アンケートは本来、調査対象者となるお客様の実態を把握したり、自社、競合商品に対する認知度や理解度、購買意向、評価などを知るために行うもので、「マーケティングコミュニケーション施策」ではありません。しかし、アンケートに顧客満足度調査を入れると、顧客の好意度とリピート率が上がることがわかっています。その理由をご紹介しましょう。
アンケートは本来、売上に直結する施策ではない。
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
今回は、「マーケティングコミュニケーション施策」としてのアンケート調査活用についてお話しましょう。
私自身はマーケティングリサーチャー歴30年。
とはいえ、今はWebサイトの開発をはじめ、デジタルマーケティングのプランニング&プロジェクトマネジメントの仕事の割合が多くなっているのですが、アンケート調査やグループインタビュー調査などのリサーチプロジェクトも、プランニングの一環として時々行っています。
さて、調査を実施する目的はいろいろありますが、ビジジネスシーンでは基本的に、調査対象者となるお客様の実態を把握したり、自社、競合商品に対する認知度や理解度、購買意向、評価などを知るために行うことが王道です。
つまり、お客様のことをより良く知り、理解することが主眼であって、お客様に自社商品をアピールし、購買意欲を喚起するための「マーケティングコミュニケーション施策」ではありません。
アンケートに顧客満足度調査を加えると好意度が強化されリピート率が向上する
しかし、実は調査を通じて、自社商品に対する好意度を高めるといった副次的な効果を狙うこともできます。
そんな副次的効果も期待できるのが「顧客満足度調査(以下、CS調査)」です。
CS調査では、飲食店の場合なら、食事に対する評価、店員に対する評価、内装に対する評価など、様々な評価項目について5段階スケールなどで回答してもらえるような設計になっていますね。
加えて、改善すべき点などをフリーに記入できる回答欄を設けることができます。これは、満足度を下げる原因となる問題を把握し、改善することが狙いです。
ここでもう一工夫してみましょう。
「このお店で良いと思う点がありましたらご記入お願いします」
という設問も追加するのです。
つまり、自社についてネガティブな点だけでなく、ポジティブな点も聞くわけです。
ポジティブな回答結果は、後日集計後にスタッフに共有することで、やる気を高めることに役立ちますが、一方で回答してくれたお客さまの自店に対する好意度を強化し、リピート率を向上させることにも寄与するのです。
「自分の考えは一貫していたい」一貫性の法則
なぜ、ポジティブな回答をすると、お客様自身にも好影響を与えるのでしょうか?
この影響力は、ある心理法則によって説明することが可能です。
それは、「一貫性の法則」です。この法則は、名著『影響力の武器』で紹介されているのですが、人は、「自分の考えは一貫していたい」という心理傾向があることを意味しています。
「今日は好きだったけど、明日は嫌い、でも明後日にはまた好きになるかも・・・」というように、コロコロと考えを変えるのは一貫性がありません。
態度を変え続けていると社会の中でうまくやっていけません。そこで、私たちはなるべく、自分の考えを変えないように努めるものなのです。
ですから、CS調査で、お店の良い点を挙げると、その店に対して肯定的な評価を下したことになり、「よいお店と思っているんだから、そのお店が好きだし、利用しよう(利用しないのはおかしい)」という気持ちが(無意識に)働いてしまうのです。
アンケートに顧客満足度調査を加える際の注意点とは?
ただし、この効果をアンケートで活用するうえでは、1つ注意点があります。
調査は基本、お客様の理解を深めるものであり、お客様の心理・行動に影響を与える意図があからさまな調査を設計・実施するのは、倫理的に問題があります。
今回説明したような効果はあくまで副次的なものとみなし、さりげなく、お褒めの言葉をいただけるような調査内容に致しましょう。