小林製薬の製品名称はなぜ覚えやすい?ネーミングの際に拠り所としたい5つの視点

マーケティング

ナイシトール、ケシミンクリーム、ワスノン、これらはいずれも小林製薬の製品名称ですが、非常に覚えやすく、効果がダイレクトに伝わる秀逸なものです。

ネーミングによって商品の売れ方は大きく変わりますが、一方で良いネーミングを考えるのは難しいことです。

そこで本稿は、良いネーミングを考える上で拠り所としたい5つの視点をご紹介します。

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1回聞くと忘れない小林製薬の秀逸な商品ネーミング

こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。

「えーっと、あれ、なんだっけ?」
「えーっと、あのひと、なんて名前だっけ、あのドラマに出てた・・・」

最近、ものや人の名前がなかなか出てこないことが多くなってまいりました。

加齢に伴う典型的な「物忘れ」の症状です。

ちょっと思い出せないくらいなので日常生活に支障はなく、「まあ、年だから仕方ない」で済ませてましたが、物忘れに効果のある薬が最近発売されたんですね。

その名も「ワスノン」。

忘れ(ワスレ)+ない(ノン)という意味でしょうか。

こうしたベタなネーミングを出す製薬会社といえば、今は「小林製薬」くらいしかありません。

シミ、そばかすを防ぐ「ケシミンクリーム」、内臓脂肪を減らす効果があるという「ナイシトール」など、小林製薬は製品の効能(ベネフィット)がダイレクトにつたわるネーミングにこだわっています。

節約社長
小林製薬:ナイシトール

しかも、だじゃれに近い表現が多く、わかりやすいので一発で覚えることができますね。「ワスノン」も、1回TVコマーシャルを見ただけで頭に刻み込まれました。

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小林製薬の製品名称はなぜ覚えやすい?ネーミングの際に拠り所としたい5つの視点

さて、今回は、ネーミングの基本について簡単に解説しましょう。

新製品・サービスの名称を考えるとき、また、既存製品・サービスに新しい名称を与えてリニューアルしようとするときも同じですが、どんな名称にするかを考える拠り所としては以下の5つの視点があります。

  1. 記憶可能性
  2. 意味性
  3. 移転可能性
  4. 適合可能性
  5. 防御可能性

それぞれを詳しく見ていきましょう。

1)記憶可能性

まず「記憶可能性」とは、文字通り名称が覚えやすいことです。小林製薬の一連の商品はこの「記憶可能性」が高いことは明白です。

前述したように、だじゃれっぽいものが覚えやすく、他の例では「通勤快足」が挙げられます。

2)意味性

2つ目の「意味性」は、名称自体でなんらかの意味や効用などが伝わるものです。小林製薬の製品がまさにこれ。

どうしてもベタで野暮ったい名称にはなりますが、製品の特長なり効用が名称だけで伝わるのは効果的。

小林製薬の場合、基本的に最初の「記憶可能性」と「意味性」を重視したネーミング方針であることがわかります。

3)移転可能性

3つ目の「移転可能性」とは、さまざまなカテゴリー製品の名称としても違和感のない名称であるか、ということ。

例えば「amazon」は、アマゾン川から取った名称ですが、もちろんアマゾン川とは直接関係がなく、意味性は高くありません。

だからこそ、書籍の扱いから始まって、家電、コンピュータ、衣料、日用品など、あらゆるカテゴリーを網羅するECサイトの冠名称として成立しています。

「Yahoo!」も同じく、意味性は低いがゆえに、どんなカテゴリーの製品・サービスを扱っても違和感を与えませんね。

4)適合可能性

4つ目の「適合可能性」は、今の時代の空気やトレンド、ターゲットが好むライフスタイルなどと合致した印象やイメージを与える名称であるかどうかです。

化粧品ブランドに多いのですが、数十年も前から発売されている製品の名称が、今となってはやや古臭く感じられ、若い年代の人たちに受け入れらないケースがあります。

このままでは売上がじり貧になってしまいますので、思い切って名称を変えるか、あるいは広告などを通じて、ブランドイメージを切り替えていく=リ・ブランディングを行うことがあります。

5)防御可能性

5つ目の防御可能性とは、特許や実用新案、商標権、著作権などで名称を守ることができるかどうかです。

例えば、果物のりんごに「リンゴ」という名称をつけても商標登録はできません。

カテゴリーを表す一般名称や誰もが利用するありふれた表現は法的に守ることができませんし、すぐに真似されてしまいます。

しかし、「関サバ」のように「地域名」+「サバ」という組み合わせの名称であれば、オリジナルな商品名として商標登録も可能になり、真似されることを防ぐことができます。

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ネーミングは商品の売れ方を大きく左右する

製品・サービスのマーケティングにおいて、「ネーミング」すなわち名称をつけることは、最も重要な作業のひとつです。

商品の売れ方は、ネーミングで大きく変わるからです。

その最たる例が、皆さんにもおなじみの「お〜いお茶」です。

同商品はその昔、「缶入り煎茶」という名前で発売されていましたが、お世辞にも売れてるとは言えない商品でした。

ところが、中身は全く一緒のままネーミングを「お〜いお茶」に変えたところ、同商品は瞬く間に売れだし、30年以上伊藤園の稼ぎ頭としてロングランヒットを続ける商品となっています。

消費者に認知され、売上に貢献するネーミングを考えるのは簡単ではありませんが、もしネーミングについて考えるタイミングがあれば、今回ご紹介した5つの視点を参考になさってみてください!

Photo credit: The Comedy Store via Visual Hunt / CC BY-SA

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松尾 順

株式会社ジゾン
コンサルティング準備室 室長

早稲田大学商学部卒。マーケティング・プロデューサー。
ニールセン・ジャパン、CRC総合研究所でマーケティングリサーチ、コンサルティングに従事した後、電通ワンダーマンで、データベース・マーケティングやCRMの企画・プロデュースを経験。さらに、ネットベンチャーの立ち上げにも執行役員として参画した。

現在は、心理学、行動経済学といった消費者心理・行動の理解に役立つ学問分野の研究を活用し、売れる商品づくり、効果的なコミュニケーション開発に取り組む様々な企業をマーケティングリサーチからマーケティング施策の企画・運営までトータルに支援している。

株式会社ジゾンでは、CMSシェアナンバーワンのソフトウェア「HeartCore」の導入に伴うマーケティングコンサルテーションを担当している。

【著書】
『ブランディング戦略―ブランディングの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ) 』誠文堂新光社
『[実務入門] 営業はリサーチが9割! 売上倍増の“情報収集”完全マニュアル (実務入門)』日本能率協会マネジメントセンター
『先読みできる!情報力トレーニング (ビジマル)』TAC出版

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