経済産業省が発表した「消費インテリジェンス研究会」の報告によると、2030年の消費行動は、特徴的な3つの消費行動タイプに整理することができるとされています。「自律的消費」「他律的消費」「偶発的消費」です。中でも、テクノロジーの進化によって、自律的消費と偶発的消費の割合が高まることが予測され、「売れる商品づくり」のヒントもここにありそうです。
経済産業省が2030年の消費行動をズバリ予測
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
今回は、「未来の消費行動」についてのちょっと難しめのお話です。
できるだけわかりやすく解説しますね。
経済産業省が、2016年12月から2017年3月にわたって計5回開催した「消費インテリジェンス研究会」では、2030年の消費経済市場を見据えつつ、
- ・消費者意識の変化
- ・より一層の消費者理解
- ・上記に伴う企業経営の在り方
- ・消費者起点のイノベーション
などについて討議が行われました。
当研究会での討議の結果は、以下の参考リンクににまとめられ公開されており、どなたでもPDFがダウンロードできます。
参考リンク:「消費者理解に基づく消費経済市場の活性化」研究会(消費インテリジェンス研究会)報告書
2030年に見られるであろう特徴的な3つの消費行動タイプ
さて、この報告書の内容で目をひくのはやはり2030年の消費行動です。それは、以下の3つの特徴的な消費行動タイプに整理することができるとしています。
それでは、これら3つの消費行動は、どのような商品や場面で明確に表れるか考えてみたいと思います。
1:自律的消費
まず「自律的消費」は、主に自分の趣味など、好きなものに対して現れる消費行動でしょう。
例えば、バッグが大好きだったら、とことん研究し尽くし、セールスパーソンを上回る知識で自分が一番良いと思うブランドを選択するでしょうし、その購買プロセス自体が大いなる喜びだと考えられます。
2:他律的消費
次の「他律的消費」ですが、私が関連づけたくなったのは、昨今のデジタルマーケティングのメインテーマである「レコメンデーション」です。
人の過去の購買履歴や行動履歴に基づいて「あなたはこれが欲しいのではないですか」「これを買うなら、こちらも一緒にどうですか」と提案してくれる仕組みを、レコメンデーションシステムといいます。
アマゾンはじめ、大手のECサイトのほとんどは何らかのレコメンデーションシステムを導入しています。レコメンデーションはたまに「うざい」と感じることもありますが、ファッションであれば、「コーディネイトぴったりだ」「自分に似合いそう」と、提案内容が自分の好みにぴったりで、思わず買ってしまった、ということがあなたにもあるのではないでしょうか?
最近は、AI(人工知能)の急速な進化により、レコメンデーションシステムが提案する商品の「しっくり度」が高まっており、ある種、システムに促されるままに次々と買い物をしてしまう、という現象が増えるのではないかと私は予想しています。
3:偶発的消費
そして最後の「偶発的消費」。これは、人間心理の面白さの一つを示すキーワード「偶有性」と関係があると言えます。
「偶有性」とは、半分予見でき、半分予見できないような状況のことです。
人は、先がまったく見えないと不安になるもの。しかし、逆に、先が見えすぎるのもつまらないと感じます。そこでその中庸、すなわち、ある程度先が読めるけど、何が起こるかわからないところもある「偶有性」が人は大好きなのです。
具体例を挙げると、遊園地のジェットコースターは、まさか振り落とされることはないという安心感がありつつ、ハラハラ、ドキドキのスリルを味わえますよね。
こうしたエンタテイメント系サービスだけでなく、モノでも偶発的消費を喚起する仕掛けは可能です。毎月1万円なり2万円の会費を払うと、毎月「箱」が届く。何が入っているかはお楽しみ。商品選択はサービス提供者にお任せだからです。ワクワクしながら開けると、中には選りすぐりのワインや日本酒のブランドが入っている。
最近、こうしたサービスがじわじわと増えていますね。たまに外れのものも混じっているけれど、箱を開けるときのワクワク感、そして「こんなのあるんだ」という、うれしい驚きが味わえる仕組みだと言えます。あ、もっと身近なところでは、お正月の「福袋」も、偶発的消費で購入されるものですね。
テクノロジーの進化が「他律的消費」と「偶発的消費」の割合を高める
さて、これら3つの消費行動タイプは、まったく新しい消費形態とは言えません。以前から、様々な場面で観察されてきたものだとは思います。
ただ、商品が多様化、高度化し、モノ余りの時代、自分のこだわりのある商品以外では、自分でしっかり検討する「自律的消費」が現実的には難しくなった今、AI、要するにコンピュータに商品選択を委ねる「他律的消費」の割合が高まることは間違いないでしょう。
また、日本のような先進国においては、「ないから欲しい」という欲求から商品が購入されるのではなく、日々の生活をより変化のあるもの、楽しいものにしたいという欲求で、サービスやモノが消費される傾向も強まることから、「偶発的消費」の割合も高まると思います。
企業の商品開発担当の方は、当報告書を熟読され、「売れる商品づくり」のヒントをさがしてみるのはいかがでしょう?
参考リンク:「消費者理解に基づく消費経済市場の活性化」研究会(消費インテリジェンス研究会)報告書を取りまとめました(経済産業省ニュースリリース)
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