
「AIを入れれば人件費が浮きますよ」。そう勧められて、見積もりを取ってみた社長も多いと思います。
節約社長編集部も、AIの利用料に毎月10万〜15万円ほど払っています。ところが、それでどれだけ作業が減ったのかは、測っていませんでした。
この記事では、AI導入にかかる費用の目安と、払った費用を回収できるかの見分け方を、編集部の実際の数字を使って説明します。
AI導入の費用はいくら?
AIの導入には、大きく3つの形があります。すでにあるツールを月額で使うか、自社の業務に合わせたシステムを外注して作ってもらうか、AIに頼んで自分たちで作るかです。費用は桁が変わります。
AI導入の形と費用の目安
| 形 | 費用の目安 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 月額のツールを使う | 1人あたり月3,000〜4,000円台 | まず使ってみたい会社。社員が数人〜数十人 |
| 自社用のシステムを外注する | 初期に数十万〜数千万円、ほかに毎月の保守費 | 決まった業務を大量にこなす会社 |
| AIに頼んで自分たちで作る | 月額のツールの料金の範囲。作る人の時間は別にかかる | AIに指示を出して仕組みを作れる人が社内にいる会社 |
月額のツールの料金は、各社が公開しています。たとえばChatGPTの法人向けプラン「Business」は、標準のシートが1人月3,850円(月払い。年払いなら月3,050円)です。ClaudeのTeamプランは、1人月27.50ドル(月払い)です。どちらも2026年9月26日時点の公式の料金です。
自社用のシステムを外注すると、作るものによって大きく変わります。発注の仲介サイトが出している目安では、問い合わせに答えるチャットボットで50万〜200万円、製品の傷を見つける検査システムで1,000万〜2,000万円です。
ただ、今は同じような仕組みを、AIに指示して社内で作れるようになってきました。節約社長編集部でも、記事の集計やサイトの移行に使う仕組みを、AIに作らせています。その費用は、この記事の後半で紹介する毎月のAIツールの利用料に含まれています。外注の見積もりを取る前に、まずAIで作れないかを試す順番をおすすめします。作ったものの手直しや安全の確認は、自分たちで受け持つことになります。
社員が数十人までの会社なら、まず比べるのは月額のツールのほうです。社員10人で使うと、月38,500円、1年で462,000円になります。
見落としやすい費用
見積もりに出てくるのは、ツールの料金や開発費だけです。実際には、次の費用もかかります。
- 人が結果を確かめる時間:AIの答えには間違いが混じります。社員10人が毎日10分ずつ確かめると、月に約33時間です。仮に時給2,500円とすると、月83,333円分になります。
- 使い方を覚える時間:最初の数週間は、慣れるまでかえって時間がかかります。
- 書類や表を揃える手間:紙の書類や、人によって形の違う表は、そのままではAIに渡せません。
- やめるときの手間:作った指示文や設定を、別のツールへ移し直す必要があります。
社員10人で使ったときの1か月(仮の数字)
ツールの料金(1人3,850円×10人)38,500円
結果を確かめる時間(10人×1日10分×20日、時給2,500円)83,333円
見積もりに出てこない「確かめる時間」の方が、ツールの料金より大きくなります。
上の例では、確かめる時間(月83,333円分)が、ツールの料金(月38,500円)を上回っています。料金の安さだけで比べると、ここを見落とします。
減った時間は、そのままではお金にならない
ここからは、節約社長編集部の実際の数字で考えます。編集部がAIツールに払った額は、次のとおりです。
節約社長編集部のAIツールの費用(税込)
| 月 | 費用 |
|---|---|
| 2026年6月 | 137,422円 |
| 2026年7月 | 105,416円 |
| 2026年8月 | 145,233円 |
8月の145,233円を回収するには、どれだけ作業が減ればよいでしょうか。仮に時給2,500円で割ると、月58.1時間です。58時間の作業が減れば回収できる、という計算になります。
ただし、58時間分のお金が戻ってくるわけではありません。作業が58時間減っても、社員の給料はそのままだからです。回収の方法には、残業代や外注費の削減、追加採用の回避などがあります。売上の仕事へ回す場合は、売上額ではなく増えた粗利で考えます。下の図では、残業代と粗利の例を比べます。
削減した時間の使い道と、回収に必要なこと(8月の145,233円の場合)
作業が減った時間時給2,500円で割ると月58.1時間分
月60時間以下の法定時間外労働には、25%以上の割増賃金が必要です。ここでは深夜・法定休日労働を含めず、割増率25%で計算します。時給2,500円なら、残業1時間で3,125円です。そのため、回収に必要な時間は58.1時間より短い46.5時間になります。売上の場合は、粗利率を30%としました。粗利率が低い会社ほど、必要な売上は大きくなります。
0円
編集部の場合、導入する前の作業時間を測っていませんでした。そのため、どの使い道でいくら戻ったのかを、数字で示せません。いま払っている額が高いのか安いのかも、言い切れない状態です。
払う前に決めておくこと
どれもお金はかかりません。導入を決める前に済ませておきます。
今の作業時間を1か月測る
AIに任せたい作業に、誰が何時間かけているかを記録します。導入した後も同じやり方で測り、差を見ます。
削減した時間を何に使うか決める
残業を減らすのか、どの売上の仕事に回すのかを先に決めます。決めていないと、時間はほかの細かい作業に消えていきます。
AIに渡す書類や表が揃っているか見る
手元にない、または人によって形が違う場合は、揃える作業が先です。
取引先との契約を見る
取引先から預かった情報をAIに入れてよいか、契約の守秘義務の条項を確かめます。
やめる条件を決める
「3か月測って作業時間が減らなければ解約する」のように、先に決めておきます。
導入しない方がよい場合
次のどれかに当てはまるなら、導入はまだ早いです。
- 作業時間を測れない、測る人がいない
- 削減した時間の使い道がない
- AIに渡す書類や表が揃っていない
- 社長の確認待ちで仕事が止まっている。この場合、AIで作業を速くしても、確認を待つ仕事が増えるだけです
よくある質問
無料版のAIツールでは足りませんか?
試すだけなら無料版で十分です。会社で使うときは、入力した内容の扱いを確かめてください。ChatGPTのBusinessやClaudeのTeamのような法人向けプランは、会社のデータを初めからAIの学習に使わない設定になっていると、各社が公式に書いています。
補助金は使えますか?
国の「デジタル化・AI導入補助金」(旧:IT導入補助金)のように、AIを含むITツールの導入に使える制度があります。対象になる費用や補助率は、枠や年度によって変わるので、申し込む前に最新の公募要領を見てください。
効果はどのくらいで出ますか?
最初の数週間は、使い方を覚える時間で、かえって作業が増えることもあります。導入前に1か月測っておけば、2か月目、3か月目と同じ方法で比べられます。
参考資料
- OpenAI「ChatGPT 料金」(2026年9月26日確認)
- Anthropic「Claude プランと料金」(2026年9月26日確認)
- 労働基準法 第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
- 厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(2026年9月26日確認)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト(2026年9月26日確認)
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