消費税増税で検討されるキャッシュレス決済のポイント還元~6つの問題点
来年10月からの消費税増税で景気後退が懸念されるところ、その緩和策として増税2%分を還元しようという話が出ています。
その際、クレジットカードなどのキャッシュレス決済の利用で、ポイント分として還元しようというのが政府の考えのようです。
すでに多くの人が指摘していますが、この方法は問題だらけで実際に導入しようとするとかなりの混乱を招く恐れがあります。
まずは、キャッシュレス決済の問題点について考えてみましょう。
1)財源
最初の問題点は、キャッシュレス決済の導入コストについて、国が補助しようという案が出ていますが、その場合の財源をどうするのかが問題となります。
2)赤字の事業者は恩恵を受けられない
また代わりに導入コストを税額控除しようとすると、赤字の事業者は全く恩恵を受けられないですし、償却費の増額(特別償却)とすると全額自己負担と変わらなくなってしまいます。
3)手数料の負担問題
手数料の負担も大きな問題です。事業者はクレジット会社へ手数料を払わなければなりませんが、これが中小の事業者にはばかになりません。
政府がカード会社へ手数料の減額を要請したという話もありますが、カード会社が応じるかもわからず、たとえ減額されたとしても負担が生じることには変わりありません。
4)システム導入・変更まで期限が無い
根本的な問題として、システム導入や変更が間に合うのかということも考えなければなりません。
現在はまだ検討段階で、法案を作成・審議し国会で可決と考えると決定は来年です。それから半年程度で果たして可能かどうか大いに疑問です。
5)ポイント還元の恩恵を受けられない人が現れる
更には利用者側の問題もあります。
まず、高齢者などクレジットカードを持っていない人や所得が低くクレジットカードを持てない人など、本来増税の影響を一番受けないようにしなければならない人が、全く恩恵を受けられないという事態が懸念されます。
逆にクレジットカードをよく使う高額所得者ほど還元される金額が大きくなります。
6)法人が受け取るポイント還元は妥当?
また、法人カードを使用した場合に、会社に還元するのかどうかという点も問題です。
そもそも法人に対して還元することが制度趣旨に照らして妥当かどうか、仮に還元するとしたら、それは法人の利益になるのか消費税額の受け取りになるのか、その認識時期はポイント受け取り時かポイント使用時か、といった様々な不明点があります。
まとめ
別の方法として、マイナンバーカードにポイントをためるという案も検討されているようです。
しかし、結局景気を腰折れさせないという本来の目的に、キャッシュレス決済比率の上昇やマイナンバーカードの普及といった別の目的を合わせることでどんどん使い勝手が悪くなり、本来の目的を見失うという悪循環に陥っており、各方面からの反対意見が多数に上っている印象です。
現時点では、ことの成り行きを冷静に見ていったほうが良さそうです。