今月の売上は過去の活動結果に過ぎず、未来を見据えたマネジメント無くして、売上目標の達成は困難です。従って、売上目標を達成する管理者は、先の売上目標を達成するために今すべきことを明確化する、「先行情報管理」という仕組みに沿いマネジメントを実行します。本稿では、「先行情報管理」を行うのに必要な5つの指標と、管理者の具体的な行動手順をご紹介します。
「先行情報管理」を取り入れ逆算の営業活動を
先日、「36ヶ月連続で売上目標を達成する部門管理者が行うマネジメントの仕組み」と題する記事を寄稿しました。
今月の売上は過去の活動結果に過ぎず、管理者は未来を見据えたマネジメントを行わねば、永遠に売上目標を達成できません。
従って、着実に売上目標を達成していこうと思うと、「マネジメントの仕組み」を組織が手に入れる必要があることをお伝えしました。
その仕組みとは、先の売上目標を達成するために今すべきことを明確化する、「先行情報管理」という仕組みです。
「先行情報管理」を実際に運営していくうえでは、以下の指標を常に管理者側が把握している必要があります。
- 1)先行金額
- 2)受注時期
- 3)売上時期
- 4)受注確度
- 5)親密度
これらの「先行情報」は、営業が案件を発掘した早い段階で必ず収集すべきものです。
これらの情報があることによって、これから先の売上を読むことが出来ますし、お客様にベストなタイミングで提案活動ができるようになるからです。
本稿では、それぞれの指標の定義や、これらの情報を生かした管理者のマネジメント方法について、具体的にご紹介します。
先行情報管理を行う上で絶対必要な5つの指標
1)先行金額
先行金額とは、お客様がいくら位の予算で考えているのかという、お客様の腹積もりです。
予算のだいたいの大枠ですので、まずは大雑把でも営業にアウトプットしてもらうのが得策です。
2)受注時期
お客様がいつ発注するかという意思決定の時期です。自社にとっては受注が確定する時期ということになります。
3)売上時期
売上時期とは、実際に自社がお客様へ納品する時期のことです。
お客様が発注(営業からすれば受注時期)する時期と、実際に納品する時期が外れることは多々あります。この売上時期は、売上として計上できるタイミングのことです。
経営マネジメント側から見ると、キャッシュフローを意識する上でも重要な情報となります。
4)受注確度
どれくらいの確度で受注出来そうかを判断します。
この確度判断については営業に任せず、お客様のリアクションの基準を設定して判断するのが賢明でしょう。
なぜなら、営業は自分の役割が数字を会社に持ってくることですから、そこに希望的観測が混じり、数値が非常に甘い確度になってしまいます。
私の場合は、お客様のリアクションによって、S~Dの5段階に分けて判断しています。(%で管理することもOK)
ポイントは、お客様のリアクションによって確度基準を設定し、営業の個人的尺度での確度にしないということです。
5)親密度
お客様とどれ位親しい関係にあるかを判断するものです。
これも確度と同様に営業に任せていては、的外れになるケースが多いのが事実です。
営業が管理者に具体的な状態(お客様とのコミュニケーション、やりとり)を明示して、これを基準として親密度を測っています。
先行情報を用いて管理者が行う3つの具体作業
先行情報管理では、これらの情報をもとに、
- ①情報の精度を高める
- ②未来の売上予測を作る
- ③行動計画を作り込む
の3つを管理者が行います。
①情報の精度を高める
まずは情報の精度はどうやって高めていけば良いのでしょう?
情報の精度を見極める上では、5つの指標のうち、4)受注確度と5)親密度を見ていきます。
端的に言いますと、5)親密度が低いにもかかわらず、4)受注確度が高いということは、特別な事情がない限りあり得ません。
5)親密度が高いケースで、4)受注確度が低い場合はあり得ます。例えば、競合の特定の機種がモデルチェンジ前でダンピングしているケースなどです。しかし、その逆はないということです。
もしも、5)親密度が低いにもかかわらず、4)受注確度が高い場合は、親密度の状況把握と親密度アップのために、上司が客先へ伺うなどの対策を講じる必要があります。
こういったデータから得られる情報をもとに、地道な活動をすることで精度の高い情報となります。
②未来の売上予測を作る
次は、未来の売上予測を作る作業です。
売上予測の作り方は、業種によって二つの方法があります。
ケース1:競合との併売が行われている場合
一つは、原料や資材などの必ず競合との併売が行われている業界の場合です。こういった業界の場合は、1)先行金額と4)受注確度を掛け合わせて、受注できそうな金額を算定します。
この金額を2)の受注時期に積み上げていくのです。
例えば、
- 1)先行金額が500万円
- 4)受注確度が70%
- 3)売上時期が10月
とすると、「500万円×70%=350万円」を、10月の売上予測として計上するということです。
この案件の売上がどれくらい見込めて、何月に売上が上がる予定か?ということを月ごとに集計していくのです。
ケース2:自社が納入すると他社からの購入がゼロになる場合
もう一つの売上予測は、機械など一社が納入すると他社からの購入の可能性がゼロになるような場合です。
このようなケースでは、上記のような先行金額と受注確度を掛け合わせずに、
- 4)受注確度50%以上の案件、70%以上の案件について、
- 3)売上時期ごとにいくら積み上がっているのかを集計する
という形で売上を予測しています。
受注確度の定義設定にもよりますが、私の指導先の定義では、70%以上の案件についてはほぼその月に受注ができている状況です。
たとえば、
- 4)受注確度70%の案件
- 5)先行金額は300万円
- 3)売上時期が8月
という先行情報がある場合、8月に300万円の売上予測を計上します。
この場合、4)受注確度が70%未満の案件は、売上予測に計上しないことになります。
このように積み上げられた、向こう数か月先の各月の売上予測値と目標値との差額を埋めるために、目標に対して不足額が発生している月に売上出来そうな案件をピックアップして、今から逆算して徹底的にアプローチ強化をしていきます。
③行動計画を作り込む
売上予測を作ると同時に、2)受注時期の情報から逆算して、今から数か月先までの行動計画を立てていきます。
2)受注時期は、お客様がいつ発注をするかという意思決定の時期です。
従って、そのお客様の意思決定の時期に間に合うように、いつまでに営業プロセスにおいて、どんなステップを通過しておかなければならないかという、各プロセスの通過リミットを明確にします。
このような形で、売上目標を達成する会社は、向こう数か月先の予測をもとに逆算の営業活動を行い、売上目標を達成し続けます。
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