戦後日本の労働観念において、正規社員と非正規社員の間には、給与待遇面で歴然とした差がありました。しかし、同一労働同一賃金に関する議論が深まり、非正規待遇の人々の不満が高まっています。技量を持った非正規社員が旧来の会社組織を捨てて、秘密結社のように平等な組織を作り、仕事を動かす時代が到来しようとしています。
非正規社員はあくまでも差別的な造語に過ぎぬ
今日は非正規社員の逆襲というテーマです。
最近、パートさん、アルバイトさん、契約の方、あるいは派遣の方とか、そういう人達が何かしら反乱を起こすんじゃないか?と思っていることがあります。
この「非正規」という用語なんですけれど、「正規」と「非、正規=正規にあらず」って感じで、これはあくまでも造語でございます。
「正社員」と「非正社員」も同じです。造語なんですけど、私はね…本当に差別用語としか思えないですね。
そのくらい正規・非正規みたいな形で、法律用語でもナンでも無いものがマスコミで使われていて、そして「正社員(様)」と呼ばれるくらいに、正規社員が法律的に優遇されているんですよ。
完全に差別ですよ。扱いが全然違いますからね。
国が作った制度が非正規差別を助長している
例えば、雇用を調整しないといけない、となった時なんかで考えてみましょう。
要するに会社が儲からなくて、とりあえず誰かに辞めてもらわないと会社が立ち行かなくなった時、今の法律を遵守しますと、まずは非正規のかたを全部辞めさせた後じゃないと、正規の方のクビは切れません。
ということは、正規の方の働きが悪いとしても、法律上は非正規の方を全員クビにしなきゃいけないんです。
全員クビにした後で、正社員に初めて手が付けられると。こういう風になっているわけです。
オカシイと思いません?完全に差別なんですよ。
ですけど、正社員の方に別に責任があるわけでは無くて、これはあくまで、こういう制度を国がつくってしまったことが問題なんです。
同一労働・同一賃金に対する正社員達の言い分
さて、直近の話題になっているので、関心を持たれている方が多いと思うんですけれど、同一の労働に関しては、同一の賃金を払っていこうじゃないかと、政府がぶち上げましたよね。
そうすると今度は、正社員さんにも言い分があるわけです。
まず、「オレたちって、パートさんやアルバイトさんや派遣さん、契約社員さんとは違う!」という感じで、同一の労働に有らずという言い分があります。
「同一労働ではない、自分たちは何と言っても精神的苦痛に耐えているんだ!」
「だってパートさんやアルバイトさんって来たくなかったら、バックレることも沢山あるじゃない。」
「うちらはバックレずにちゃんと出社しますよ。」
「サービス残業もするし、もともとの労働が同一では無いじゃないか!」
確かに一理あります。
やっぱりバックレるのは、バイトの方が遥かに多いですからね(笑)。
バックレ業界では当たり前なんで(笑)まぁ、一部について言い分として分かるところはあります。
じゃあ、正社員さんと契約の方とか、どれくらい給与の差があるかというと、1時間あたり正社員さんが100とすると、…ううう〜ん…40!
多分、非正規の方の給与っていうのは平均すると40くらいですよ。
正社員さんの方は、何と言っても社会保険制度に入れなくてはいけないですし、それから有給も与えないといけないですし、少ないとしてもポーナスも払う。
そうすると、100対40くらいで給与面で差が付いてしまうんです。
倍以上の差が開くっていうのは、非正規雇用の方にとってみると、どんな言い分があっても面白くないことなんです。
安定した収入・働きやすい職場は非正規社員の労働を元に成り立つ部分が多い
じゃあ、正社員さん達の言い分がどんなところから始まるのか?というのは、やっぱり安定した収入を守りたいっていうところがありますよ。
それから、自分たちにとって働きやすい職場を考えた時に、自分たちが目一杯フル稼働するよりは、アルバイト・パートさんたちに仕事を押し付けられるような職場の方が、働きやすい職場だったりするわけですよ。
ところが経営陣からすると、働きやすい職場を作ろうとしたら、パートさんやアルバイトさん、契約さん派遣さんを含めた、全員が働きやすい職場であって欲しいんです。
そして、安定した収入に関しても、正社員さんだけでは無くて、他の方にも安定した収入になるように払ってあげたいんです。
でもやっぱり、正社員さんが法律的に優遇され過ぎていて、実際「安定した収入・働きやすい職場」は、正社員さん主導によって作られるんです。
これは実務で多々有ります。
当然、非正規の人は正社員になりたいわけですから、自分たちも正社員になれませんか?と相談を受けている社長さんって多いと思うんです。
中小企業でも「社員にしてください」っていう話は、結構多いんですね。
その時に、業種・業界によっては、これまず無理なんです。
というのは、正社員さん達の人件費の高さがあって、その人件費の高さを非正規の方からのアガリで補っている業界が幾らでもあるんですよ。
ですから、上場企業においても、全労働者の中で非正規の方が半分以上働いているっていうのも当たり前で、8割以上が非正規なんて業界も沢山有りますからね。
そういうのは、お金が無いから” 土台無理 ”なんですよ。
非正規が正規になれない業界なんて沢山あるから、その業界から抜けて、他の業界に行くしか無い!って話なんですね。
正社員から給与カットを反対され悩む経営者達
では、中小企業の実務において、非正規の方を満足させるためには、やはり人件費の総額というのは決まっていますから、正社員さんの賞与をガリガリっと削るしかないわけです。
そして、非正規の方の時給を上げて行く。ガリガリっとね。
これが実務的に出来るのかというと…やろうとしますでしょ?
そうすると、正社員さんからの反発がハンパ無いですよ(笑)。ヤバイ半端無いですから。もう、抑えきれるような反発ではないです。
結果的には、正社員さんの賞与をガリガリッと削るなんて出来ないです。普通に非正規の時給を上げるしかない。
結果的にどうなるかというと、人数を減らすしかないですね。人件費の総額が決まっているわけですから。
かといって、それをやったなら人の手が足りなくなることは、もう分かりきっていること。
中小企業の経営者は、このくらい問題を抱えまくっているわけです。
技量を持った非正規社員による秘密結社のような組織ができる時代
これらの現状を踏まえると、正規、非正規みたいな身分制度みたいなものは、これから先は絶対に無くなっていくと思います。
実際に、今すぐは無くならないですよ。
10年先もまだ無くならないでしょう。身分制度みたいなものは。
ところが、経営者側からするとそういうのがもう、面倒臭いんです!給料を払っている側としてはね。
みんな同じく働いているのに、法律で守られたままの正社員様だけ待遇が違う。
そうなると、非正規社員の人たちも、技能がある人たちだけで集まって、会社組織という組織を全部捨てて、昔あった秘密結社みたいな形を取って、力がある者同志で、みんなで稼いでみんなでバァーっと分配して、という現象が今後起こるんじゃないかと思っています。
組織なんてどうでも良くて、結局はちゃんと税金さえ納めていれば良いんです。
実は、実務上はそれだけをしっかりやっていれば、どういう組織を組んだって良いわけですから。
会社組織って、どんな風に作り変えたって、雇用者と雇用される側の関係、あるいは元請け・下請けみたいな関係が絶対出来ていくじゃないですか。
そういうのが嫌だ!みんなで働いているんだから平等にやっていきたいんだ!って思う非正規雇用の人達が、本当に秘密結社みたいな感じで集まって、上下とか関係なくみんなが平等に働ける、そういう会社とは違う形態の組織がこれからは出てくると思っています。