コーチングを導入しティール化に成功したAir New Zealand社
今回のテーマは、『コーチングを導入し見事にティール化に成功した企業』です。
ティールというのは、ボスがしゃしゃり出なくても、スタッフ自らが考え行動し、自律的に発展する組織であり、なおかつスタッフの生きがいも達成されるような未来型の組織、と考えてもらえればと思います。
ケーススタディーとして、Air New Zealand社がコーチングによって、どのような変化を遂げたのか、どのようにして変化を達成したのか、ある程度詳しく解説します。
まず、Air New Zealand社ですが、世界中におよそ一万人ほどの従業員を抱えており、国内・国外の輸送を手掛ける国際的な運輸会社です。
ホビットであったり、Lord of the Ringsをモチーフにした、機内安全マニュアルビデオなんかが一時期話題になって、色んなテレビで放送されてました。
国の名前を背負ったフラグキャリアなので、もしかしたら乗ったことある人もいるかもしれませんよね。
サブプライムローン経済危機の煽りを受けていたAir New Zealand社
じゃあ、約10年前のAir New Zealand社がどういう状態だったかというと、2009年頃まで強く影響を残したサブプライムローンによる経済危機の煽りを受けて、業績がもろに悪化していました。
この当時の同社は事実上、経営困難な状態に陥っていました。
そうすると、世界中に散らばる一万人近くいるスタッフもやっぱり落ち込むんですよね。
「どうしようやばい、どうしようやばいやばい」と。
スタッフのマインドにおける楽観的な趣向を高められないか、心理的な回復をするための方法論をどうにか伝授出来ないか、ということで同社はコーチングを導入することを決意します。
同時に、売り上げの落ちてしまったAir New Zealand社は、3つの目標を掲げました。
- 1)輸送効率をより高くしよう
- 2)社内環境を良くしよう
- 3)パフォーマンスの高い企業文化を作ろう
この3つです。
この時点でAir New Zealand社には、『have to』の文化が根付いてました。
「いやだな」とか、「もう無理だ、どうしよう」とか「どうせあれも出来ない、これも出来ない」「こんな問題が出てきた」「あんな問題が出てきた」「もうきっと解決出来ないんだ」というような不満が会社に充満していました。
一万人いるスタッフのうち、やる気のある人はほんの一部しかいなくて、他全員はかなり落ち込んでいて、結果として会社全体のパフォーマンスが下がっていたのです。
そこで上層部の人たちは、「この3つのゴールをどうにかして定着させたい」と考え、経営困難を物ともせずコーチングの導入に一切揺ぎの無い覚悟を持って改革を推し進めました。
たった2年で9,600人のスタッフにコーチング
彼らはまず、「ポジティブなマインドセットを一万人のスタッフ全員に広める」ことに着手しました。
将来に対する大きくて明るい期待感をスタッフ達の間で高めることで、先ほど掲げた3つのゴールを達成しようと考えます。
将来に対する明るい期待感って凄く重要で、今日を楽しく過ごせて、ワクワク出来る目標を設定できますよね。
明るい将来に向かって突き進むので、過程を楽しむことができます。
問題に取り組むときも、どうすれば解決出来るか、ゲーム感覚で楽しくパズルを解くような感覚で、色んな問題にタックルするマインドを培おうとします。
じゃあ、どうやって実際に達成したのかですが、上司と部下の関係をガラッと変えました。
『have to』なるような命令系統、管理や面倒な手続きの多かった環境をある程度省いて、「面倒くさいの嫌だな。」「ルールだから仕方なくやってる」というマインドセットを可能な限り変えていきました。
スタッフたちの前から可能な限り『have to』の指示系統や管理系統を消すことで、『Want to』で、やりたくてやっている、自分の信条だからやっている、というマインドセットを手に入れるチャンスを与えました。
この際、Air New Zealand社は、「ルールだからやってるんじゃなくて、自分らしいと思うから、自分はこうして好きでやってるんだ」というような文化を根付くようコーチングを実施しました。
『invent on the way(やり方は発明していく)』というマインドを根幹にして。
進みながら突っ走りながら、以下のようなメッセージを発信して、彼らはスタッフにコーチングを実施していきます。
「問題があったらとりあえず解決策を見つけて行こう。ゲーム感覚で解決して行こう。どうせ2〜3年後にその問題は解決してる。だから、今、目の前にある苦しみを楽しもう。」
ここで驚くべき事実があります。
今回のコーチングは、Air New Zealand社が抱えている問題を解決する為のコーチングなので、その企業が持っている色んな問題点を洗い出して、まず優先的に解決しなきゃいけないようなところから取り組んでいくわけです。
つまり、独自カスタマイズしたカリキュラムでコーチングを導入したんですけれど、たった2年で、一万人いるスタッフのうち、世界中に散らばっている9,600人のスタッフがコーチングを受けたんです。
やり方としては、最初に80人の上層部、何らかの管理部門のリーダー、役員たちが徹底してコーチングを学びました。
コーチングを学んだ上司、あるいはリーダーは、それぞれコーチになれるぐらいにまで、技術であったりマインドセットっていうのを叩き込まれました。
そして、彼らは学んだものを、それぞれの部門に持ち帰り、2年後には末端まで浸透させていったわけです。
たった7年でAir New Zealand社の利益は20倍以上になった
2年ほどかけて一万人近くの人達に、先程のマインドセット、重要ないろんなマインドセットを浸透させていた結果どうなったかって言うと、当期純利益は2009年の時点で2億NZドルだったのに対して、2016年では4.6億NZドルになりました。
たったの7年で利益が2倍以上に増えてるんです。パーセンテージで表すと2,104%です。
その根幹を担ったのはコーチングでした。
コーチングにより、社長・幹部・スタッフが自らの『Want to』の力で一丸となって企業の再生を達成しようと、皆がワクワク・楽しく未来への期待感を持って取り組むようになった結果が業績に現れたわけです。
「どうせ数年後にはもう全部解決して、それどころか凄い成長してるんだ。じゃあ今この目の前にある問題を楽しく取り組んでいこうぜ。パズルみたいなもんだよ。」というマインドを全社が共有した結果が素晴らしい業績を生み出します。
そのマインドによるアウトプットは次々と新しくて斬新な広告を生みました。冒頭で伝えたホビットとかLord of the Ringsの機内安全マニュアルのビデオもその1つです。
他にも、『Want to』のマインドがサービスに対する付加価値を加えました。ニュージーランド特産の非常に貴重なワインを無料で試飲出来るキャンペーンも、『Want to』が産んだ結果です。
私も乗ったことあるんですけど、やっぱりワイン出してましたよ。そして、スタッフたちがとても楽しそうに働いていました。
優れたアウトプットは、『have to』じゃなくて『Want to』のマインドにあるからこそ実現したのです。
ということで、Air New Zealand社から学べることをまとめると、以下のとおりです。
- have to文化を排除して、want to文化を作ろう
- どんな困難も楽しみながらタックルし続けられる文化を作ろう
- 「invent on the way(やり方は発明していく)」という考え方を根付かせると、あらゆる困難を楽しめるようになる
- 社員一人ひとりが企業のゴール達成に行動できるように、経営者はコーチングを学ぼう
社員一人一人が企業のゴール達成に向けて行動出来るように、個人的なゴール、方向性を合わせるのが重要なんですね。
コーチングを学ぶとこれがとてもやりやすくなります。皆さんもコーチングを受けてみませんか?
Photo credit: Aero Icarus on Visualhunt.com / CC BY-SA