福沢諭吉のベストセラー『学問のすすめ』にある冒頭の文章、「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」は、平等主義の象徴とみなされています。
福沢諭吉「天は人の上に人を造らず〜」の名言には続きが存在する
今日は福沢諭吉先生の話をしてみたいと思います。
1万円札にお顔が載っているあの方のことですね。
画像:ウィキペディア
私は個人事業主であったり、会社経営者のためにいつもお話するんですが、諭吉先生のネタというのは、ガチで調べた方ならわかると思うんですけれど、中小企業の経営者であっても意外とカチンと来る話なんですよ。
ましてや、従業員さん、特に末端で働く作業員さんにとっては、本当にカチンとくる話かもしれません。
最初にはっきり言わせていただきます。気分を害されたら即ページ離脱でお願いします(笑)
ちなみに、諭吉先生の1番有名な言葉としましては、
「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」
これが平等主義の象徴〜っ!という形で1番知られておりまして、多分学校でもこの言葉で「人を見下しちゃ駄目だよ」みたいなことを勉強するんじゃないですかね?
諭吉先生を一躍有名にしたのは、『帳合之法』という、いわゆる複式簿記で企業の利益を計算していく方法をアメリカから持ち込んだ、というか翻訳をしたのがきっかけです。
この本もかなり売れました。
ところが、それを現場がなかなか取り入れないし、実務化されないので、非常にお怒りになったという記録が残っております。
『学問のすすめ』が世の中に生まれたきっかけ
それは先程も言いましたけれど、元々は諭吉先生も『帳合之法』でいこうと思ってたわけなんです。
ところが、これを日本人が実務であまりやらないもんだから、諭吉先生怒っちゃって、『学問のすすめ』を執筆する方向に向かったと(笑)
「なんで複式簿記やらねんだよ!つーか、そもそもお前ら、なぜ勉強しなきゃいけないか理解してねーだろ」と。
これが「学問のすすめ」が執筆されて、世の中に広まったきっかけです。
証拠として、『学問のすすめ』には『帳合之法』を重要視し、解説する箇所が多く見られています。
さて、諭吉先生が例の前文にも関わる「天は人の上に人を造らず〜」を唱えたのは、慶應義塾を作ったときです。
慶応4年、幕末ですね。江戸時代終わりの方です。
義塾というのは、「身分に関係なく皆で学ぼう」という感じで、寄付金を集めてつくるような学校なんですけれど、そうするとお金が無いもんだから半分学んで半分教える「半学半教」です。
この教え方っていうのは、元々は諭吉先生が大阪の適塾という所へ行ってやっていたんですね。
こういう経緯もあったものですから、諭吉先生は平等主義者のようなことを言われているんですけれど、実質は全くの逆です。
福沢諭吉先生は、幕末には「あっ、武士の『予期にはからえ、越後屋』はオワコンだわ、これ。次は、資本主義の時代ですな」ということを感じて、資本主義の根幹を成す「会社」が複式簿記で成り立っているってことにいち早く気が付き、日本で1番最初に翻訳している先生です。
ですから、考え方としましては、「文明開花は銭にあり」です。
そして資本主義がどういうものかを、このように説いています。
これが資本主義の大前提となる原則であり、資本主義の下にさらされる以上、「勉強もしないのに食ってけるなんて思うなよ」と説いた、これが諭吉先生の正体です。
諭吉先生の持論1〜バカな貧乏人ほど嫉妬する
当時は江戸時代ですから身分制度がありました。生まれた時からある程度将来が決まっているような部分があったんですよ。
だから、自分の身分に関係ないことなんて全く勉強しない、そういう人が多かったんですね。
でも、士農工商の身分制度はそろそろ無くなって、勝つか負けるかの資本主義社会が本格的に始まるって、諭吉先生はそう予見していました。
そうやって資本主義が押し寄せる中で、もう1回言いますけれど、「勉強する者は金持ちとなり、勉強しない者は貧乏人となる」と言ってのけるわけです。
これカチンと来るでしょう?カッチーンと。
でも、これが150年ぐらい前に既に言われていたことで、今は資本主義もだいぶ成熟社会になってきましたけれど、未だにこれが続いてるわけじゃないですか、実際に。
そして、さらにこんな辛辣なことも言ったんです。
自分が馬鹿で困窮に陥れば、自分の非を認めるのではなく、富める人を怨むものである
今も同じですよね?
誰も認めやしません。親が悪いんだ!政治家が悪いんだ!社会が悪いんだ!って、これに対して、「お前はバカか?」って諭吉先生は言ってるんです。
勉強なんて、いつでもできるんです。いつでもっていうのは、何歳になっても出来るってことでもあります。
それなのに、勉強もしないでおいて富める人を怨む。
勤めている会社の社長に対して、「俺、あいつ(社長)に搾取されてんだ!」ってそういう人がいますけれど、ほとんどの社長は搾取なんてしていません。
諭吉先生の持論2〜努力する人間をバカにするヤツとは付き合うな
こういうの聞きたく無いですよね〜。
「天は人の上に人を造らず〜」の後の方を読み出すと、諭吉先生は相当嫌われ者になると思います。
でもどんどん行きますよ。
「人間が獣と違う点は、子を教育し、人間としての交際の道を教えるということである」って言葉があります。
まずは、子供を教育しなければいけない。そして第2段階では、人間として交際の道を教えなさいと。
我々も努力を馬鹿にするような人とは付き合いたくないですし、「努力を馬鹿にするような人たちとは絶対に付き合いなさんな。」と子供にもいつも言っています。
むしろ努力をしている人を常に認めるよう、スポーツでも勉強でも何でも良いから、努力を馬鹿にしない、そういう人と付き合って行きなさいと教えています。
これも福沢諭吉先生の教えですからね。
諭吉先生の持論3〜他人に迷惑をかけない人なだけだと結局は何も出来ない
あと、これも諭吉先生独自の教えなんですが、こんなのもあります。
他人に迷惑をかけないだけでは、世の中の役に立つことにはならない
要するに、諭吉先生の教えは、まず世の中の役に立つことが大前提なんですね。
もっと言えば諭吉先生は、「自分で事業を興しなさい。そのためにまずは知識で武装しなさい。どんどんどんどん勉強をして、そして事業を興しなさい。」って言ってるんです。
事業を興すと、やっぱり多少迷惑かけるんですよね、色々と(笑)。
ですから、他人に迷惑をかけないだけの人間にはなるな!
要するに自分から積極的に攻めて行け!と、そう教えているんです。
当時の日本ですから、自分たちが事業を興すことで国を富ませていくんだって、そういう風な考え方だったんですね。
諭吉先生の持論4〜起業して生きた痕跡を残して後世に伝えろ
諭吉先生にはさらにこんな持論があります。
我々の責務は現代社会に生きた痕跡を残し これを後世に伝えることである
もう〜、この瞬間に中小企業経営者でも、もうイヤになっちゃうんです(笑)。
生きた痕跡残してこれを後世に伝えるだと…?(引…)ってなる人、多いんじゃないでしょうか。
そして、これに関わる言葉として「金を残すは下、事業(仕事)を残すは中、人を残すは上」というところに繋がっていくんですが、これは諭吉先生の言葉では無いと言われています。
後藤新平さんという方の言葉と言われているんですけれども、まさに同じようなもので、当時の事業というのは、金が無ければ出来なかったんですね。
今よりも、もっと大資本が必要でした。
大資本が必要な時代だったので、要するに金はまず事業にぶっ込んで、そして事業を残しなさいと。
事業を長く持たせれば、どんどん大きくなって、どんどんどんどん人材が育つじゃないか。
やっぱり人材を育ててナンボだよなっていうことで、「人を残すは上」に繋がって行ったとも言われています。
これは諸説あります。「話を聞いた」という伝聞になっているのでね。
「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」の本当の意味
こういった形で諭吉先生について学んでいくと、中小零細企業の社長さん方でもイヤになってくるし、勉強しないでずっと下っ端でしかいられないっていう人は、もっとイヤになったかと思います。
けれども、これは150年前に諭吉先生が資本主義の中でどうやって生きて行くべきかと、そういうことを書かれた本で、ですから『学問のすすめ』なんですね。
学ぶということ、学問を馬鹿にするなと。
そして福沢諭吉先生は実学ということを非常によく言っています。
要するに、もっと悪い言葉で言えば、金にならないことを勉強するのではなくて、しっかりと実学を勉強しなさいと仰っています。