
創業するときの資金の借入先として、最初に名前が挙がるのが日本政策金融公庫(日本公庫)です。創業向けの融資制度があり、事業の実績がない段階でも申し込めます。
この記事では、日本公庫の創業融資「新規開業・スタートアップ支援資金」の条件、自己資金の考え方、創業計画書の書き方、申込みから融資までの流れを、公庫の公式情報をもとに説明します。
日本政策金融公庫の創業融資とは
日本政策金融公庫は、国が出資する金融機関です。個人事業主や小規模な会社向けの融資を扱う「国民生活事業」に、創業する人向けの融資制度「新規開業・スタートアップ支援資金」があります。
この制度は、2025年3月に「新規開業資金」から名前が変わりました。また、2024年4月の公庫の発表資料では、見直し後の制度に「旧:新創業融資制度」と添えられています。古い記事に出てくる「新創業融資制度」や、「自己資金が創業資金の10分の1以上」という条件は、見直し前のものです。
新規開業・スタートアップ支援資金の条件
新規開業・スタートアップ支援資金の主な条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める人、または事業を始めておおむね7年以内の人。事業計画を作り、それを進める力があること |
| 使いみち | 設備資金と運転資金 |
| 限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金は20年以内、運転資金は10年以内。どちらも元金の返済を待ってもらえる据置期間は5年以内 |
| 利率 | 基準利率。女性、35歳未満または55歳以上の人などは、要件に当てはまれば低い特別利率 |
| 担保・保証人 | 希望を聞いて相談。創業期(開業前、または税務申告を2期終えていない人)は、原則として無担保・無保証人 |
無担保で税務申告を2期終えていない人の基準利率は、2026年10月1日現在で年3.85〜5.45%です。創業期の人は、創業支援貸付利率特例制度により、原則として制度の利率から0.65ポイント(雇用を増やす場合は0.9ポイント)引き下げられます。実際の利率は、返済期間や担保の有無などで決まります。
法人の場合、社長が保証人にならずに借りられる「経営者保証免除特例制度」もあります。法人と社長のお金がきちんと分かれていることなどが条件で、上乗せの金利はかかりません。個人事業主は、原則として保証人なしで借りられます。保証人なしで借りる制度は経営者保証なしで融資を受ける方法でも説明しています。
創業融資の自己資金はいくら必要か
新規開業・スタートアップ支援資金には、制度上の自己資金の要件はありません。2024年度の見直しで、「創業資金の10分の1以上の自己資金」という要件がなくなりました。
ただし、自己資金の要件がないことだけで、融資を受けられるわけではありません。公庫の創業支援のQ&Aでは、自己資金の額だけでなく、創業計画全体がしっかりしているかが重要だとしています。公庫の「創業の手引」によると、2025年度新規開業実態調査での、調達総額に占める自己資金の割合は平均22.9%です。審査で必要とされる割合を示す数字ではありません。
節約社長編集部は、自己資金を「どれだけ準備してきたか」と「開業後に計画どおりいかなかったときの余裕」の両方を示すものと考えています。借りられる額の上限を気にするより、開業してから売上が立つまでの運転資金も含めて、必要な額を計画に入れておくことをおすすめします。
創業計画書の書き方
申込みには、公庫の書式の創業計画書を出します。書式と業種別の記入例は、公庫のサイトからダウンロードできます。書き方の解説動画もあります。
スマートフォンでは、下の図を横にスクロールできます。
経験をもとに売上や費用の根拠を書く
「経営者の略歴等」に書いた経験が、「事業の見通し」の売上や費用の根拠になるように書きます。たとえば、前の勤め先で同じ地域の顧客を担当していたなら、その経験から見込める客数や単価を書き、売上の計算につなげます。経験と関係のない数字を並べると、根拠が伝わりません。
必要な資金は見積書で裏づける
「必要な資金と調達方法」には、設備や内装、仕入れ、開業後しばらくの運転資金を書きます。設備資金は見積書を添えます。運転資金は、売上が入金されるまでに払う家賃・人件費・仕入れなどの数か月分を目安に計算します。入金と支払いのずれで必要になる額は必要運転資金の計算ツールで、借りた場合の返済額は金利・返済シミュレーターで試算できます。
返済できる見通しを示す
「事業の見通し」の欄では、売上や費用に加えて、実際の入金・支払いの時期や税金も考え、毎月の返済に充てる現金を用意できることを示します。計画の立て方は事業計画と返済の見込みの記事で説明しています。
申込みから融資までの流れと必要書類
相談する
創業する予定の人は、申込みの前に支店での予約相談ができます。
インターネットで申し込む
法人は本店の所在地、個人は創業予定地の近くの支店が窓口です。
面談を受ける
事業の計画や資金の使いみちについて話します。資産や負債が分かる書類などを持っていきます。
店舗・事業所の予定地を見てもらう
公庫の担当者が予定地を訪ねることがあります。
契約して、融資を受ける
審査を通れば、電子契約などで手続きをして、融資金が送金されます。
主な必要書類は、創業計画書、設備資金の見積書、法人の場合は履歴事項全部証明書、本人確認書類、許認可が必要な業種は許認可証などです。担保を希望する場合は、不動産の登記簿謄本も出します。
融資までの日数
公庫の創業支援のQ&Aでは、申込みから融資が決まるまで平均3週間程度としています。国民生活事業の案内では、申込みから融資金の送金が完了するまでの日数を1か月程度(土日・祝日を含む)としています。物件の契約や設備の支払いの時期から逆算して、1か月以上前に申し込んでください。
なお、法人を設立するときの資本金の払い込みに使うお金は、融資の対象になりません。
日本公庫以外の創業融資
自治体の制度融資
都道府県や市区町村が、信用保証協会・金融機関と協力して行う融資です。自治体が保証料や利息の一部を補助する場合があります。たとえば東京都の創業向けの制度融資では、限度額は3,500万円です。条件は自治体ごとに違うので、創業予定地の自治体のサイトで確認してください。
信用保証協会の創業向けの保証
銀行や信用金庫から借りるときに、信用保証協会が保証する制度です。創業関連保証の限度額は3,500万円で、開業前の個人や、創業後5年未満の個人・法人などが対象です。法人は、保証料率に0.2ポイントを上乗せすると、経営者保証なしで保証を受けられる「スタートアップ創出促進保証」も使えます。
公庫と制度融資を組み合わせて借りる人もいます。どこから借りるかで迷ったら、公庫の支店や、地域の商工会議所・商工会に相談してください。資金調達の方法全体は資金調達の方法と選び方で説明しています。
よくある質問
開業前でも申し込めますか?
申し込めます。新規開業・スタートアップ支援資金は、これから事業を始める人も対象です。申込みの前に、支店での予約相談もできます。
個人事業主として開業する場合も使えますか?
使えます。国民生活事業は個人事業主も利用でき、個人事業主は原則として保証人なしで借りられます。
自己資金がゼロでも借りられますか?
制度上の自己資金の要件はありません。ただし、審査では創業計画全体が見られ、開業した人の自己資金の割合は平均で2割程度です。自己資金がない場合は、それでも事業を続けられる理由を計画で示す必要があります。
審査に通らなかったら、どうすればよいですか?
計画のどこに不安があったのかを振り返り、売上の根拠や資金の計画を見直します。自治体の制度融資など、ほかの方法も検討してください。
参考資料
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 日本政策金融公庫「創業融資のご案内」
- 日本政策金融公庫「金利情報」
- 日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」
- 日本政策金融公庫「『スタートアップサポートプラザ』の新設について」別紙(2024年4月1日)
- 日本政策金融公庫「『新規開業・スタートアップ支援資金』に関するお知らせ」(2025年3月3日)
- 日本政策金融公庫「創業支援 Q&A」
- 日本政策金融公庫「創業の手引」(令和8年5月版)
- 日本政策金融公庫「創業予定の方」(お手続きの流れ)
- 日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」
- 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」
- 東京都「東京都中小企業制度融資『創業』」
- 全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」
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