の消滅の認識と譲渡の会計処理、2026年10月18日確認)
- 入金までの時間の例(いずれも2026年10月18日確認。特定のサービスを推奨するものではありません): ビートレーディング(法人のお客様)、PayToday
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