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法人成りのタイミングはいつ? 税金だけで決めない判断材料(社会保険・消費税・手間)

編集部
法人成りのタイミング

個人事業主が会社を作って事業を移すことを、法人成り(法人化)といいます。売上や利益が増えてくると、「いくらになったら法人にした方が得か」が気になります。ただ、得かどうかは、所得税と法人税の税率だけでは決まりません。社会保険、消費税、事務の手間、設立の費用、取引先や金融機関の見方も変わるからです。

この記事では、法人成りを考えるときの判断材料を、国税庁や日本年金機構の資料をもとに整理します。個人ごとの税額の試算はしていません。節約社長編集部は、判断材料を自分の場合で書き出してから、税理士に「法人にした場合としない場合」の試算を頼むことをおすすめします。

法人成りは税金だけで決めない

法人成りで変わることは、税金のほかにもたくさんあります。次の表で、自分の場合に当てはまるものを確認してください。

法人成りの判断材料。税金(法人税と所得税の税率、役員報酬の決め方)、社会保険(社長1人でも加入)、消費税(設立から2期の扱いとインボイス)、手間と費用(設立費用、決算と申告、登記)、取引と信用(取引先の条件、融資、採用)の5つ。

法人成りで変わること

項目個人事業主法人
利益にかかる税金所得税(5〜45%)と住民税・事業税法人税(15%・23.2%)と法人住民税・事業税。社長は役員報酬に所得税がかかる
社会保険国民健康保険と国民年金。従業員5人以上で加入義務(一部の業種を除く)役員報酬を受ける社長1人でも健康保険と厚生年金に加入
赤字の年の税金所得がなければ所得税はかからない法人住民税の均等割がかかる
決算・申告確定申告(会計ソフトで自分でもしやすい)決算書、法人税・地方税の申告。税理士に頼む会社が多い
始めるときの費用開業届だけで費用はかからない定款認証の手数料、登録免許税など

社会保険 社長1人でも加入する

日本年金機構は、法人の事業所は、常時雇用される人が事業主を含めて1人以上いれば、社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入しなければならないと案内しています。従業員を雇わず、社長が1人で役員報酬を受け取る会社でも、加入が必要です。

個人事業の事業所は、常時5人以上の従業員を雇う場合に加入が必要です(旅館、飲食店、理容店などのサービス業などを除く)。個人事業主の本人は、国民健康保険と国民年金に入ります。

健康保険料と厚生年金保険料は、原則として会社と本人が半分ずつ負担します。社長1人の会社では、会社の負担分も本人の負担分も、結局は事業のお金から払います。一方で、厚生年金に入ると、将来受け取る年金が国民年金だけの場合より増えます。保険料と給付の両方を見て判断してください。法人にしたときは、法人事業所の新規適用届と、社長本人の資格取得届を年金事務所などへ出します。

税金の仕組みの違い 法人税と所得税

税率の構造

個人事業主の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる仕組みで、課税される所得金額に応じて5%から45%の7段階に分かれています(このほか復興特別所得税、住民税、事業税がかかります)。

所得税の税率(国税庁の速算表より)

課税される所得金額税率
195万円未満5%
195万円以上330万円未満10%
330万円以上695万円未満20%
695万円以上900万円未満23%
900万円以上1,800万円未満33%
1,800万円以上4,000万円未満40%
4,000万円以上45%

法人税は、資本金1億円以下の会社などでは、所得のうち年800万円以下の部分が15%、800万円を超える部分が23.2%です(2025年4月1日以後に始まる事業年度。所得が年10億円を超える事業年度などは別)。このほか地方法人税、法人住民税、法人事業税があります。2026年4月1日以降に始まる事業年度には、防衛特別法人税も加わります。

試算は税理士に頼む

税率だけを見ると、所得が高いほど法人の方が低く見えます。ただ、法人にすると、利益を社長の役員報酬として受け取れば、そこに所得税と社会保険料がかかります。役員報酬は、毎月同じ額で払う「定期同額給与」などに当たらないと、会社の経費(損金)になりません。額を変えられるのは、原則として事業年度が始まってから3か月以内などに限られます。利益を会社に残すか報酬で受け取るかの配分で、全体の税金と社会保険料が変わります。赤字の年にも法人住民税の均等割がかかります。

こうした要素を合わせた比較は、家族構成やほかの所得によっても変わるので、この記事では「所得がいくらなら得」という目安は出しません。税理士に、法人にした場合としない場合の試算を頼んでください(頼むときに出す数字は最後の章)。

消費税 設立から2期の扱いとインボイス

消費税は、原則として前々年(法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら、納める義務が免除されます。設立したばかりの会社には前々事業年度がないので、設立1期目と2期目は、原則として免除されます。ただし、次の場合は免除されず、消費税の申告が必要です。

  • その事業年度の初めの資本金が1,000万円以上
  • インボイス(適格請求書)の発行事業者に登録している
  • 設立2期目で、1期目の最初の6か月など(特定期間)の課税売上高などが1,000万円を超えている
  • 消費税の課税事業者を選ぶ届出を出している
  • 売上の大きい会社などに支配されている(特定新規設立法人)

個人事業主のときにインボイスの登録をしていて、取引先からインボイスを求められている場合は、法人でも登録が必要になることが多く、その場合は設立直後から消費税を納めます。「法人にすれば2年間は消費税がかからない」とは限らないので、取引先との関係とあわせて確認してください。

増える手間と費用

会社を作る費用

費用株式会社合同会社
定款認証の手数料(公証人)資本金100万円未満で3万円(条件を満たせば1万5,000円)、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外は5万円なし
登録免許税(設立の登記)資本金の0.7%。15万円に満たなければ15万円資本金の0.7%。6万円に満たなければ6万円

株式会社の定款認証の手数料が1万5,000円になるのは、資本金100万円未満で、発起人が全員個人で3人以下、発起人が設立時の株式を全部引き受ける、取締役会を置かない、の全てに当たる場合です(2024年12月1日から)。このほか、紙の定款に貼る収入印紙(電子定款なら不要)、会社の印鑑、司法書士に登記を頼む場合の報酬などがかかります。

毎年の手間と費用

  • 決算と申告: 決算書、法人税・消費税・地方税の申告書を作ります。自分でやるか税理士に頼むかは法人の決算・申告は自分でできる?で説明しています
  • 給与計算と社会保険の手続き: 社長の役員報酬からも源泉所得税と社会保険料を差し引きます
  • 登記: 役員の任期が来たときや、本店を移したときなどに、変更の登記と登録免許税がかかります
  • お金の区別: 会社のお金と社長個人のお金をはっきり分けます。会社の口座から個人の支払いをすると、社長への貸付けなどとして処理が必要になります

取引先・融資・採用で変わること

税金や手間以外に、法人にする理由になりやすいのが、取引と信用です。

  • 取引先の条件: 取引先によっては、法人でないと口座を開けない、契約できないという条件があります。今の取引先や、これから取引したい相手に条件を聞いてください
  • 融資: 法人では、決算書が融資の審査の材料になります。資金の集め方は資金調達の方法で、決算書のどこが見られるかは銀行融資の審査で見られる決算書で説明しています
  • 採用: 社会保険に入っていることは、人を雇うときの条件として見られます

どれも「法人なら必ず有利」というものではありません。自分の事業で、実際に条件として求められているかを確認してください。

法人成りを急がなくてよい人

  • 所得がまだ少なく、税率の差よりも、社会保険料や均等割、決算の費用の方が大きくなりそうな人
  • 事業をいつまで続けるか、まだ決めていない人(会社をたたむときも手続きと費用がかかります)
  • 決算や給与計算の事務を自分で回す時間がなく、税理士に頼む費用もまだ払えない人
  • 取引先から法人であることを求められていない人

個人事業のまま、記帳と確定申告を会計ソフトで効率よく進めたい人は、個人事業主の会計ソフトの選び方を見てください。

税理士に法人成りの試算を頼むとき

試算を頼むときは、次の数字と情報をまとめておくと、話が早く進みます。

  1. 今の所得と見込み

    直近の確定申告書と青色申告決算書、今年と来年の売上・経費の見込み。

  2. 家族とほかの所得

    配偶者や家族の働き方(事業を手伝っているか)、給与やほかの所得があるか。

  3. 役員報酬の希望

    生活に必要な月の額。会社にどれくらいお金を残したいか。

  4. 社会保険と消費税の状況

    今の健康保険と年金、インボイスの登録の有無、消費税の課税事業者かどうか。

  5. 聞くこと

    法人にした場合としない場合の、税金と社会保険料の合計の比較。設立の時期(事業年度の始まりをいつにするか)。設立した後の決算と申告を頼む場合の費用。

税理士の費用は税理士の顧問料の相場で、探し方は税理士の探し方・選び方・変え方で説明しています。

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