日本では同族会社というと、どうしても「後継者が世間知らずのバカ息子で、会社を継いでダメにする」という悪いイメージが強い。しかし、同族会社を運営することには数々のメリットもある。米SCジョンソン社は5代続く世襲を「創業理念」を守るための手段としており、結果として社を繁栄に導いている。同族会社のあり方として1つの参考例となり得よう。
同族会社は悪印象強いが運営メリットもある
シリーズ・同族会社(1)大塚家具を同族経営企業と決める根拠、シリーズ・同族会社(2)同族企業のジレンマ・大塚家具の場合と「同族会社」に注目したシリーズも、今回が最終回となる。
日本では同族会社というと、どうしても「後継者が世間知らずのバカ息子で、会社を継いでダメにする」という悪いイメージが強い。
しかし同族経営企業を運営することには以下のようなメリットも存在する。
- 1)非上場なら株式買収によって経営権を奪われるリスクが低く、外部の意見に左右されにくい経営が可能となる。
- 2)子供(親族)へ継承を決めることで、早期の段階から経営者としてのキャリア形成を実施し、経営の移行をスムーズにできる。
- 3)理念にフォーカスし、長期的な視点で見た経営の資源配分を行うことが容易になる。
- 4)会社が成功すれば経営者一族のリターンが大きくなる。(上場/売却時)
- 5)収入を親族へ分散することで、節税が可能となるできる。
これらのメリットを享受し、同族会社としてお手本になる企業がアメリカにある。
ファミリーカンパニーと自ら銘打つ米国企業
「SCジョンソン」という同族会社をご存知だろうか?
日本法人は「カビキラー」やお風呂の「ジャバ」で知られる家庭用化成品メーカーである。
彼らは自らを「ファミリーカンパニー(同族会社)・SCジョンソン」と謳い、ホームページ上でも「1886年の創業以来、同一のファミリーが一貫した経営方針に基づいてビジネスを行い、現在5代目に引き継がれています。」と宣言している。
現在の本社CEOは、ハーバート・フィスク・ジョンソン3世である。
SCジョンソンが同族会社でありながらも反映し続ける理由は、“企業を存続させるものは人々の信頼と支持であり、他はすべて影に過ぎない“という創業者H.F.ジョンソン,シニアの経営理念を、子どもたちが理解した上で承継しているからである。※1
「This We Believe」と銘打ったSCジョンソンの宣言の体現者として、祖先が作り上げた理念を守るため、5代目の子どもたち4人は自発的にSCジョンソンへ入社し、( ハーバート・フィスク・ジョンソン3世、S・カーティス・ジョンソン、 ヘレン・ジョンソン・ライポル、 ウィニー・ジョンソン・マルクウォート)淀みない分治経営を行っている。
社内の創業家以外の人間は、彼らの経営をどう評価しているだろうか?
SCジョンソンはGPTW(Great Place to Work:本社サンフランシスコ)が選出する「世界における働きがいのある会社ランキング」の上位選出企業として、毎年ノミネートされている。2014年も同社は12位にランクインした。
このランキングは、社員アンケート結果によって評価査定が行われているため、創業家の後継者達による経営手腕は、社内から見ても客観的な評価が高いと言えよう。
同社は100ヶ国以上でマーケティングを展開※2し、社員総数は約1万3,000人、売上高は約90億ドル(約1兆800億円)を誇る※3家庭用品メーカーとして、現在も規模を拡大し続けている。
企業は私のものであり社会の一員でもある
資本主義社会において、企業は利益と存続の追求場所であると同時に、存続し続けることで社会に浸透し、存続するためには社会へ貢献する存在とならざるを得なくなる。
「利益を守るための手段」と同時に、社会に対し自社がどんな存在でありたいか?、「経営理念を継承する手段」として、子供・親族が一番の理解者であるなら、彼・彼女が継承者と成り得る場合に、同族会社はその真価を発揮する。
SCジョンソンは、そのよい実例と言えよう。
参照元:
※2 エン・ジャパン「ジョンソン株式会社採用ページ」
http://employment.en-japan.com/desc_363228/
※3 ジョンソン株式会社ホームページ
http://www.johnson.co.jp/corporate/johnson/abroad.html