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領収書の宛名は必要?宛名なし・上様でよい場合と、会社名にすべき場合

編集部
領収書の宛名、会社名・上様・宛名なしの扱い

お店で領収書を頼むと「宛名はどうしますか」と聞かれます。「上様で」と答えてよいのか、会社名を言うなら「様」と「御中」のどちらなのか、迷うことがあります。

この記事では、領収書の宛名が税金の上でどんな意味を持つのかを、法人税・所得税と消費税に分けて説明します。「上様」や宛名なしの領収書でよい場合、会社名で頼むべき場合、宛名がない・間違っていたとき、領収書をなくしたときにすることもまとめました。

領収書の宛名は必要?法人税・所得税と消費税で答えが違う

領収書の宛名は、税金の種類によって意味が違います。

法人税・所得税では、宛名だけで経費になるかは決まらない

法人税法や所得税法は、受け取った領収書を保存することを求めています。領収書の保存期間は、法人は原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年です。青色申告で繰越欠損金が生じた事業年度などは10年になります(2018年4月1日より前に始まった事業年度は9年)。個人事業主の領収書は、青色申告で原則7年、白色申告で5年です。書類や所得の条件による例外があるため、詳しくは国税庁の保存期間の案内で確認してください。

会社や事業の経費になるかどうかは、その支出が事業のためのものかで考えます。宛名は、それを示す材料の一つです。宛名がなければ、誰が何のために払ったのかを別の記録で説明することになるので、会社名の領収書のほうが後で説明がしやすくなります。

交際費の飲食代には別の決まりがあります。1人あたり1万円以下の飲食費を交際費から外すには、参加した人や人数などを記録した書類が必要です。これは宛名とは別の記録です。詳しくは交際費と会議費の違いで説明しています。

消費税では、インボイスの記載事項として宛名が要る場合がある

消費税では、仕入れや経費にかかった消費税を、納める消費税から差し引けます(仕入税額控除)。そのためには、帳簿と、インボイス(適格請求書)などの書類を保存しておく必要があります。

2023年10月から始まったインボイス制度では、インボイスに書く項目が決まっています。その一つが「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」、つまり宛名です。ただし、小売や飲食などのお店が出すレシート型のインボイスでは、宛名は要りません。

法人税・所得税と消費税の違いをまとめると、次のとおりです。

税金領収書について決まっていること宛名
法人税・所得税受け取った領収書を保存する(法人は7年など)宛名だけで経費になるかは決まらない。事業との関係を記録で説明する
消費税(インボイス)仕入税額控除を受けるには、記載事項のそろったインボイスと帳簿を保存する通常のインボイスは必要。レシート型(適格簡易請求書)は不要

「上様」とは?上様・宛名なしの領収書でよい場合

「上様」は、領収書の宛名の欄に、受け取る人の名前の代わりに書く表記です。誰が受け取ったかは、領収書からは分かりません。

レシート型のインボイスなら、宛名なしでも「上様」でもよい

不特定多数のお客さんを相手にする次の事業では、宛名を省いた「適格簡易請求書」(レシート型のインボイス)を出せます。

  • 小売業(コンビニ、スーパー、家電量販店など)
  • 飲食店業
  • 写真業
  • 旅行業
  • タクシー業
  • 駐車場業(不特定多数向けのもの)
  • これらに準ずる事業で、不特定多数の人に販売やサービスをするもの

適格簡易請求書の記載事項は、お店の名前と登録番号、取引の日付、取引の内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)、税率ごとの合計金額、税率ごとの消費税額か適用税率です。宛名は記載事項に入っていません。国税庁は、旅館の手書きの領収書の記載例で、宛名の欄に「宛名は省略可能」「『上様』の表記も可能」と注記しています。レジのレシートだけでなく、手書きの領収書でも適格簡易請求書になります。

ですから、コンビニや飲食店のレシート型のインボイスなら、宛名が空欄でも「上様」でも、消費税の上では問題ありません。

消費税のインボイスで宛名が要るかの流れ。小売・飲食・タクシーなど不特定多数向けのお店なら、レシート型の適格簡易請求書で、宛名なしでも上様でもよい(登録番号は必要)。それ以外の取引は通常のインボイスで、宛名は会社名が必要。宛名が従業員の名前なら、従業員名簿か立替金精算書も保存する。

宛名より先に、登録番号を確認する

レシート型でも、お店の登録番号(「T」のあとに13桁の数字が続く番号)がなければインボイスになりません。宛名があってもなくても同じです。また、取引の内容が「お品代」だけでは、何を買ったのか分からず、記載事項として足りないと国税庁は説明しています。領収書を受け取ったら、宛名よりも、登録番号と取引の内容が書かれているかを先に確認してください。

なお、レシート型のインボイスでも、会社の規程で宛名のある領収書を求めている会社もあります。社内の決まりは、税金の決まりとは別に確認しておきます。

領収書の宛名の書き方 会社名と「様」「御中」

会社の経費なら、宛名は会社名で頼む

会社の経費にする領収書の宛名は、会社名にしてもらいます。国税庁のインボイスの説明資料(マンガ)でも、会社が負担するなら宛名は会社名にするよう説明しています。社長や従業員の個人名にすると、消費税の上で追加の書類が必要になります(次の章)。

お店には「株式会社〇〇で」と、株式会社が前か後ろかまで伝えます。漢字が伝わりにくい会社名なら、名刺を見せると早く済みます。登記どおりの会社名で書いてもらえば、どの会社の経費か後で迷いません。会社を複数経営している場合は、その支出をどの会社が負担するのかを決めてから、その会社の名前で頼みます。

敬称は「様」でも「御中」でもよい

インボイスの記載事項は「交付を受ける事業者の氏名又は名称」で、敬称の決まりはありません。「株式会社〇〇 様」でも「株式会社〇〇 御中」でも、宛名としての扱いは同じです。

手紙や請求書では、会社や部署あてには「御中」、個人あてには「様」と使い分けるのが一般的です。ただ、領収書は用紙の宛名の欄に「様」が印刷されていることがあり、国税庁の手書きの領収書の記載例も「様」の欄になっています。国税庁のマンガの資料でも、領収書は「A株式会社 様」、請求書は「A㈱ 御中」と書かれています。「様」が印刷された用紙に「御中」を書き足して「〇〇御中 様」と重ねることだけは避けてもらいます。

会社名の宛名が必要な領収書と、従業員の名前になっていた場合

レシート型以外のインボイスには宛名が要る

小売・飲食などの不特定多数向けの事業以外、たとえば外注先や仕入先から受け取る請求書・領収書は、通常のインボイス(適格請求書)です。記載事項は、発行する事業者の名前と登録番号、取引の日付、取引の内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)、税率ごとの合計金額と適用税率、税率ごとの消費税額、そして受け取る事業者の名前(宛名)の6つです。

この場合、宛名が空欄や「上様」では、記載事項がそろっていないことになるおそれがあります。会社名で出してもらってください。

宛名が従業員の名前になっていた場合

従業員が出張や買い物で立て替えて、自分の名前で領収書を受け取ってくることがあります。国税庁は、レシート型のインボイスでも、宛名に従業員の名前など、仕入税額控除を受ける会社以外の名前が書かれていると、そのまま保存しても控除はできないのが原則としています。

この場合は、従業員名簿などをあわせて保存すれば、書類の保存の要件を満たします。名簿などがなければ、従業員が作る立替金精算書を受け取って保存します。従業員に立て替えてもらうことが多い会社は、宛名は会社名で頼むことを決めておくと、こうした書類を足す手間が減ります。

宛名がない・間違っていたときは、自分で書き足さずにお店へ再発行を頼む

国税庁は、受け取ったインボイスの記載事項に誤りがあったときは、お店(売手)に直したインボイスを出してもらい、それを保存するとしています。受け取った側が自分で追記や修正をすることは、原則としてできません。宛名の空欄に自分で会社名を書き入れるのも追記です。

例外として、受け取った側が直し、その内容をお店に確認してもらえば、その書類を保存して仕入税額控除を受けてよいとされています。国税庁の例では、書類に「訂正事項につき11月1日先方確認済み」のように書いておきます。お店への確認は電話などでもよいとされています。

  1. 宛名が必要な書類かを確認する

    小売・飲食・タクシーなどのレシート型なら、宛名の空欄や「上様」のままで構いません。書き足す必要もありません。宛名が従業員の名前なら、前の章の従業員名簿か立替金精算書で対応します。

  2. お店に出し直しを頼む

    通常のインボイスで宛名がない・会社名が違う場合は、お店に連絡し、会社名で出し直してもらいます。

  3. 出し直しが難しければ、直した内容をお店に確認してもらう

    自分で直した場合は、確認を受けた日と「先方確認済み」を書類に書いて保存します。

領収書をなくした・もらえなかったとき

法人税・所得税と消費税で、確認することが違います。

消費税は、領収書がなくても帳簿だけでよい取引がある

次の取引は、インボイスがなくても、帳簿に一定の事項を書いて保存すれば仕入税額控除を受けられます。

  • 3万円未満の電車・バスなどの公共交通機関の運賃
  • 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が書かれた入場券など、使うときに回収される券の代金
  • 3万円未満の自動販売機・自動サービス機での購入
  • 郵便ポストに出す郵便(切手だけで払うもの)
  • 従業員に支給する出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当で、通常必要と認められるもの

帳簿には、通常の記載事項に加えて、この特例に当たること(例「3万円未満の鉄道料金」)を書きます。

また、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、税込1万円未満の仕入れや経費について、インボイスがなくても帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます(少額特例)。2023年10月1日から2029年9月30日までの取引が対象です。1万円未満かどうかは1回の取引の税込金額で決まり、国税庁の例では、5,000円と7,000円の商品を一緒に買った12,000円の取引は対象外です。自社が対象になるかは、顧問の税理士に確認してください。

これらに当たらない取引で領収書をなくした場合は、お店に再発行や写しを頼みます。

法人税・所得税では、支払いの記録を残しておく

領収書は支出があったことを示す書類です。なくしたときは、お店に再発行を頼むほか、カードの利用明細や振込の記録など、支払ったことを示す記録を残しておきます。その支出を経費にしてよいかは、内容によるので税理士に確認してください。

メールやPDFで受け取った領収書は電子のまま保存する

ネットで買い物をしたときの領収書や、メールで届いたPDFの請求書は「電子取引」のデータです。2024年1月1日以後にやり取りしたデータは、法人税・所得税で帳簿や書類の保存が必要な事業者なら、印刷した紙だけで保存を済ませず、電子データを保存する必要があります。

保存するときは、次の3つを満たします。

  • 改ざんを防ぐ措置をとる(訂正や削除の履歴が残るシステムで保存する、改ざん防止の事務処理規程を作って守る、など)
  • パソコンやプリンタなど、データを見られる機器を備える
  • 日付・金額・取引先で検索できるようにする

基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者などは、税務調査でデータのダウンロードを求められたときに応じられれば、検索の要件は不要です。ファイル名を「日付_金額_取引先」のように決めておく方法でも、検索の要件を満たせます。

紙で受け取った領収書は、スマートフォンやスキャナで読み取ったデータで保存することもできます(スキャナ保存)。こちらは任意で、読み取りの解像度や期限などの決まりがあります。詳しくは国税庁の案内を確認してください。会計ソフトに領収書を取り込んで保存する方法もあります。会社で使う会計ソフトの選び方は法人向け会計ソフトの比較で説明しています。

従業員の経費精算で決めておくこと

領収書の宛名で迷う場面は、社長本人より、従業員が立て替えたときに起きがちです。社内の精算の決まりに、次の点を入れておきます。

  1. 宛名は会社名で頼むと決める

    正式な会社名を全員に伝えておきます。名刺に会社名があれば、名刺を見せて頼むようにします。

  2. レシートで足りる場面を決める

    コンビニ・飲食店・タクシーなどで、登録番号の入ったレシートがあれば、領収書をもらい直さなくてよいことにします。

  3. 従業員の名前の領収書には立替金精算書を付ける

    宛名が従業員の名前になった場合に備えて、立替金精算書の書式を用意するか、従業員名簿を経理の書類と一緒に保存します。

  4. 接待の飲食代は、参加者を記録する

    相手の会社名・名前・人数を、精算書や会計ソフトのメモに残します。交際費の扱いは交際費と会議費の違いで説明しています。

  5. 電子で受け取ったものの保存場所を決める

    メールやPDFの領収書を、どのフォルダやシステムに、どんなファイル名で保存するかを決めます。

決まりを作るときに、顧問の税理士に次の点を確認しておくと安心です。

  • 宛名のない領収書や、従業員の名前の領収書を、自社ではどう処理するか
  • 自社が少額特例(税込1万円未満)の対象になるか
  • 電子取引のデータの保存方法が、自社の売上高でどの要件に当たるか

顧問の税理士がいない場合や、相談先を見直したい場合は、税理士の探し方・選び方・変え方を参考にしてください。経理や税金の仕事を、自分・会計ソフト・税理士のどこまでで分けるかは、経理と税金は誰に任せるかで説明しています。

よくある質問

収入印紙が貼っていない領収書は、経費にできませんか?

印紙税を納めるのは、領収書を作る側(お店)です。印紙を貼っていなかったときに過怠税がかかるのも、作った側です。国税庁の説明には、受け取った側が経費にできなくなるという記載はありません。なお、売上代金の領収書は、受け取った金額が5万円未満なら印紙税はかかりません。お店が消費税の課税事業者で、領収書に消費税額が分けて書かれていれば、税抜の金額で判定します。国税庁の例では、「商品販売代金48,000円、消費税額等4,800円、合計52,800円」の領収書は、48,000円で判定して印紙税はかかりません。

レシートと領収書は、どちらをもらえばよいですか?

インボイスは書類の名前を問いません。レシートでも、お店の登録番号など適格簡易請求書の記載事項がそろっていれば、インボイスとして使えます。コンビニや飲食店では、登録番号の入ったレシートがあれば、領収書を別にもらわなくても足ります。会社の規程で領収書を求めている場合は、その決まりに従ってください。

個人事業主は、宛名を屋号と氏名のどちらにすればよいですか?

インボイスの記載事項は「交付を受ける事業者の氏名又は名称」です。迷ったら、氏名か「屋号+氏名」で書いてもらうと確実です。屋号だけで受け取ってよいかは、帳簿の名前との対応も含めて税理士に確認してください。

お店が登録番号のない領収書しか出せないと言われました。

お店がインボイスの登録をしていなければ、宛名を会社名にしてもインボイスにはなりません。この場合の仕入税額控除の扱い(経過措置)は、国税庁の案内か税理士に確認してください。法人税・所得税の経費の扱いとは別の話です。

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節約社長編集部は、経営・起業に役立つ情報を届ける編集チームです。資金繰り、財務、採用、業務効率化など、経営者が日々の判断に使えるテーマを取り上げます。

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