ラジオ番組オールナイトニッポンで、中島みゆきさんの下に届いた一枚のハガキには、中卒で就職した女の子が、「あの子は中卒だから事務は任せられない」と上司から陰口を叩かれたこと、社会に対するやり場の無い気持ちが綴られてました。名曲『ファイト』が生まれたエピソードです。でも、ちょっと待った!もし本当に事務仕事したいならやれることがあるんじゃない?キミアキ先生の解説です。
中島みゆきの名曲「ファイト」に出てくる中卒の女の子
「あの子は中卒だから事務は任せられない」、このネタ知ってる!っていう方はいらっしゃいますか?
沢山の歌手の方がカバーしている、中島みゆきさんの『ファイト』という歌があるんですが、この歌をつくる元ネタとなったのが1枚のハガキからなんですね。
17歳の女の子が家庭の事情で高校に行けなくて働きだしたんですが、上司たちが話してるのを聞いてしまうんですね。
「あの子は中卒だから事務は任せられない」って。
それを女の子が聞いて、どこにもやり場のない気持ちを中島みゆきさんにハガキという形で出した、そのハガキから着想して中島みゆきさんが歌を作ったんですね。
ただね、この歌詞がちょっと分かりにくいんですよ。
「あたし中卒やからね 仕事もらわれへんのやと書いた」
ところが、実際のハガキの内容を見ると、あくまで上司は「事務は」任せられないというふうに言っていたんですね。
そこがついつい、あいつには仕事自体をあげないよ、みたいに取られる歌詞になってしまっているので、ちょっと世の中でも誤解している人が多いのかなと思い、あえて先に説明させていただきました。
事務職でAIの時代に残るのは上流の仕事だけ
ということで、今日は事務の話をするんですけれど、もともと事務職というのは男性にも女性にも、今も昔も大人気でございまして、実質的な競争率というのは 常に10倍以上です。
これは表面的な競争率と違って、実質的に常に10倍以上の競争があるんですよ。
私自身、小学校〜中学校と本当に体が弱かったものですから、これじゃあまともに働けないだろうと私の父親が判断しまして、父親は肉体労働者をやっていたんですが、私にはとにかく事務職に就くようにと言っていました。
「夏はエアコンの効くところにいないと、外で働くようになってもお前は倒れてしまうから、お前は事務職だ!」と。
それで私は今こういうお仕事(会計事務所)をしているわけでございます。
事務ってすごく範囲が広いんですけれど、事務職の中でも就きやすいのが経理職です。
ただ、AIの時代が来てほとんどの事務職がなくなると言われています。
経理職についても下っ端の仕事は殆ど将来無くなるんですけれど、経理もまだまだ生き残れるなっていう部分がありまして、いわゆる上流の仕事です。
経営判断を求められた時に、数字がきちんと出せるような立場ですね。
上流の事務経理をやるならお勧めの企業規模
私は一応男性なんですが、男性だったらどういうところに入っておくのが1番良いのかな〜?っていうのを考えてみました。
そう考えると仕事が楽なのは、上場企業か非上場だったら非上場なんですね。
上場企業は3ヶ月に1回は報告書を出さないといけないし、常に先読みした数字を発表して行かないといけないので、仕事が結構大変です。
非上場の方は、もしベンチャーキャピタルとかにお金を出してもらっていなければ、アニュアルレポートとかも必要ないし、ぶっちゃけ年に1回銀行さんだけに報告書を出しておけば良いだけなんですね。
売上規模はやっぱり10億はあって欲しいですね。10〜50億円くらいが丁度良いのかな。
そして堅い商売が良いですね
東京だったら不動産に絡んだ不動産管理とかが堅い商売なので、そういうところだったら超楽勝だなと(笑)。
従業員さんの数も100〜200人ぐらいだったら、まぁそんなに大変じゃないので、まぁこんなところで経理をやるのが良いですね。
日本の価値観「お金は汚いもの」は由々しきこと
自分は男ですから経理、それから財務、それから予算組もやってって、そういうとこまでやっていかないといけないんですけれど、女性はむしろそういうのは全く分からない人達が多いです。
一般事務と経理の差が分からないような方が多いので、その辺はやっぱりAIに取って代わられるのかな…という感じはします。
未だに女性の間では、「どうしても事務職に就きたい!」という需要が凄くありまして、だからこそ じゃあ資格は何か?っていうと必ず簿記の2級というのを取る人が多うございます。
そんな世の中であるにも関わらず、事務職にすごく就きたい!という世の中であるにも関わらず、「お金は汚い?」っていうアンケートを中高生にとったら、やっぱり中高生はお金は汚いもんだって教えられているから、「そうだと思う」というふうに8割が答えちゃっているんですね。
正確には83パーセントですよ。
これは日経さんの調べでもね、「これは非常に由々しき(忌々しき)ことだ」と。
お金持ち達にとっての現実は「お金は友達」
やっぱりね〜、この「お金は汚い」っていうことを、な〜んでしっかり教え込んでしまったのか。
もちろんね、学校の先生というのは公務員の方が多いので、自分でモノを売ったりしてお金を稼いだことがないから、自分たちは奉仕することでお金を貰っているので、そういうふうになってしまたんだと思うんですけれど。
家庭での教育もかなりあると思うんですね。
家庭の教育を考えてみると、大多数の労働者の家庭や、それから公務員の家庭が「お金は汚い」という感覚であれば、逆もありまして、会社の経営者とか自営業者は、ほぼほぼ「お金は大事」です。
お金が無いとなんも出来ないんですよ。従業員の給料も払っていけないし、事業を来年も継続できるかどうかってね、お金ってめちゃくちゃ大事なんですね。
それからお金持ち達は、「お金は友達」という感覚です。
ですから、お金に関する仕事をしましょうと考えた時は、「お金は大事」だと思っている人とか、「お金は友達」だと思っている人、こっち側に向けて仕事をすれば良いだけなんですね。
お金周りの事務仕事でスゴ腕になると基本的には忌み嫌われる
ですから、経理系の仕事だったり、もしくはファイナンシャルプランナーのような仕事であっても、基本的には「お金は汚い」と思っている人以外の顧客を得て行けば良しです。
お金は汚いものだと思っている人が世の中には多いわけですから、そうすると経理系でもなんでも、スゴ腕の経理マンとかになると、基本的に忌み嫌われる存在になっちまいます。
いわゆる小説で言うカフカの『変身』ですよ。
朝起きて芋虫になっていて、最終的に家族に殺されちゃうんですけれど、あんな感じで忌み嫌われる存在になるしかないですね。
だって、大多数の人がお金は汚いもんだって思っているわけですから。
ところが自分は、基本的に経理職とかいう「座って出来る仕事がしたかった人」なので、じゃあ本当に狭き門の経理職に就くには、忌み嫌われる存在になっても良いやと。
そうやって、私もお金の周りで仕事する立場になろうと考えたわけです。
実は今、中学1年のうちの長男坊が簿記2級の試験範囲の勉強が終わりまして、過去問も全部解き終わりまして試験まであと1ヶ月切りました。
どんどんお金の勘定の仕方が上手くなっています。
全部数字で考えられるようになって、昨日も原価計算をやっていました。
モノをいくらで作れるのかっていうのを考えながら、「これ、チョットかかり過ぎだな…」とか(笑)言いながら色々考えて解いていましたよ。
そういう形でお金の周りで仕事をするという勉強、複式簿記をやらせている私も、そりゃあもう周りから嫌われますよ。
「中学1年の子供に何をやらせているんだ!」ってね。
ですけれど私はそれを選んだのは、正直言うと今はもう少数派になって嫌われても、そういう技術を持っていないと生きていけないからです。
「ファイト」に出てくる中卒の女の子が進むべき道
中島みゆきさんに、そのハガキを出した女の子は当時17歳ですよ。
事務の仕事をもらえないと言っても、まだまだ勉強できる歳。
まだ17歳ですから、もう1回勉強をしなおして、事務の仕事が出来るようになれば良いだけの話なんですね。
中島みゆきさんも、オールナイトニッポンではがきを読んだわけですけれど、「可哀想に」なんて同情しなかったんです。
「偉そうなことを言っちゃえば、どういうところを通ってきたかっていうことよりも、そこで、何をあなたが吸収してきたかっていうこと。」
「周りの全ての人間に、あなたの良さを分かってもらおうというのは無理なことだけど、分かってくれる人もどこかに一人はいるかもしれないとかね。」
という具合に、凄く冷静にコメントを返して、それでファイト!って言ってるわけです。
中卒でも、本当に事務の仕事がやりたかったら、周りがなんと言おうと一生懸命に勉強して、「お金は友達」と思うお客さんを相手にする会社に入って、どんどん結果を出せば良いんです。
確かに周りにいる人の殆どは、女の子のことを嫌うかもしれないけれど、やがて絶対に「ファイト」って言ってくれる、本当に良い応援者が周りに集まり始めますから。