中小企業の経営指標「BAST(バスト)」とは
私共あおば会計税理士法人は、『TKC』という会計士集団に加入しております。
『TKC』の加盟事務所が出しているデータの中に、中小企業の経営指標が簡単に無料で見ることが出来るBAST(バスト)と言うものがあります。
BASTは誰でも無料で見ることができ、206業種の様々な会計データの速報値が載っています。
大まかに6つに分けると、「建設」「製造」「卸売」「小売」「宿泊・飲食サービス業」「その他のサービス業」です。
全部で206業種ありますので、自分の会社と近いところを見つけて、自社の計算書と見比べてみてください。
BASTの指標にはどんな特徴がある?
BASTを見るとわかること
BASTを見ていくと、「世の中の企業は意外と経営がうまい」と感心することがあります。
なぜなら、このTKCの経営指標のBASTは、黒字企業のみの会計データで作られている指標だからです。
日本には年間の利益を4,000万円以上出している会社が8万社あるのですが、BASTを見るといわゆる儲かる業種はどういう業種かも分かってきます。
新しく商売を始めようとしたら、「どの商売をやればいいか」を選ぶうえで参考になるでしょう。
起業の失敗は商売選びの失敗が大きな要因
というのも、多くの方は自分が勤めていた会社と同じような業務で独立開業してしまいます。
当社のお客様でも10人いたら9人は自分が勤めていた会社と同じような業種で事業を始めてしまっています。
それから、資格などを得る人たちは特にそうですが、資格業というものは自分ができる範囲をどんどん狭めてしまいます。
私の妻は税理士ですが、税理士試験に受かったからということで、税理士と言う職業に囚われてしまい、ほかの商売を選べなくなりました。
資格にとらわれなければ、職業はいくらでも選べますし、こういった経営指標を見ながら「あっ、この商売は手を出してはいけない」というのが理解できますよね。
これから商売を始める人には職業を『選べる自由』というのが分かると思います。
指標のどこに注目すればいいか
じゃあ、BASTからどんな業種を選べば良いのかというと、基本的に給料の高い会社を作ろうと思ったら、まずデータの中から「従業員1人当り限界利益」に注目してください。
限界利益とは、原価計算用語で一般的に「粗利益」と言われるものです。
限界利益の高い業種
中小企業の従業員1人当りの限界利益は、年に1千万円あれば良いほうです。
月平均に換算すると80万円です。
そうすると、比較的給料が高いと言われている広告業の場合を見ると、1人当りの限界利益は110万円あります。
平均ならすと月間80万円の粗利が一人当たりあればOKですが、広告業の場合は110万円。
なので業界全体の給料も高くなっていて、1人当り月に54万円という高い給料が渡せています。
限界利益の低い業種
今度は反対に低い方を見てみましょう。
例えば「訪問介護事業」の場合、1人当りの限界利益は38万円です。なんと40万円にも届きません。
というわけで、頑張っても従業員には総込み28万円しか給料を払えないということが見えてきます。
給料の高い業種で起業したいと思ったら、こういった見方が凄く大事です。
業種ごとに1人当りの限界利益は決まっているからです。
あまり付加価値が低い業界に入ってしまうと、いくら頑張っても安月給となります。
それを知っておくだけでも随分と違います。
例えば「あんま・マッサージ」や「はりきゅう」や「柔道整備士」などは、だいたい月の付加価値が53万円で、給料が30万円とか、といったように見ていくと「この職業は給料が安そうなので、別の業種で働こうかな」と判断できるわけです。
意外に付加価値が高い設備産業
こうやって見ていくと、案外と付加価値が高いのが設備産業です。
大きな機械を使ったり、大きなものを運んだり、その際に道具を使うのは大きな要因でしょうね。
もう一つ意外に高いのが、実は産業廃棄物系です。
産業廃棄物の業界は実はとてもよい商売です。中でも産業廃棄物の処分業は付加価値が高いです。
処分業は速報値で黒字企業が88件ありますが、経常利益を見てみると平均で3500万円の利益を残しています。
平均3500万円ということは、日本の8万社の中でも優秀な利益と言われる4000万円にかなり近い数字です。
1人当りの月の限界利益はなんと140万円。ですから、従業員さんにも平均で54万円の給料を支払えています。
給料に回せる労働分配率というものが40%くらいと低いのも特徴です。製造業もだいたい40%ぐらいです。対してサービス業は60%ほどです。
それから、産業廃棄物・収集運搬業は1人当りの限界利益が100万円です。先にも上げた通り、中小企業は、月80万円あれば十分ですが100万円あります。
月給は47万円です。
ということは、同じトラックを運転するのであれば、産業廃棄物のトラックを運転した方が給料は高い。というような判断が出来るわけです。
それで逆にやはり低いのが、認知症の老人グループホームです。
非常に人数もかかります。大体一社あたり42人です。人数が多く必要になりますから、1人当りの付加価値は毎月43万円と下がります。
給料は月30万円ですから、要するに人手がとてもかかっているということです。
人手がとてもかかるとなると、1人当りの付加価値が下がってしまう。いくらそこで頑張っても、なかなか給料は上がらないということになります。
飲食業の生産性は低く安い給料しか払えない
そして、皆さんがすぐに始めたがる飲食系ですが、飲食系というのは黒字企業の割合が30%から40%と、とても低いです。
1人当りの付加価値・生産性もとても低いため、正社員よりもアルバイトをたくさん使っていると言うことです。
すごく腕のいりそうな日本料理店でも黒字企業の割合は33%しかありません。
1人当りが生み出す付加価値というのは月に46万しかなく、給料は25万円です。
日本料理店は一見すると凄い技術が必要で、そしてその技術を売りにしているので、儲かってるのではないかと思いますが、実は儲かっていないのです。
お寿司屋さんもそうです。お寿司屋さんも黒字企業割合が32%しかありません。
1人当りの限界利益は日本料理店よりは高い64万円ですが、給料は35万円しかもらえません。
お蕎麦屋さんやうどん屋さんなどもとても低いです。
こうやってデータを見ていくと、「飲食が儲かる」というのは世の中の『嘘』だってわかりますよね。
起業の良し悪しは業種業態である程度決まる
それから「節税対策の為にあえて赤字にしている」という説に対しても、こういった経営指標を見ると真実が見えてきます。
経営が上手い人たちというのは赤字にしたても赤字になりません。
経営が上手い人達は。赤字にしたくても出来ないぐらい儲かってしまうのです。
いかがでしょうか?
起業の良し悪しは業種業態である程度決まるんです。知っているかいないかって大きいと思いません?