「職業に貴賎無し」江戸時代の商売人達から学ぶ商売人のあり方

経営

 「職業に貴賎無し」とよく言われています。確かに今の時代で露骨な職業差別は存在しません。ただし、「3Kの職業だって、立派に世の中の役に立っている職業なんだから、職業に貴賎なしで身分の高い低いも無いでしょう。」のように、「貴賎」という言葉は未だに使われています。この概念から抜け出すことを考える時に勉強となるのが、江戸時代の商人達の考え方です。

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「商売に貴賎なし」は皆が話す建前に過ぎない

 今日は商売人の方に勇気を与えるために、「職業に貴賎なし」というお話をします。

 貴賎というのは身分の事です。

 貴賎という言葉をもう少し噛み砕いて意味を考えてみると、身分が高いのか?低いのか?というところに行き着きます。

 この貴賎という言葉をオブラートに包んで表す上で、今の時代でよく使われる言葉に、「3K」っていうのもありますよね。

 「きつい・汚い・危険」みたいな。

 身分が低いって単刀直入には言えないけれど、「3K」という表現で何を表したいかって、そういうことなんだろうなと思っています。

 「3Kの職業だって、立派に世の中の役に立っている職業なんだから、職業に貴賎なしで身分の高い低いも無いでしょう。」みたいに、「貴賎」という言葉が使われています。

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江戸時代に生まれた「貴賎」のニュアンスは今も「区別」という形で残っている

 でも、よくよく考えてみると、身分の高い低いの話が出てくるっていうことは、「え?まだ身分制度があった時代の話かな?」って感じがしますよね。

 実はこの「貴賎」という言葉の明確な概念は、江戸時代に出来たものなんです。

 今は身分制度があった時代みたいに露骨な「差別」は無いですけれども、「区別」はしっかりとされているわけです。

 それをみんなが認めようとしないし、そういうことを考えたくない、考えなくても生きて行ける世の中だよね、という話で納得しようとしています。

 そういう訳で、商売人は未だに低いところにいますので、江戸時代に商売人達がどう差別と戦ったのかについて、ヒントとなるお話をしていきたいと思います。

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江戸時代に「貴賎」の区別へ真っ向から立ち向かった石田梅岩

 江戸時代には侍(士)が身分制度の1番上にいて、その下に三民(農・工・商)がいたと言われています。

 この三民が出来る前の教育用語みたいなものだと、士農工商って縦に並べられていたんですよ。

 今は農・工・商は3民として平等であるっていう教え方をするんですけれども、昔は、1.士、2.農、3.工、4.商、みたいな感じで教えていました。

 これは商売人が戦った、職業に貴賎なしの戦いから見ると、やっぱり士農工商の縦並びの方が若干、身分の表現としては強かったのかなぁという気はしています。

 職業に貴賎なしと言って戦ったのは、この商売人なんですよ。

 年代で言うと1700年頃、1600年頃に関ヶ原の戦いが終わって、徳川の体制が出来て江戸幕府が始まった頃、石田梅岩さんが商人の地位を上げるために頑張ったんです。

 弟子が数百人いたと言われている思想家なんですけれど、彼の主張を一言で表すと、

  「商人の本質は交換の仲介業であり その重要性は他の職分に何ら劣るものではない。」

 というものです。

 世の中って交換しないと回らないですからね。特に当時はコメ社会ですから。

 コメからお金へ、お金からモノへって。何でも色んな物を交換していたんです。

 その重要性は他の職分 士・農・工 と何ら劣るものではない。

 3民同志でどうとかではなく、侍まで混じえて「うちらの重要性は他の職分に何ら劣るものではない」って、梅岩さんは言い切っているわけです。

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日本の商売人が生み出した誇るべき「三大発明」

 というのも、日本という国は商業先進国でございます。

 日本の商業が発祥となる「3大発明」というものがありまして、それは「定価販売・薄利多売・割賦販売 」です。

 当時は江戸時代ですけれども、かなり最初の段階から定価販売というのが行われておりました。

 もともと考えたのが三井の創業者と言われているんですが、その人が1640年くらいに始めてます。

 定価販売って分かりますか?値段が決まっているんです。

 この値段だったら、誰にでも同じ値段で売ります。そのかわりちゃんと現金で払ってねって。

 それまでは、日本も海外も言い値で全て決めていたんです。信じられないかもしれませんが。

 これが、3大発明のまず1つ目です。

 それから今度は店を持ちます。それまで商売っていうのは、行商が多かったんですね。

  「ちょっとさ〜、たくさん売るためにさ〜でっかい店作ろうぜ。たくさん売るから、利益は少なくて良いからさ〜。」

 という具合です。

 いわゆる大型店舗型で、自分の店を作って薄利多売をしたんですね。これが三大発明の2つ目。

 それから3つ目は分割払いです。いわゆる割賦販売ですね。

 少し前までは月賦販売とか言っていました。

 今でもジャパネットたかたさんが「金利手数料はジャパネット負担〜!」とかって、割賦販売やっていますよね。

 これがかつて、日本が江戸時代に生み出した商売の3大発明!みたいな感じで言われています。

 商売というのは、商売の記録、複式簿記と言われていますけれども、そういう帳簿を作って広めたのはイタリア人、商売に関してかなり進んでいたのは日本とドイツと言われています。

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身分保障されている正社員になりたがる日本人

 そんな日本も、今になって問題を抱えています。

 職業に区別はあっても貴賎は無くなった、ところが雇用の貴賎はあるよね、という問題です。

 要するに、雇用では身分の高い低いが存在しているよね、って話です。

 では身分が高い方にいるのは誰かというと、正社員さんです。正社員さんは身分保障されています。

 なぜ正社員という身分保障をせざるを得なくなったかというと、基本的にはやっぱり選挙なんですよ。

 選挙に勝つために、正社員という身分保障をして政党にちゃんと票が入って、政党から業界であったり会社に向けて、きちんと税金が降りてくるっていう、そういうサイクルでちゃんとグルグル循環していたんです。

 ところが最近はその税金が降りてこない場合がある。

 雇われる方は「自分は正社員という身分が欲しい!派遣やパートやアルバイト、外注じゃなくて!」と思いますよね?

 でも業界としては税金が降りてくるわけじゃ無いとなると、「正社員になるなら、かなり残業が増えるよ。派遣やパート・アルバイトさんと違う働き方をしなくちゃいけないよ。」ってなる。

 それでも日本人って、正社員という身分が欲しいんですよ。

 身分が欲しいために一生懸命働いて、結果として自然にブラック企業が生まれてしまうんですね。

 でも今の時代、結局は一生懸命やっても人件費が出ないんですよ。人件費が出ないから、自ずと長時間労働になってしまうんです。

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江戸時代の商人は身分と関係ない激しい競争を行ってきた

 じゃあ、どうすれば良いの?ということで、もう1度江戸時代の商人道に戻ります。

 「商売は覇道である」という、なんだか信長の野望のような言葉があります。

 というのも、商人たちはお客様を喜ばせ満足させるために戦っていて、武士の戦いと変わらない競争社会にいました。

 なぜなら、江戸時代の商人の所で働いていた人たちには、雇用で区別された身分制度が存在しないんですよ。

 というのも、そもそも身分が低い人たちしか、商売の丁稚奉公っていうのは来てないんですから。

 お金が無いから、農村から丁稚奉公に行っているんですからね。

 そしてその丁稚奉公の中から、だいたい15歳くらいで才覚のある人のみが残れたんです。

 本当の意味の実力社会ですよね。

 何の身分も関係無く、実力のある人だけが本当の商売人になって、番頭になっていくんです。

 その時に根底となった、「お客様を喜ばせ満足させるための戦い」に身分制度は無いんですよ。

 江戸時代の商人の戦い方っていうのは、働いている人に身分制度は関係無くて、実力・腕一本で上がって来い!っていう凄くしっかりした考え方です。

 それからもう1こ。

 商人たちが自分の従業員たちに何を与えていったかっていうと、身分の低い者には「学」を与えるべきであり、「役職身分」を与えるべきではないと考えていたんです。

役職身分を与えるというのは支配階級を与えることにしかならず、役職や身分を与えられた人は人を支配することしかできない。

商人としてはそれではいけない。

身分の低い者には「学」、つまり学ぶ機会を与えてあげて、そして自立することを教えてあげる必要がある。

 こういう考えがあるから、商売人の間には暖簾分けという制度がありますよね。

 「1人前になったら、自分の店を持ちなさい。」という形で商売がどんどん広がっていったという、日本の良い歴史があります。

 魚をあげるよりも、魚の釣り方を教えてあげたほうが、丁稚奉公さんも商売人として大成するんじゃない!?って、昔の人は考えていたわけです。

 でも、最近の世の中はちょっとおかしな方向に行っていて、旧勢力側の支配下に置かれて戦後培われてきた「正社員が一番良い」という思考一色に染まっています。

 これって、とても危険な考え方なんです。

 先程も言いましたけれど、旧勢力側の会社でも、結局は一生懸命やった対価としての人件費が出せなくなり始めていますからね。

 これからの日本で商売をやっていくなら、江戸時代の商人道を参考として知っておいて良いんじゃないかなと思っています。