リアル店舗で小売販売を行うときに、顧客の購買意欲を刺激する常套手段といえば、独自の陳列構成や手書きのPOPなど視覚に訴えるものが多く利用されていますが、五感を使うと更に購買に関する意思決定を強める傾向にあります。五感の中でも特に有効なのが、「嗅覚」と「触覚」です。これらをフル活用して見事に大幅な売上増を果たした企業の実例も交えて解説します。
陳列やPOPで購買意欲を掻き立てる店は多い
リアル店舗で小売販売に関わっている方にとって、せっかく来店してくれたお客様にはぜひ、なんらか購入してお帰りいただきたいものでしょう。
そこで、商品陳列にメリハリをつけたり、手書きのPOP広告を活用したりと、いろんな工夫をされているかと思います。
今回は、来店客の「購買率」を高める工夫のひとつとして、人の「嗅覚」や「触覚」に訴えることの有効性についてお話ししたいと思います。
顧客は視覚だけでなく五感を使って購買する
さて、あなたは、スーパーにお買い物に行くことはありますか?野菜や果物売り場を見ると、2個詰め、4個詰めなどのビニール袋入りで販売されていることが多いかと思います。
ビニール袋入りは、ぱっと買い物かごに入れることができるので便利ですね。
スーパーによっては、昔ながらの八百屋さんのように、じゃがいもやにんじんなどがバラで山積みにされ、1個35円、3個で100円といった販売方法を採用しているお店もあります。
ビニール袋入りを買うか、バラを買うのかというのは消費者の好み次第ではありますが、消費者の満足度としては、バラ売りのほうが高いと考えられます。
なぜなら、じゃがいもなど、1個1個を手に取って吟味したうえで「これにしよう」と納得したうえで購入できるからです。
このように人は、何かを購入するにあたって、できるだけ五感をフル動員してその良し悪しを判断しようとします。
五感というのは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚です。
嗅覚や触覚を利用したイギリスの販促成功例
ところが日用品の場合には、商品特性上「味覚」、「聴覚」はあまり動員できませんね。しかし、「嗅覚」や「触覚」は重要です。
たとえば、最近は「柔軟剤」の場合、嗅覚を刺激する「香り」が重要な要素になっています。
柔軟剤は文字通り、洗濯後の仕上げとして投入し、肌触りを良くするためのものですが、おまけ的な要素であった「香り」の良し悪し・好き嫌いが、柔軟剤の人気を大きく左右する時代となっているのです。
もうひとつ、日用品で重要な要素となってきたのが触覚を刺激すること。つまり、「手に取って触った感触」が心地よいことです。
多くの日用品はビニールやプラスチックなどのパッケージで保護されているため、商品自体を確かめることができません。そこで、試供品としてパッケージから取り出し、消費者が自由に触れるようにしたらどうでしょうか。
実際、イギリスのスーパー「アズダ」では、トイレットペーパーを袋から出して、来店客に手触りを確かめることができるようにしたところ、売り上げが50%も増加したという成果につながっています。
また、花王の掃除用具「クイックルワイパー ハンディ」の場合、ふわふわした形状が見た目にも気持ちよさそうです。
同製品の場合、「ごみをとる」という本来の機能が持つ価値に加えて、「気持ちよさそう」という感情にうったえる「情緒的な価値」を付加することを狙っている製品です。
結果として、消費者の支持を得てロングセラー商品になっていますが、この商品の場合も1個、パッケージから取り出して、モップのふわふわした部分を直接触れるようにしたら、大きく売り上げが伸びる可能性があります。
商品に触れさせるのが購買スイッチを押す秘訣
様々な研究結果から、商品を手に取って確かめられるようにしていると、「衝動買いが増える」ということがわかっています。最初は買う気がなくても、触覚が刺激されると「欲しいスイッチ」が入りやすくなるようですね。
この「触覚に訴える」方法は比較的多くの商材に応用可能な方法ですし、コストをほとんどかけずに売り上げを伸ばせるちょっとしたテクニックとして、小売販売にかかわっている方にはぜひ試していただきたいところです。
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