食材宅配専門業者やネットスーパーが今後も事業拡大するのは、消費者のライフスタイルに鑑みれば日の目を見るより明らかです。ただし、これら宅配事業を敬遠する人も一方では存在します。彼らには、商品を直接見て購買したいという希望があります。これを叶えるべく、商店街を丸ごと自宅近くへ移動するサービスを運営している小田原橘商店会の取組みをご紹介します。
ネットスーパーが台頭〜その規模は今後も更に拡大する
買物に行くのが大変な高齢者や、共働き・子育て世帯の需要を開拓しようと、多くのスーパーがネットで注文を受けて宅配する、ネットスーパーを始めています。
大手の食材宅配事業であれば、生協をはじめとして、新興企業だと、オイシックス、らでぃっしゅぼーやを思い浮かべる方もいることでしょう。
また、アマゾンをはじめとした巨大ECサイトは、当日注文・当日宅配の「超」利便性が高い強力な流通網を築き上げ、着々と顧客を増やしています。
これら、食材宅配専門業者、ネットスーパーが、今後も事業拡大していくことは、消費者のライフスタイルに鑑みれば、日の目を見るより明らかです。
ネットスーパーに死角は無いのか?リアルな買い物を選択する人達の声
では、世の中の人が100%、食材宅配専門業者やネットスーパーを使うようになるのでしょうか?
私はそうでも無いと考えています。
今年の1月に日本政策金融公庫は消費者動向調査を行い、全国の20~70歳代の男女2千人を対象にした、食品購買時における販売チャネルの利用状況をまとめました。※
これによると、消費者は現在、食品を以下のようなチャネルで購買しているようです。
- ネットスーパー・ショッピングサイトによる宅配:7.2%
- 生協等による宅配:13.2%
- デパート・スーパー:96.7%
- ドラッグストア、八百屋、肉屋、魚屋等の商店:2割前後
こうしてみると、ネットスーパーやショッピングサイトによる宅配を日常的に選択している人は、まだまだ少数派です。
ネットスーパーで食品を購入しない人に理由を聞いてみたところ、「商品を見て選べない」が60.9%で最も多く、次いで「価格が高い」が33.4%、「受取りが面倒」が24.1%の順となりました。
ネットスーパーも当然、これらの課題を解決してくるでしょうが、彼らを競合とする企業にとっては、これらの課題が状況打破のヒントとなるでしょう。
商店街を丸ごと移動!小田原橘商店会の取組み
時代の流れを受けて、商店街の中には、もっと高齢者を商店街の顧客に取り込もうと、電話やファックスで注文を受けて顧客の自宅へ宅配する、という共同宅配事業を専業で行っているところもあります。
ただ、私が聞く限りでは、共同宅配事業で成功している事例は殆どありません。
やはり、直接商品を目で確認して選びたいというニーズに対応できないこと、顧客がそのシステムに対応できない人であることが、原因として考えられます。
高齢者の多い地区であれば、更にこの傾向は強くなるでしょう。
これらの問題に対して、1つの解決策を提示する商店会があります。それは、小田原橘商店会です。
小田原橘商店会は宅配ではなく、買物が不便な場所まで軽トラックで行って買物してもらう、出張商店街を実施しています。
言わば、商店街を丸ごと、お客様の自宅近くまでごっそり移動するサービスです。
参考リンク:橘商店会の出張商店街
肉、魚、野菜・果物、豆腐、バーガー、雑貨などの店が、1か所15~30分程度の時間留まり、7か所を巡るというサービスで、毎月第2日曜日に行われています。
この方法ならば、お客様は商品を直接見て選ぶことができます。
しかし、出張商店街は月に1回しか開けないため、それをカバーするために、店によって宅配にも対応しているようです。
宅配もしてくれるし、自宅近くまで来てもらって、直接モノを見せてもらうことも可能ということで、近隣住民からは大きな信頼を得ています。
今後、ますます増えていくことが予測される買物難民への対応は、大手がまだまだやりきれていないことです。
利用者のニーズを踏まえたサービスを実施することで、小さなお店にも活路が拓けていきそうですね。
※日本政策金融公庫 消費者動向調査:食の志向
https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_170302a.pdf