組織活性化プロデューサーの南本です。
業績が低迷し、いつ復活するかもわからない中、会社が社員の給料の6割以上の補填を休業補償として先出しで払うと、社会保険等も払わなければならず、それらを払うことができないと踏んだわけですね。
国からの雇用調整助成金など、いろいろな給付金のメニューが出ていますが、それでも経営を回していく資金、キャッシュが先出しになるので、それなら従業員の生活を守るという意味で失業給付を使おうということです。
私の考えは、この会社の通りです。
今回は、上記の事例を踏まえて「中小企業が事業の撤退・縮小時に考えるべき3つのポイント」について詳しく解説したいと思います。
企業が事業の撤退・縮小を考えるべき状況とは
まずは、事業の撤退・縮小を考えるべき状況について解説します。イメージしやすいように、今回のコロナによる影響を例に見てみましょう。
緊急事態宣言で営業自粛
現在、緊急事態宣言が出たため、ほとんどの業界・業種・業態が自粛を要請されています。居酒屋なども夜8時までの営業で、お酒は7時までしか提供できません。
これでは売上が激減してしまいます。
売上が減少しても補償なし
自粛要請によって売上が減少しても収入の補償は基本的にはありません。
中小企業の場合、売上が大きく下がったら200万円という補償がありますが、5億、10億稼ぐ会社にとっては焼石に水で、一瞬にして資金が飛んでしまうくらいの補填しかありません。
また、社会保険料や税金の1年間の延納制度が出来ましたが、所詮は先送りです。将来必ず払わないといけないものなので、中小企業の社長はちょっと考えて欲しいと思います。
「テナントの家賃負担を下げてください」と国交大臣から通達のようなものが出ていましたが、大家さんも必死ですからそれほど下がることはないと思います。
国が補填してくれれば家賃も下がっていくと思いますが、そこまではまだ行っていません。
いつ状況が改善するかわからない
今回のコロナの影響は、10年前のリーマンショックなどと違い、いつ状況が改善するかわからない不安があります。
経営者は、いつでも状況に合わせて決断をしていかなければなりません。
先が見えず、緊急事態宣言がいつ解除されるかわからないのに、もうすぐ良くなると思って経営していたら本当にもう生き残れなくなります。
延命して復活した会社というのは、私の知る限りあまりありません。
融資の資金を借りて延命しても、事業に力がないと返せなくなるので、自己破産する羽目になります。借り入れして社会保険料や税金を延命しても、それは未来に負債を残すだけです。
このような状況になった場合、もはや「撤退」しか選択肢はないのではないかと思います。
中小企業が事業の撤退・縮小時に考えるべき3つのポイント
中小企業が事業の撤退・縮小時に考えるべきポイントは以下の3つです。
- 会社をつぶさない
- 雇用維持の常識を疑う
- コア事業のみ残す
それでは、一つずつ解説していきます。
会社をつぶさない
これは私の想いですが、まず会社をつぶさないでください。
雇用維持の常識を疑う
今の世の中は、人をクビにしない、雇用を維持しなさいという風潮です。
仕事がなくて売上が全然上がらないのに休業補償をしなさいという話ですが、雇用を維持するためには、社会保障費も含めてキャッシュが出ていきますよね。
私も従業員を雇っている経営者ですが、会社を守らないといけないので逆の発想で考えています。
要するに、雇用維持の常識を少し疑い、速やかに撤退しましょうという話です。
コア事業のみ残す
本社の他に9店舗あったとしたら、究極な話、本社だけ残してあとは瞬時に撤退するということが大事です。
本能寺の変が起きたときに、徳川家康は堺のあたりで遊んでいたのですが、明智光秀が信長を殺したと聞いた家康は、自分も殺されると言って恥も外聞もなく一目散で逃げ帰ったのです。そして尾張でもう一度チャンスを待って、300年の徳川政権を作りました。
勇気を持って撤退すれば、その後、また徳川政権300年のようなチャンスをつかめる時がやってきます。
従業員を解雇するというのは本当に忍びないことですが、企業を存続させるには従業員負担にもメスを入れていかなければなりません。
企業は、マインドとコアな人材だけ残しておけば何とでもなります。
中小企業が事業の撤退・縮小を考える時は、本当に冷静になって考えてもらいたいです。
事業の撤退・縮小の具体的な取り組み方
ここでは、中小企業が事業を撤退・縮小する際の具体的な取り組み方について解説します。
事業の閉鎖・縮小
前述のとおり、本社とコアな人材を選定し、残りの店舗や事業はそれに合わせて閉鎖・縮小という形をとってください。
社員の解雇
会社都合として解雇してください。
会社の都合で解雇されたことになると、失業保険が7日過ぎればすぐに出ます。
解雇時の年齢によって保険の日数は91日であったり、108日であったり変わりますが、最低3ヶ月ぐらいは生き延びられる失業給付が国からおります。
家賃の停止
店舗などは契約上、事前告知というのがあるので、まず人件費をカットして、それから家賃を止めるという流れになります。
社員への説明
失業保険をもらっていただいて、人手が足りない時には業務委託契約をしながら業務を回していく、業況が好転した時には店を再開して全員呼び戻せるようにする、といったことを伝えておくことが大切です。
先の見えない状況で借り入れしたところで、休業補償や社会保険料を払っていれば一瞬でお金がなくなります。いずれ全員解雇することになり、経営者自身も自己破産してしまってはなにもなりません。
社員の方は失業保険がすぐもらえるのですから、中小企業の経営者はシミュレーションして、厳しそうであれば、コアの人材と事業の火種だけを残すようにしてください。
店を閉めるとか解雇するのはとても忍びないですが、自分の会社の DNAを残したいという思いがあるのであれば、傷は浅い方がいいのではないかと私は思います。