企業がコスト削減を考える際は、自分達が今、部分最適のコスト削減と全体最適のコスト削減で、どちらを行おうとしているのか、客観的に把握する必要があります。つまり、見える部分で社員に任せられる「部分最適」なコスト削減と、経営者自身による経営判断が必要な「全体最適」のコスト削減です。
コスト削減には部分最適と全体最適の2種類あり
企業がコスト削減を考える際は、自分達が今、部分最適のコスト削減と全体最適のコスト削減で、どちらを行おうとしているのか、客観的に理解できている必要があります。
それぞれのコスト削減がもたらす効果が、全く別の物だからです。
まず、部分最適は、見える部分について、局所的に効率化を図ることによって、コストを削減する方法です。
例えば、企業コストの大部分は、地代家賃、人件費、光熱費で構成されます。
このうち光熱費は、簡単な例をあげて言えば、パソコンのモニターを暗めに設定したり、室内照明の間引き、エアコンの管理で抑えることができます。
地代家賃も安い物件を探せば、コスト削減につながります。
これら、目に見えて講じやすいコスト削減は、企業のコスト削減における部分最適の施策となり、これは経営者ではなく現場に任せて良いコスト削減と言えます。
全体最適のコスト削減には経営者の判断が必要
対して、コスト削減には全体最適という概念もあり、これは部分最適以上に重要なものです。
全体最適は、目に見えない経営資源まで考慮に入れた、経営者の判断が必要なコスト削減の概念です。
全体最適のコスト削減を行う場合、案件単位での人材の異動、事業の戦略的な撤退を含め、経営者の判断を取り入れたトータルなコスト削減が行なわれることになります。
特に、全体最適におけるコスト削減で、もっとも大きなウェイトを占めるのが人事です。
企業には必ず、「2:8」の法則が働き、案件が継続的にある場合でも、負荷がかかる人とそうでない人が出てくるため、全体最適なコスト削減を実行するには、経営者が人事にメスを入れなければなりません。
もしも、全体最適で見て、人材の活用にテコを入れる必要がある場合は、リストラはもちろん、チームを編成しなおし、生産効率を高めていく必要が生じるからです。
全体最適のコスト削減は、現場レベルで判断を任せると、誤った判断がなされた後は、経営者が余計に動かなければならなくなります。
人事最適化は経営判断を伴う高度なコスト削減
人事の最適化を行うと、大きなコスト削減が実現できますが、当然、中には部署移動やリストラ対象になって不満を抱く社員も出ることでしょう。
仕事の内容が変わってしまえば、その人のキャリアにも関わりますので、辞めてしまう人さえいるはずです。
人件費はコストの大部分を占めているため、削減することができれば効率的にコスト削減を行えますが、貴重な人材が流出してしまえば反対にコストを増やしてしまう要因ともなります。
新しい人材を確保するのにもお金がかかりますので、全体最適のコスト削減は非常に難しいものです。
しかし、これを大胆に実行できる企業ほど、生き残りの確率が高まることも事実と言えるでしょう。
今、自社が行おうとしているコスト削減が、部分最適と全体最適どちらに取り組もうとしているのか、客観的に理解しておくことは、経営者にとってとても賢明なことです。