企業にとって、フリーランスの個人と業務委託契約を結び、一定の業務を外注することには様々なメリットがあります。ただし、実質的に従業員のような勤務形態でありながら、費用を外注費として出して、消費税の支払を少なく済ませているとして、外注費を否認されるケースがあります。税務調査で否認されぬ個人への外注方法をご紹介します。
外注は業務効率化とコスト削減の有効手段
企業にとって、フリーランスの個人と業務委託契約を結び、一定の業務を外注(アウトソーシング)するのは、とても一般的な行為です。
特定の仕事を内製化せずに外注すれば、
- 1)雇用により発生する社会保険料や残業代など諸費用をコストダウンできる
- 2)優先順位の高い業務に社内のリソースを割けるため業務の効率化が図れる
- 3)思ったような結果が出ない場合は契約を一定期間で区切って解消することができる
といったメリットがあるからです。
中には、普通の会社なら従業員が行っているような作業を、外注契約によりまかなう会社もあるでしょう。
税務調査で外注費が給与と指摘されやすいワケ
ただし、社内の作業を外注する業務委託契約を個人と締結した後で問題が起きる場合があります。
税務調査の際に、調査官が「外注費を給与ではないか?」と指摘することが多々あるのです。
なぜ、調査官がこのような指摘をするかというと、従業員のような勤務実態があったとしても、給与を支払わずに外注費として対価を支出すれば、企業側は消費税の納税額を少なくすることができるからです。
消費税の額は一般的に、
- 売上にかかる消費税額 − 仕入れや経費にかかる消費税額 = 納付すべき消費税額
という式により決定します。
対して、
- 給与:消費税は非課税
- 外注費:消費税が課税される
となります。
具体的な例をあげてみるならば、
- 600万円(売上)✕1.08 ー 200万円(給与)✕消費税0 = 48万円(支払うべき消費税額)
- 600万円(売上)✕1.08 ー 200万円(外注費)✕消費税1.08 = 32万円(支払うべき消費税額)
となり、給与を支払うよりも外注費を支払ったほうが、会社としては消費税を16万円少なく支払えばよいことになります。
調査官からみれば、あまり面白くない事態ですよね。
外注費を否認されぬためにチェックすべき3つのポイント
このような事態を防ぐために、もしも個人へ外注を出す場合は、以下のような対策を打っておくべきでしょう。
- 1)見積書・納品書・請求書など一連の取引に存在する客観的な書類を残しておく
- 2)従業員に対して発生する拘束権(労働時間・規則)などが適用されていないことが証明できる
- 3)外注先が業務を行う上で必要なある程度の費用を外注先が負担していることが証明できる
特に、原価率が低く人件費に多額を出費する収益モデルの企業において、外注費の額が大きくなっている場合には、外注費を給与として徹底的に疑われる可能性が高くなります。
もしも、外注費が否認されて給与とされる場合、追徴課税が課されることになり、会社は大きな痛手を負うことになってしまいます。
手間も少なく気軽に頼め、コスト削減にもつながる外注ですが、最低限でもこれら3つのチェックポイントを踏まえる必要があるでしょう。