人間には衣食住といった生命を維持するための最低限な必要を満たしたい欲求があると同時に、社会的承認を得たいと感じる欲求が根源的にあります。特に、文化が成熟し、人口減少社会に突入した日本においては、「美貌・個人的な魅力を上げたい」という欲求を、ますます多くの人が抱くようになっていくでしょう。
人間が根源的に保有している10の欲求とは?
ビジネスとは、お客様に商品やサービスを通して価値を提供し、その価値に対して収益の提供を受ける活動です。
では、どんな価値を提供したらお客様はその価値を認めてくれるのかといえば、自分の欲求を満たしてくれる商品やサービスをならば価値を認めてくれるでしょう。
インターネットのコンテンツビジネスを展開する人間なら誰もが知る、ジェフリー・ラント博士によると人間の根源的な欲求は次の10個です。
- 1:経済的な安定が欲しい
- 2:健康が欲しい
- 3:愛が欲しい
- 4:安全(安心)が欲しい
- 5:救済が欲しい
- 6:自尊心が欲しい
- 7:帰属意識
- 8:独立したい
- 9:性的な満足が欲しい
- 10:美貌・個人的な魅力を上げたい
いずれも私達が皆持つ欲求ばかりですよね。
東日本大震災の翌日、80歳の女性がエステに行った理由
中でも今回注目したいのが、「10:美貌・個人的な魅力を上げたい」という欲求です。
いつまでも若々しくいたい、魅力的でありたい、と思う気持ちは万人共通のものです。
特にこれからは高齢者の間で、この欲求を求める傾向がますます強まるでしょう。
いわゆるアンチエイジングという領域のビジネスです。
エステサロンの男性経営者が経験した以下のような話があります。
東日本大震災の翌日、こんな日だからお客様はいないだろうと各店を見て回ると、80歳になる女性の常連さんがエステに訪れていました。
そこで経営者は、「いくつになってもきれいでいたい女心だろう」と思ってスタッフに来店理由をヒアリングしてみました。
するとスタッフは、「そうじゃないんです。万一亡くなった時にもキレイな顔でいたい、という思いで来てくださったようです」と答えました。
そうです。80歳になる老齢の女性は、東日本大震災という「死を意識する体験」を経て、なおいっそう「美」を意識したのです。
「美貌・個人的な魅力を上げたい」というニーズは今後も拡大する
この行動を裏付ける根拠として、行動経済学には「ラチェット効果」という法則があります。
ラチェットとは、工具のレンチやジャッキに備えられた機構のことです。レンチなどは一度片方向に動くと、その方向にしか行かないように設計されていますよね。
人間の思考にもラチェットと同じ作用があり、「感動体験や一度味わった贅沢は、たとえ他の消費を削ってでも、もう一度味わいたい」と感じるように出来ているのです。
ですから、物価が上昇して購買力が落ちたり、増税や減収によって可処分所得が減少しても、根源的な欲求に対しては、ある部分で消費を抑えたり、または貯蓄を取り崩しても欲求を満たしたいと考えます。
先程の震災翌日に老齢の女性がエステを訪れたのも、美貌を死ぬまで高め続けたいという根源的な欲求を彼女が強く持っていたからこそ。
文化が発達し続ける未来に向かい、「美貌・個人的な魅力を上げたい」という欲求を、ますます多くの人が知識や体験を通じて抱くようになっていき、市場もこれに連れて拡大します。
ビジネスを飛躍に導く1つの切り口として、「美」「自己実現」というキーワードを今一度意識してみませんか?