業績好調アイリスオーヤマがこだわる同族経営
2017年は、出光興産、大塚家具、大戸屋ホールディングス、ロッテなど、同族経営企業で発生したトラブルが印象的な1年でした。
これらの報道に対する世間の視線には厳しいものがありますが、一方で日本企業の95%が同族経営であることも事実です。
さて、今年の1月に、アイリスオーヤマで53年ぶりに社長交代が行われ、創業家の長男が新社長に就任したと報じられました。
参考リンク:アイリス、国際化へ世代交代 長男の社長昇格発表 :日本経済新聞
社長交代からしばらくして、同社の社長から会長に退いた大山健太郎氏が東洋経済のインタビューに答え、同族経営にこだわる理由を述べています。
参考リンク:アイリスオーヤマ、同族経営にこだわる理由:東洋経済オンライン
ぜひ読者のみなさんも、上記の記事をご一読ください。
ちなみに同社の売上は2017年に4,000億円を超えました。2015年時点で3,000億円強の売上でしたから、絶好調と言って過言ではありません。
同族経営の強みは所有と経営の一致による意思決定の早さ
同族経営にはメリットもデメリットもたしかにあるでしょうが、東洋経済の記事で私が一番共感したフレーズを引用します。
ただ、正直に言うと20年前から息子を社長にしようと思っていた。サラリーマンの中から選ばれてきた人は、周りに配慮しすぎて判断に時間を要する。オーナーは株主でもあるので、判断を下すスピードも速い。
同族経営がネガティブに見られるのは情報をクローズドにするから。当社は社員に対して情報をオープンにしており、密室はいっさいない。大事なのは創業の理念が引き継がれること。そのためには同族経営のほうがいい。
上記で大山会長は同族経営のメリットとして、判断を下すスピードが早いことについてコメントしています。
それは、所有と経営が一致しているからです。サラリーマン経営者は、株主の立場を考え、意思決定が遅くなる、あるいは長期的な判断ができないことも多いのが実情です。
危険なのは会社を私物化して従業員の利益を損なう点ですが、長期的に見ると自分達だけが稼いで、従業員に悲惨な扱いしかしない企業は生き残れません。そのようなデメリットを理解していれば、同族にもよいところがあります。
そして、会社が苦しい時、同族経営者は逃げることができません。同じシチュエーションでサラリーマン社長が取れる最大のリスクは、会社をやめる(クビになる)ことです。
同族経営者にはそれができません。
アイリスオーヤマは非上場であり、これからも非上場の方針を貫くと発表しており、普通の方が考えている以上にシビアな立場に彼らはいます。
会社が資金不足になれば、自腹を切ることも普通にあるのです。
メリットを活かせば同族経営ほど強いものはない
判断のスピードが早いのです。極端にいうとその場で決められるトップがいるのです。私がいったん話を持ち帰って資料を作り込んで、役員会での質疑応答のために準備をしている間に、トップが即決して買収を決めるケースもままあります。
苦しい時でも同族経営の会社は、逃げられない分、踏ん張ることが多いです。駄目になれば最悪一家が離散するしかないからです。
同族だからと甘くみることなく、むしろそのメリットを活かしている企業も多くあることは知っておいて損がないと思います。