このほど国税庁は、平成26年度分の会社標本調査の結果「税務統計から見た法人企業の実態」を公表しました。消費税率8%への引き上げが、景気へ与えた影響は小さかったと国税庁は見ています。なぜそのように国税庁は強気なのか?統計の中から目立った指標を3つ取り上げてみましょう。税務のプロが解説してくれます。
最新の法人企業・実態統計がお披露目される
このほど国税庁は、平成26年度分の会社標本調査の結果「税務統計から見た法人企業の実態」を公表しました。
それによると、政府のアベノミクス「三本の矢」の効果は、良い方向へ現れた形となっているようです。
つまり、消費税率8%への引き上げが、景気へ与えた影響は小さかったと国税庁は見ています。
どのような数値を元に、彼らがこのような判断をしているのか、一緒に見ていきましょう。
国税庁が景気は回復傾向と判断した3つの指標
1)法人数の増加
平成26年度分の法人数は261万6,485社で、前年度(259万5,903社)よりも0.8%増加。
2)法人数の業態内訳でサービス業に顕著な伸び
業種別法人数の構成比で見てみると、一番多いのがサービス業(26.9%、70万2,702社)で、二番目は建設業(15.9%、41万6,214社)、三番目が小売業(12.8%、33万4,159社)の順。
反対に占める割合が小さかったのは、一番が鉱業(0.1%、3,612社)、二番が繊維工業(0.4%、11,334社)、三番が農林水産業(1.1%、28,018社)でした。
サービス業は前年の26.4%から、更に0,5%の増加を見せており、米国と同じようにサービス価格の上昇による、全体の物価高を見込んでいる。
3)欠損法人の割合が2年連続70%以下で、昨年より減少
利益計上法人と欠損法人の状況を見てみると、連結子法人の数を差し引いた260万5,774社のうち、利益計上法人が87万6,402社で、欠損法人は172万9,372社(欠損法人の割合66.4%)となっている。
欠損法人の割合が近年で一番多かったのは、リーマンショックの影響を受けた平成21年度、22年度で、割合は72.8%。
前年度の欠損法人の割合が68.2%だったところから、更に下がり26年は66.4%と著しく減少している。
法人統計は過去の指標で今の景気とは全く別物
以上により国税庁は、平成26年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたことによる、景気への影響は小さかったと判断しています。
ただし、この会社標本調査の基礎データは、全国の税務署に提出された法人税の確定申告書等に基づき、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間に終了した調査対象法人の各事業年度を参考に、平成27年7月でとりまとめられたものです。
この年は、上場企業の利益が過去最高水準であったのに対して、今年はその成長が鈍化しており、各社共に慎重な業績予想を出しています。
過去を見る上でのマクロな指標としては、役立つものかもしれませんが、そのまま鵜呑みにする必要はない情報と言えるでしょう。