
会社が銀行から借りるとき、社長が個人で連帯保証人になる「経営者保証」を求められることがあります。会社が返せなくなれば、社長が個人の財産で返すことになります。
ここ数年で、経営者保証を付けずに借りられる制度や仕組みが増えました。この記事では、経営者保証なしで融資を受けるための条件と、日本政策金融公庫・信用保証協会の制度、2026年5月に始まった企業価値担保権を説明します。
経営者保証とは
経営者保証は、会社が金融機関から借りるときに、社長などの経営者が個人で連帯保証人になることです。会社が返済できなくなると、金融機関は社長に返済を求めることができます。
中小企業では、会社と社長のお金の区別があいまいなことが多く、金融機関が貸すときの安心材料として経営者保証を求めてきました。一方で、経営者保証は、思い切った投資や事業承継をためらわせ、経営が悪化したときの再建を遅らせる原因にもなると指摘されてきました。
経営者保証なしの融資は増えている
2014年2月から、「経営者保証に関するガイドライン」が使われています。日本商工会議所と全国銀行協会が事務局となった研究会が作ったもので、法的な拘束力はありませんが、金融機関が経営者保証を求めるかどうかを判断するときの目安になっています。
さらに、2023年4月からは、金融機関が経営者保証を求めるときは、どの条件を満たしていないために保証が必要なのか、どう改善すれば保証を外せる可能性が高まるのかを、事業者に具体的に説明し、記録することが求められています。
経営者保証に依存しない新規融資の割合(民間の金融機関)
金融庁の集計では、民間の金融機関の新規融資のうち、経営者保証に依存しない融資の割合は、2023年度の47.6%から、2025年度には55.7%に増えました。日本公庫の国民生活事業でも、2025年度の法人向けの融資の48.1%が、保証人なしの融資でした(速報値)。
経営者保証なしで借りるための3つの条件
ガイドラインでは、経営者保証なしの融資を受けるために、会社と経営者に次の3つを求めています。
会社と社長のお金を分ける
会社のお金を社長が個人のために使っていない、会社から社長への貸付金がない、役員報酬や配当が会社の規模から見て適切、といった状態です。社長への貸付金がある場合は、事業上の必要性や金額も含めて確認されます。
財務内容を改善する
会社の資産と利益だけで借入れを返せる状態です。債務超過になっていないか、利益が出ているかが目安になります。
決算書などを金融機関にきちんと出す
決算書や試算表を、定期的に、正確に金融機関へ出します。税理士などの外部の専門家に確認してもらい、その結果を伝えることも望ましいとされています。
この3つを満たせば必ず保証なしで借りられるわけではなく、金融機関が経営状況や融資条件を確認します。改善には時間がかかるため、社長への貸付金をなくす、役員報酬を見直す、毎月の試算表を作って金融機関に出す、といったことを、次の融資の相談より前から進めておきます。決算書で金融機関が見る数字は決算書チェックで確認できます。
日本公庫・信用保証協会の経営者保証なしの制度
経営者保証なしで借りられる公的な制度
| 制度 | 主な条件 | 費用 |
|---|---|---|
| 日本公庫の 保証免除特例 | 法人が対象。返済が見込まれ、会社と社長のお金がある程度分かれているなど、7つの要件のどれかに当てはまる | 上乗せの金利なし |
| 保証協会の 事業者選択型 | 法人が対象。社長への貸付金がない、決算書を出している、債務超過でないか2期連続の赤字でない、など | 保証料率に0.25または0.45ポイントを上乗せ |
| 保証協会の スタートアップ 創出促進保証 | 創業前、または創業後5年未満の法人などが対象。限度額3,500万円 | 保証料率に0.2ポイントを上乗せ |
日本公庫の経営者保証免除特例制度は、創業前や、税務申告を2期終えていない会社も、会社と社長のお金がある程度分かれていれば対象になります。ただし、利用できない融資制度もあります。
信用保証協会の事業者選択型経営者保証非提供制度は、債務超過でなく、減価償却前の経常利益が2期連続の赤字でもなければ0.25ポイント、どちらか一方だけなら0.45ポイントの上乗せです。設立後2事業年度の決算がない法人には特例があり、上乗せは0.45ポイントです。社長が連帯保証人になるか、保証料を上乗せして経営者保証を付けずに借りるかを、事業者が選べます。
創業時の融資については日本政策金融公庫の創業融資で説明しています。
企業価値担保権とは
2026年5月25日に、企業価値担保権という新しい担保の制度が始まりました。不動産や社長の保証に頼らず、将来の稼ぐ力を含めた事業全体の価値を担保にして借りる仕組みです。
- 使える会社:株式会社と合同会社などの持分会社。個人事業主や、会社以外の法人は使えない
- 経営者保証:粉飾などがあった場合を除き、経営者個人に保証債務の返済を求めることが制限される
- 費用:登録免許税3万円などと、担保権を持つ信託会社への報酬がかかる。担保は商業登記簿に登記されるので、取引先からも見える
- 事業の譲渡・財産の処分:事業の譲渡や大事な財産の処分など、普段の事業の範囲を超えることには、事前に企業価値担保権者である信託会社等の同意が必要になる
三井住友銀行が2026年7月に企業価値担保権を使った融資の取扱い開始を発表し、北海道銀行も2026年6月に、同行で初めて企業価値担保権を使った融資を行ったと発表しています。取扱いの有無や融資条件は金融機関ごとに異なります。関心があれば、取引のある金融機関に相談してください。
現在の借入れから経営者保証を外すには
すでに経営者保証を付けて借りている場合も、外す相談ができます。金融庁は、2023年3月より前に結んだ保証契約についても、新しく結ぶ契約と同じように、保証が必要な理由と改善すれば外せる点を説明し、記録するよう、2026年4月から金融機関に求めています。
相談するときは、決算書と試算表、会社と社長のお金を分けていることが分かる資料を用意し、「どこを改善すれば保証を外せるか」を具体的に聞きます。説明に納得できないときは、金融庁の「経営者保証ホットライン」にも相談できます。
事業承継で社長が交代するときも、前の社長の保証をそのまま引き継ぐのではなく、保証が必要かどうかを見直す機会になります。
よくある質問
個人事業主にも経営者保証はありますか?
個人事業主は、事業の借入れも本人の借入れなので、会社の借入れを社長が保証する経営者保証とは仕組みが違います。日本公庫の国民生活事業では、個人事業主は原則として保証人なしで借りられます。
経営者保証を外すと、金利は上がりますか?
制度によって違います。日本公庫の経営者保証免除特例制度は上乗せの金利がありません。ここで紹介した信用保証協会の制度では、保証料率が0.2〜0.45ポイント上がります。民間の金融機関では、金利を上乗せする代わりに保証を外す扱いもあります。
赤字の会社でも、経営者保証なしで借りられますか?
難しくなります。ガイドラインは、会社の資産と利益だけで返せることを目安にしています。信用保証協会の制度でも、債務超過でないことか、2期連続の赤字でないことのどちらかが主な条件です。ただし、設立後の決算期数による特例もあります。
参考資料
- 経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」
- 経済産業省・金融庁・財務省「経営者保証改革プログラム」
- 金融庁「『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(2022年12月23日公表)
- 金融庁「『地域金融力強化プラン』を踏まえた監督指針の一部改正の概要」(2026年2月20日公表)
- 金融庁「民間金融機関における『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績」(2026年6月26日公表)
- 金融庁「経営者保証」
- 日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」
- 日本政策金融公庫「保証人に依存しない融資」
- 全国信用保証協会連合会「事業者選択型経営者保証非提供制度」
- 全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」
- 金融庁「企業価値担保権」
- 金融庁「法定説明事項の顧客交付書面例」
- 三井住友銀行「企業価値担保権を活用した融資商品の取扱い開始について」(2026年7月28日)
- 北海道銀行「当行初の『企業価値担保権』を活用した金融支援の実施について」(2026年6月15日)
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