
法人の決算と申告は、税理士に頼まなくても、会社が自分で行えます。ただ、個人事業主の確定申告と違い、作る書類は決算書・法人税の申告書・地方税の申告書の3つに分かれ、それぞれ使う道具も違います。
この記事では、法人の決算・申告を自分でやるときに必要な書類と道具、期限、かかる費用を、税理士に決算と申告だけを頼む場合と比べて説明します。節約社長編集部は、取引が単純で売上が小さい会社なら自分でやる選択肢もあるが、銀行から融資を受けている会社や、消費税の計算が複雑な会社は、決算と申告だけでも税理士に頼むことをおすすめします。
法人の決算・申告は自分でできるか
会社の決算と申告は、会社自身が行う手続きです。社長や社員が自社の申告書を作って出すことは、法律で禁止されていません。国税庁も、法人税の申告書はe-Taxソフトで作成・提出するか、書面で作って提出するよう案内しています。
自分でやって費用を抑えやすいのは、次のような会社です。
- 社長1人や数人の会社で、取引の数が少ない
- 売上が小さく、消費税の免税事業者か、計算が単純
- 事業所が1か所だけ
- 日々の記帳を会計ソフトで自分でしている
一方で、税金の知識がないまま進めると、申告書の作成に時間がかかったり、使える特例を見落としたりします。どこまで自分でやるかは、次の章からの書類と費用を見て決めてください。
法人の決算・申告で作る3つの書類と道具
法人の決算・申告で作る書類
| 書類 | 中身 | 作る道具 | 出す先 |
|---|---|---|---|
| 決算書 | 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など | 会計ソフト | 法人税の申告書に添付 |
| 国税の申告書 | 法人税・地方法人税・防衛特別法人税(対象年度)の申告書、課税事業者なら消費税の申告書、勘定科目内訳明細書など | 申告ソフト、または国税庁のe-Taxソフト | 税務署 |
| 地方税の申告書 | 法人住民税(都道府県民税・市町村民税)と法人事業税の申告書 | 申告ソフト、またはeLTAXのPCdesk | 都道府県と市町村 |
2026年4月1日以降に始まる事業年度は、法人税が課される普通法人などに防衛特別法人税の申告が必要です。防衛特別法人税の納付額がゼロでも、法人税と一体の様式で申告します。国税庁の申告時の案内で対象年度と別表を確認できます。
注意したいのは、会計ソフトで作れるのは決算書までで、法人税の申告書は別の道具が必要になることです。主な法人向けの会計ソフトでは、法人税の申告書は別売りの申告ソフトや、連携する他社の製品で作ります(法人向け会計ソフトの比較)。
法人税の申告書を作る道具
- 国税庁のe-Taxソフト: パソコンにダウンロードして使うソフトで、法人税を含む申告書を作成・送信できます。申告書の様式に沿って自分で入力するので、別表の書き方を理解している必要があります。ブラウザで使うe-Taxソフト(WEB版)では、法人税の申告はできません
- 市販の申告ソフト: 会計ソフトのデータや画面の質問に沿って、別表を作れるものがあります。freee申告は、e-TaxとeLTAXへソフトから送信できます。全力法人税は、e-TaxソフトやeLTAXのPCdeskに取り込めるファイルを作ります
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は、所得税・消費税・贈与税のためのもので、法人税の申告書は作れません。
地方税の申告
法人住民税と法人事業税は、本店や事業所がある都道府県と市町村へ申告します。地方税の電子申告の仕組み(eLTAX)には、無料で使えるソフトPCdeskがあります。法人住民税は、法人税の額に税率をかける「法人税割」と、資本金などの額と従業者の数で決まる「均等割」からなります。均等割は法人税の額によらずにかかるので、赤字で法人税がゼロの年でも、申告して納めます。
法人の決算・申告の期限と流れ
法人税の確定申告書の提出期限は、原則として、事業年度が終わった日の翌日から2か月以内です。期限が土曜日・日曜日・祝日に当たるときは、その後の最初の平日が期限になります。税金を納める期限も同じです。3月末が決算日なら、原則5月末が期限です。
決算整理をする
事業年度の終わりに、売掛金・買掛金・在庫・減価償却・未払いの費用などを帳簿に反映させ、決算書を作ります。
株主総会で決算を承認する
株式会社は、株主総会で決算書を承認します。社長が1人だけの株主でも、議事録を残します。
申告書を作って出す
決算書をもとに、法人税・地方法人税・防衛特別法人税(対象年度)・消費税(課税事業者なら)と、地方税の申告書を作り、e-TaxとeLTAXで送るか、書面で出します。
税金を納める
申告書に書いた税額を、期限までに納めます。
定款で株主総会を決算日から3か月以内に開くと決めているなど、決算が2か月以内に確定しない事情がある会社は、申請をして申告期限を延ばす特例があります。使えるかどうかは、税務署か税理士に確認してください。
自分でやる場合と税理士に頼む場合の費用
自分でやる場合は、会計ソフトに加えて、法人税の申告書を作る道具の費用がかかります。税理士に頼む場合は、顧問契約をせずに決算と申告だけを頼む方法もあります。
法人の決算・申告にかかる費用(年額、税抜)
| 方法 | 費用 | 注意点 |
|---|---|---|
| 国税庁のe-Taxソフト | 税務署への利用手続きは無料。通信や電子証明書などの費用は別 | 別表を自分で書ける知識が要る。地方税はeLTAXで別に出す |
| 全力法人税 | 作成は無料、申告書を出力するときに初年度の通常料金21,800円・翌年度から10,000円(事業所1か所) | 資本金などが1億円以下の会社が対象 |
| freee申告 | スターター29,800円、スタンダード48,800円 | 資本金1億円以下。スタンダードは税務調査のサポート(最大30時間分)付き |
| 税理士に決算と申告だけ頼む | 10万円〜(freee)、15万〜25万円程度(弥生)が目安 | 帳簿は自社で作る。期中の相談は含まれないことが多い |
会計ソフトを別に契約する場合は、その利用料も加えて比べてください。税理士の金額は、税理士の紹介サービスや会計ソフトを運営する会社が示す目安で、実際の金額は取引の量や頼む範囲で変わります。顧問料も含めた比べ方は税理士の顧問料の相場で説明しています。
申告ソフトと税理士の費用の差は、年に数万円から20万円ほどです。この差と、自分で申告書を作る時間(調べる時間を含む)を比べて決めてください。最初の1期だけ税理士に頼んで、申告書の作り方を見てから、翌期に自分でやるかを決める方法もあります。
自分でやらない方がよい会社
次に当てはまる会社は、決算と申告だけでも税理士に頼むことをおすすめします。
- 銀行から融資を受けている、受ける予定がある: 決算書は銀行の審査で読まれます。間違いや分かりにくい数字があると、説明の手間が増えます(銀行融資の審査で見られる決算書)
- 消費税の計算が複雑: 簡易課税と本則課税のどちらが有利か、輸出の売上があるなど
- 役員と会社の間のお金のやり取りがある: 役員報酬の変更、社長への貸付け・社長からの借入れなど
- 赤字を翌期以降に繰り越している、事業所が複数ある、資本金が1億円を超える: 申告書の作り方が複雑になり、申告ソフトの対象外になるものもあります
自社の決算書の数字が銀行からどう見えるかは、決算書チェックで確認できます。
法人の申告書を外部に頼める人
経理に詳しい知人や、税理士の資格がない会計の経験者に、申告書の作成を頼むのはやめてください。他人の依頼を受け、税務書類の作成や税務相談を業務として行うことは、税理士と税理士法人、国税局長に通知をした弁護士などしか行えず、無料でも禁止されています(税理士法52条)。
会社の役員や社員が、自社の申告書を作るのは、この禁止に当たりません。外の人に頼むときは、税理士の資格があるかを確認してください。確認の方法は税理士の探し方・選び方・変え方で説明しています。
記帳は自分で、決算と申告だけ頼む
「全部自分で」と「顧問契約」のあいだに、記帳は自分で会計ソフトに入力し、決算と申告だけを税理士に頼む方法があります。
- 日々の記帳を自分でするので、税理士の費用は決算と申告の分だけで済む
- 決算書と申告書は税理士が作るので、間違いや特例の見落としを減らせる
- 期中の相談はできないことが多いので、迷う取引は記録しておき、決算のときにまとめて聞く
翌期以降、自分でやる範囲を広げるか、顧問契約にするかは、1期やってみてから決められます。経理を自分・会計ソフト・税理士のどこまでで分けるかは経理と税金は誰に任せるかで説明しています。
税理士に決算と申告を頼むときに伝えること
決算月と売上
決算月、直近の年間売上、消費税の課税事業者かどうかを伝えます。
記帳の状況
使っている会計ソフトと、1年分の記帳が終わっているかを伝えます。
頼みたい範囲
決算書の作成、法人税・消費税・地方税の申告、勘定科目内訳明細書、償却資産の申告など、どこまで頼むかを伝え、それぞれ料金に含まれるかを聞きます。
期限
申告期限から逆算して、いつまでに資料を渡せばよいかを聞きます。決算月の直後は税理士も忙しいので、早めに相談してください。
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