先週の17日(水)に、大手不動産会社・三井不動産の子会社である三井不動産リフォームが、過去2年間で営業利益を約10億円水増ししていたことがわかりました。東芝の例をはじめとして、子会社で粉飾決算が起きやすいのはなぜなのか、3つの理由を提示します。子会社の社長にふさわしい人物が現れぬなら、子会社はむやみに増やさないことが賢明です。
子会社で粉飾決算が頻発するのはなぜなのか?
先週の17日(水)に、大手不動産会社・三井不動産の子会社である三井不動産リフォームが、過去2年間で営業利益を約10億円水増ししていたことがわかりました。
未完成工事の前倒し売上計上、下請け業者への支払いの次期計上などを行っていたようです。
東芝、富士フイルムをはじめ、子会社による粉飾決算が頻発しており、非常に気になるところです。
そこで本稿は、子会社で粉飾決算が頻発しやすい理由について考えてみたいと思います。
子会社で粉飾決算が頻発しやすい3つの理由
1)監視の程度がゆるくなりがち
子会社で粉飾が起きやすい1つ目の理由としては、監視の程度が親会社と比較して薄くなることが挙げられます。
子会社を立ち上げる目的は多岐多様にわかれますが、メジャーな目的の1つに会計区分を明確に分けることがあげられます。
子会社独自に決算が締められるということは、その決算へ親会社の監視が薄くなり、子会社の恣意性が介在しやすくなることを意味します。
2)子会社の経営者に課せられた責任の限度は比較的軽い
2つ目の理由は、創業オーナーがいる親会社がある場合、子会社の社長に課せられた責任の限度が比較的軽いものになる、ということがあげられます。
いわゆる内部統制は経営者次第で、その方針が大きく変わる部分です。
確かに、いわゆる創業オーナーも粉飾はします。銀行融資や公共事業への入札のために粉飾をすることもよくあります。
しかし、万一、その粉飾決算が明るみに出た場合、創業オーナーは全ての責任を負わねばなりません。
会社の名誉も失いますし、社員や取引先からの信頼も失います。
資金調達が必要であれば、個人資産を出す、担保を入れる、個人保証をつける、あらゆる方法を使って会社のためにやりきるしかありません。
一方でいわゆる子会社の社長の責任は、どんなに大きくても「会社を辞めること」です。負っているリスクが、創業オーナーとは全然違うのです。
3)子会社の社長が経営に精通していない
3つ目の理由として、子会社社長は実質的には、グループ内で見ると一部門長としての業務をしていることが多く、ビジネス全体に精通しているとは言えないケースが多くあります。
このような場合、粉飾の重要性、あるいはそれが明るみに出た時の影響を想像しきれません。
肩書は社長でも実質は1つの部門長クラスの人間であるがゆえに、事の重要性を理解せず承認をしてしまっているか、あるいは社内でも騙され、粉飾を見逃しているケースがよくあります。
本当の経営者を作れないなら子会社はむやみに増やさないこと
子会社の粉飾を防げるかどうかは、技術的にいっても、社内の雰囲気の観点からいっても、結局のところは経営者次第で決まります。
特に粉飾決算をおこしてしまうような子会社の場合、実質上経営者ではなく、一部門長としての業務しかできていないことも多いでしょう。
つまり、子会社粉飾決算が頻発してしまっている場合、核心的要因は、事実上経営者が不在なことに集約されます。
これを社内チェックで防ごうとすれば、ただでさえスピード感の乏しい日本企業の意思決定はますます遅れ、社内向けの仕事に忙殺されることになります。
やはり、本当の経営者を作り切ること、それができないのであれば、子会社をむやみに増やさないこと、これがポイントになるでしょう。