自らを天才的なトップだと思うなら、トップダウン型のライン組織を組んでも何ら問題はありません。
しかし、もし自分が凡人だと思うなら、物事の意思決定をトップとスタッフとで協議して決めていく、ライン・アンド・スタッフ組織を組んだほうが経営は上手く行きやすいもの。
ライン・アンド・スタッフ組織の何が良いのか、その歴史を紐解きながらご紹介します。
ライン組織とライン・アンド・スタッフ組織
今日は組織論のお話です。
最も簡単な『ライン組織』と『ライン・アンド・スタッフ組織』という2つの組織を対義しながら、私もこちらに近いんですが、なぜ『ライン・アンド・スタッフ組織』というのが作られたのかっていうお話をしようと思います。
まず、最も単純だし、中小企業に多いのは『ライン組織』です。
トップがいて、あとは部門が分かれて、トップが部門長に指示をするっていうだけの組織の作り方ですね。これ本当に多いです。中小企業はほとんどこっちです。
ところがライン・アンド・スタッフ組織というのは、部門のラインっていう所だけではなくて、トップの近くに「スタッフ」という頭脳集団をおきます。
物事の意思決定をトップとスタッフとで協議して決めていくんですね。
このライン・アンド・スタッフ組織というのは、これが実は”強い”わけではないんですよ。
実は天才的なトップだったら、ライン組織の方が上手く機能する場合もあります。
ところがライン組織を採用しても、「やっぱり天才には敵わない。だって俺たち天才じゃないもん」ってことのほうがやっぱり多いんです。
そういう流れがあって、ライン・アンド・スタッフ組織というのができたわけでございます。
ライン・アンド・スタッフ組織の原型が生まれたプロイセン
今の中小企業においては、会社側が敢えてそういう発表をしていないから、トップの近くにいるスタッフっていうのは実際よく分からないかもしれないんです。
今の先進的企業っていうのは、先行性、革新性をもった人たち”頭脳集団”を社長の側におくときに、中小企業の場合は各部門のリーダーが一部兼任している場合もあります。
その時に中小企業だと分かりやすいのは、社長が何かしらの決定をする時に必ず呼ばれているメンバーです。
あれが「スタッフ」といわれている、要するに頭脳集団だと思っていいですね。
では、なぜこの組織形態が作られたかというと、やっぱり歴史上は戦争なんですね。
歴史上は戦争から始まったことで、たった1人の天才を打ち負かすために、ライン・アンド・スタッフ組織の原型が作られたわけでございます。
一番最初にライン・アンド・スタッフ組織のようなものを作った人たちの写真が残っています。
この人たちは”誰か”に負けているんですね。
実は戦争の天才であるナポレオンに負けて、捕虜にまでなってそして帰してもらってと。
「やっぱりナポレオンは天才すぎて、うちらの指揮官じゃ勝てねぇわ。もうやり方を全部変えてしまおうぜ」みたいな感じで。
今のドイツは昔プロイセンといったんですが、そこに参謀本部っていうのを作って、天才ナポレオンに対決できる「次は絶対捕虜になんねぇぞ!」っていう感じの組織を作ったわけですね。
そして、結果的にナポレオンを打ち破ります。
凡人はスタッフ組織で必死に考えて計画練って戦うしかない
では何をやったのかというと、参謀本部っていうのは、何事もまず「計画」を立てます。
要するに、軍備はこうやって揃えて、武器はこれくらい必要だとか、そうやって最初に計画を立てます。
そして何事も最初に「作戦」。作戦でまず勝っていく。作戦を組んで組んで組みまくる。
それからもちろん補給もとても大事になってきます。「兵站」ですね。
世の中ってやっぱり人が動かしているから、「人事」のことを皆で考える。
考えて考えて考えぬく!「もうこれ以上、天才ナポレオンに俺達は絶対に負けないんだ!」ってね、そういうふうに一生懸命やったわけですね。
それが現代の経営にも引き継がれてきていて、天才的な経営者っていうのはスタッフは必要無いと思います。私も。
ところが皆凡人なんですよ、うちらって(笑)。
ですから、凡人がどうやって戦っていくかってなったら、やっぱりそのスタッフ組織っていう”頭の良い奴”と協議して協議して…そして計画して作戦練って練って…と。
世の中の中小企業の9割は作戦すら立ててない
実際に今のやり方は、本当にね、作戦でまず勝つんですよ。
作戦で勝って、それから実行に移す。
我々が実務をやるときっていうのは、「既に勝ってる」とか、「これから勝つから」っていう、そういう証明作業をするに過ぎない。そこまで考えて一応作戦を組むんですよ。
ところがやっぱりね、そりゃあ予想通りいかないこともあります、正直言うとね(笑)。
ですけれど、そうなればまた作戦組み直せば良いやっていう感じで実務はやっていく。
ところが世の中の中小企業っていうのは、残念ですけれど9割、10社あったら9社は計画も無いし、そして作戦も無くて、行き当たりばったりで、意外とやってます。
ですから、世の中の会社っていうのは、自分たちが起業開業したばっかりの時に見ると、外から見るとすごく強く見えるんです。
ところが10社中9社は計画も作戦もろくに無くて、行き当たりばったりでやっていると考えるとね、
それ程、実は…裏からみると強くない。
ですから自分たちが、もし「勝とう!」と思ったら、「自分は天才じゃない」ってしっかり認識して、スタッフのような頭脳集団をおいて、一戦交えればよいじゃないか!って話です。