給料を「どのぐらい払えばいいのか?」と聞かれても、多くの経営者さんは答えられないと思います。そこで、『事業者の悩み』である「一体給料をいくら払えばいいか?」ということについて、あおば会計コンサルティングの田中が解説します。
所帯持ち社員の適正な給与はいくらか?
とくに中小企業の場合は中途採用が非常に多いですが、その時、所帯持ちの方を雇うとすると少し高めの給料を払わなくてはいけないと感じます。
どのぐらい払えばいいのか?
と聞かれても、多分ですけれど、多くの経営者さんは答えられないと思います。
ということで、ここからは、大企業も全部混ぜて「所帯持ち社員にどのくらい払えばいいのか?」という疑問に対する答えを導き出してみようと思います。
専業主婦世帯から共働き世帯へのシフト
厚生省発表の専業主婦世帯と共働き世帯を見ると、1980年は圧倒的に専業主婦世帯のほうが多かった時代です。共働き世帯も本当に少なかったと思います。
ところが1990年代から2000年前にかけて逆転して、現在に至っては共働き世帯が1188万世帯、それに対して専業主婦世帯が641万世帯ということで、パーセンテージに直すと65%が共働き世帯ということです。
世帯年収の平均はどのくらい?
今度は世帯年収を考えた時に、所帯持ちで標準的な4人所帯を考えてみましょう。
やはり中小企業で考えると世帯年収はだいたい500万円台かと思います。中央値は646万円。
ところが平均値は意外と高くて750万円ぐらいです。
そう考えてみると、大企業のような給料の高いところがちらほら見えてくるわけですが、平均所得金額以下が6割ということですから、少し平均値が高い感じがしました。
中小企業は年収600万円が限界
今度は給与を払う側をみてみます。中小企業の頭打ち金額というのがありますが、それが約600万円です。要するに中小企業は給料として600万円払うのが限界です。
奥さんの分を100万円の収入と仮定した場合、それでだいたい世帯年収700万円です。ところが平均値である750万円に届きません。それでどうすればいいかとお悩みの社長さんも多いかと思います。
日本一のホワイト企業「未来工業」の平均年収
比較対象として、日本一のホワイト企業と言われた未来工業はどうでしょうか?
創業者の山田昭男さんはもう亡くなっていますが、未来工業は従業員数が825名、平均年齢が46歳、平均の勤続年数が21年と結構長いです。
そして、未来工業の平均年収は645万3千円です。
未来工業並みに社員へ給料を払うのは大変
日本一のホワイト企業といわれるだけあって、やはり未来工業ぐらいは払ってあげないといけないのではないか?という感じもしますよね。
「未来工業のようなホワイトな会社にしよう」と意気込む社長さんは多いです。「46歳、21年勤務、645万目指してやる!」と思われた方も多いでしょう。
ところが、もう一度先ほどの4人世帯の年収に戻ってみると。。
未来工業のようなホワイト企業に勤めても、奥さんの100万円を合わせても平均で750万円ぐらいです。
実際、中小零細企業というのは、付加価値が元々低い業種でやってらっしゃる企業さんも沢山あって、労働分配率を50%~60%に設定して払ったとしても、あまり給料を払えないという業種も沢山あります。
こうやって見ても、普通に中小零細企業をやっていたら、社員の給料はどうしても低くなってしまう傾向があります。
どうしたら社員の年収を上げられるか?3つのポイント
ポイント1 心底、会社に惚れてもらう
ここで紹介したいのが、経営の神様の一人である京セラの稲盛和夫さん。
その稲盛和夫さんが、従業員のやる気を出す方法の一つとして提唱しているのが、
『従業員に心底惚れてもらう』
というものです。
「信頼していた従業員が会社を辞めてしまうということがあります。経営者はそのようなみじめな思いをしないよう、心と心で結ばれた人間関係をつくっていくことに、何としても努めていかなければなりません。貴方に惚れ込んで、どこまでもついてきてくれる人達をつくり、そのようなすばらしい人間関係をベースにして、会社を発展させ、彼らを幸せにしていかなければなりません。惚れ込んでもらう為には、己を空しくして。」
自分を捨てて、心を空にしてというようなことです。
「従業員を自分のパートナーに仕上げるのです。そのためには、経営者自身に自己犠牲の姿勢が必要です。」
というような話をされています。
ポイント2 付加価値の高いビジネスを展開する
先程の世帯年収ですが、所帯持ちを雇っていくためには結構な給料を出すには、経営者と同じぐらい働いていけるといった人材でないと、それだけの給料は払えないわけです。
幹部になっても大体頭打ちが年収600万です。
そういう状況の下でも、600万円を払えるためには、どうしたって付加価値の高いほうへ、ビジネスモデルを組み替えていく必要があります。
ポイント3 「お客様を愛せる人」を雇う
そして、会社のことを愛するということは「お客様のことを愛する」ということです。
つまり、お客様を向いてがむしゃらに働いてくれないと、なかなか600万円は払えないと思います。
実際、一年間の付加価値を1000万円以上上げてくれないと、よっぽど業態が良くても給料で600万円は渡せません。