1900年初頭、ワイマール国で作戦参謀長を務めたゼークトは、指揮官達に評価を与える際、「無能な働き者は処刑せよ。」と言ったとされる人物です。4つのタイプにわけて指揮官に求められる資質を説明したゼークトの真意を知ると、現代の指揮官に当たる経営者にどんな能力が求められているか理解できます。
過激すぎる格言!「無能な働き者は処刑せよ」
今日は少し過激な言葉なんですけれど、 「無能な働き者は処刑せよ」 という言葉の真意を、経営の観点からご紹介します。
誰が言ったか知っているとか、その言葉を聞いたことが有る、という方もいらっしゃると思います。
というのも企業研修においては、
「引き上げてはならない、つまり管理職に置いてはならない人…それは無能な働き者です。」
みたいな感じで重宝される言葉です。
言葉の由来を知り、現代の経営に当てはめると非常に役立つ格言ですので、解説していきましょう。
「無能な働き者は処刑せよ」の言葉を産んだ環境
この言葉を言ったのは、1900年の初頭のドイツワイマール共和国の作戦参謀長だった「ゼークト」という人物です。
さて、このワイマール共和国(旧ワイマール公国)は、簿記・会計にもけっこう親しみのある国だったりします。
文豪ゲーテ、私も若かりし頃は『若きウェルテェルの悩み』とか、そういう青春小説を読みましたけれども、その文豪ゲーテはワイマール公国の財務大臣にもなりました。
ゲーテは複式簿記が大好きなんですね。
「複式簿記は人類の叡智が生み出した最高のもの」とか言ってガンガン持ちアゲてましたからね。
実際に彼は、自分が財務大臣になった時に、学校教育に複式簿記を取り入れたんですね。
ドイツワイマール国は全国民に簿記を教えたといわれる国で、それくらい論理的思考を重んじる国でした。
そんなお国柄を持つ国の作戦参謀長ゼークトさんが「無能な働き者は処刑せよ」というキツい言葉を言った。
と、言われています。(笑)本当のところはわかりません。
4つのタイプで指揮官を分け評価したゼークト
本題ですが、ゼークトさんは、一体誰にこんなことを言ったのでしょう。
一般の兵に言ったわけでは無いんです。あくまでも指揮官へ言ったんですね。
指揮官をまず「能力」の視点から「有能」・「無能」の2つに分別し、更に「勤勉さ」の観点から「働き者」・「怠け者」に分けました。
それで「無能」で「働き者」な指揮官は、「処刑!殺してしまえー」みたいな、そういうことを言ったわけです。
ゼークトさんは指揮官を次の4つに分けたんですね。
- ・有能な働き者
- ・有能な怠け者
- ・無能な働き者
- ・無能な怠け者
それぞれの評価は以下の通りです。
・有能な働き者
⇒参謀にせよ。
文句なしで、流行の「パーフェクトヒューマン」ですね。
有能な怠け者
⇒司令官にせよ。
これは自分では動かないから、人を使うのが上手かろうということでしょうね。
・無能な働き者
⇒処刑せよ。
「ゼークトさんが言った」と言われている言葉ですね。
「コイツ、判断は間違えるくせにやる気はマンマンだから、こんな指揮官はやばいから殺してしまえー」っていう判断なんですね。
・無能な怠け者
⇒伝令とか一般の兵隊に混ぜてしまえ。
基本的に言われるまで何もやらない「指示待ち君」みたいなモンなので、とりあえず指揮官としては、突拍子もないことや的外れなこと、いきなり突撃しちゃったりとか変な判断 はしないので、まぁ伝令役とかで使い道はあるんじゃないかと。
以上の4つに分けたんですね。
企業研修などで使われるのは、「要するに無能な人達を管理職にしちゃうから、そもそも本人達もおかしくなっちゃうんでしょ。」っていう話がよく出てくるんですよ。
特に、無能なんだけれどもやる気マンマンみたいな、判断も全然間違ってるし、逆方向に行っちゃうような人を管理職にする方が悪いんでね。
ゼークトの言葉で社員のタイプを分けてみよう
では、一般の社員さんにゼークトの言葉を当てはめたら、一体どうなるのでしょうか?
無能な働き者と無能な怠け者、どっちが良いのかなと。
例えば、「みんなでアイディア出そうぜ」とか言って、ブレーンストーミングとかをやったとします。
そうすると、無能な怠け者は意見ひとつ出しませんが、無能な働き者は、トンチンカンであっても、少なくともアイディアは出してきます。
それを考えれば、無能な働き者も必要といえば必要だよなと思います。
ただ、本当は無能な働き者を指揮官にはしちゃイカンよな、下っ端に置いとかなくちゃ、と経営者なら皆さん思われるんじゃないでしょうか。
一方で、無能な怠け者っていうのを従業員さんで考えると…コレただの指示待ち君だよなって。
ところが、基本的に中小零細企業は、ただの指示待ち君を置いておくんです。本当に害が無いので(笑)
害があるのは無能な働き者の方なんで、やっぱりそうなると、ゼークトさんが言っている事は、あながち分からんでも無いなと思います。
ゼークトの言葉で経営者を4つのタイプに分けてみよう
では、ゼークトの言葉を社長に置き換えてみたらどうでしょうか?
考えてみたのでご紹介します。
・有能な働き者
パッと浮かぶのは自分で何でもやっちゃう人。いわゆるお医者さんみたいなタイプですね。
・有能な怠け者
これは間違いなく社長タイプですね!社長向き。
だって社長とお医者さん比べたら、絶対社長の方が働きませんからね(笑)
優秀な連中を見つけてきて、あとは仕組みを考える。要するに、機械化・自動化・システム化とかやるのもだいたいが社長なんでね。
・無能な働き者
これを社長で例えると、「あんまり頭使ってないな」ということで、いわゆる3バカ戦略をやる社長ですね!
安売り・長時間営業・人海戦術!この3つね。無能な働き者社長は、これまとめてやりますからね!だいたい。
「俺について来いッ!」「俺の背中を見せてやるッ!」って自分も働いたりしてね。
方向性としてはだいたい間違っているんですけれど、一生懸命働くと。
こういう社長さん、実際いますからね。殆どが赤字経営ですけどね。
・無能な怠け者
こういう社長は創業者では、そんなにいないと思います。
ただし、これが2代目とかで自分が継ぎたくて継いだんじゃない人とか、3代目とかでおじいちゃんの代からやっている人とかね、何もしない2代目3代目ってけっこう多いんですよ。
ただ、下手なことをしないから、会社は潰さないんですね。下手に今度は働き者になって、変なことしちゃうから、会社潰しちゃうわけです。
ですから、「俺は何にもできねぇんだよ〜。おやじ達とは違うんだから〜!」って感じで、実は何もしない方が会社を潰さないってこともあるわけです。
今は「無能な働き者」でも将来は変えられる
こう考えると、創業者はやっぱり、「有能な働き者」「有能な怠け者」に当てはまる人が多いのかなと思います。
基本的に会社を大きくするのは、有能な怠け者が多いと思います。
みなさんも、どれかには当てはまると思います。
そのどれに当てはまっても生き残り方はあるわけですから、今は「無能な働き者辺りにいるのかな〜…」と思う人でも、それをちょっと変えれば良いだけです。
将来を変えることは幾らでも出来ますからね。
画像:ハンス・フォン・ゼークト