花咲き乱れる春の日は、同時に労使トラブルが非常に多くなる時期でもあります。なぜなら、3月は転職に伴い退職する労働者が多いからです。すんなりと次のキャリアに移ってくれれば気持ち良いのですが、中には転職先と自社を天秤にかけて、退職したのに「退職届」を撤回する労働者もいます。この場合、撤回が認められる可能性も。未然にこのトラブルをどう防ぐか?解説いたします。
春先に起こる労使間のメイントラブルは退職
すっかり春めいて花も咲き乱れるこんな時期なのに、経営者と労働者の間では、労使トラブルが非常に起きやすくなります。
なぜなら、3月は転職に伴い退職する労働者が多いからです。
新たなキャリアを目指して巣立って行くなら、気持よく「頑張れよ」と言えるのかもしれませんが、生活のために内定した会社と自社を比較している社員も多いのが現実です。
質(たち)の悪いケースとしては、在職中に転職先を決めていたにも関わらず、転職先の企業の経営状況悪化や、雇用条件相違などの理由により、提出した退職届を撤回したい、と申し出てくる労働者とのトラブルが発生することもあります。
退職届を出した社員は退職届を撤回できる?
退職届には、労働者側から一方的に労働契約を解消する解約告知としての「退職届」と、労働契約の合意解約の申込みとしての「退職願」の2種類があります。
前者の「退職届」の場合、基本的に労働者は撤回することはできませんが、後者の「退職願」の場合は、撤回できる場合があるのです。
この「退職願」の場合の退職の効果については、会社の承認や承諾により発生するものとされ、会社の承認や承諾がなされて合意退職が成立するまでの間は撤回ができるものと考えられています。
労働者が退職届を直属の上司に提出したものの、上司がそれを預かったまま、人事部長や経営者など、決定権のある人へ決裁を上げていなかった場合についても、撤回できる可能性があります。
退職届を受け取った者が承認の権限を持つかどうか、そして、それを正式に受け取ったのか、預かりで受け取ったのかが撤回できるかどうかの決め手となります。
まさかの労使トラブルを未然に防ぐためには
なぜ、このようなトラブルが生じてしまう場合があるのでしょうか?
それは、労働者が退職届を提出した後、会社(経営者)がそれを「承認された状態」なのか「預かりの状態」なのかを曖昧にしているからです。
退職届を受け取った場合、会社としては、承認や承諾をして合意退職が成立した時には、退職届を受理し、「承認しました」という意味の通知書などを作成して、労働者に渡すことによって、退職届を撤回することはできないと労働者に示すことができます。
何事もトラブルが起こってから対応するのではなく、予測されるトラブルを未然に回避する方策を考えておくことを、常に意識しておきたいものです。