人生で5回居城を変えた織田信長から現代に生きる経営者が学ぶこと

経営

 戦国時代の英雄、織田信長はその居城を人生で5回も乗り換えました。他の戦国大名が、居城を不変のものとしていたことから考えれば、これは異例な行動でした。信長の居城乗り換えは、製品志向にこだわり続けるか、市場志向を目指すか、帰路に立たされる現代経営者にも多くの学びを与えてくれます。

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織田信長は人生で居城を5回も乗り換えた人物

 戦国時代の英雄を誰か1人あげろと言われれば、多くの人が織田信長(以下:信長)を思い浮かべることでしょう。

 信長は、1582年に起きた本能寺の変で非業の死を遂げましたが、実質的にはその時点で天下人だったと言っても良い人物です。

 彼は、早い段階から伝わったばかりの鉄砲を使いこなし、身分の低い百姓足軽から豊臣秀吉を見出し、更には既得権益を廃して自由取引を認める楽市楽座を開設するなど、いつでも進取の精神を貫きました。

 今で言えば、既成概念に囚われない、やり手のベンチャー企業経営者のような人だったのでしょう。

 もう一つ、彼の行動でこの時代においては、異例なものがあります。

 それは、本拠地となる城を、状況に応じて次々と乗り換えたことです。

 信長は、その人生の中で、居城を以下のように乗り換え続けました。

  • 那古野城:22歳まで⇒父親から譲り受けた城
  • 清洲城:30歳まで⇒尾張平定を実現するまでの城
  • 小牧山城:34歳まで⇒岐阜平定を実現するまでの城
  • 岐阜城:43歳まで⇒室町幕府を終わらせるまでの城
  • 二条城・安土桃山城:49歳まで⇒天下布武を目的とした城

 このように、城主となって以降、信長は5回も自分の居城を変更し続けたのです。

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信長はなぜ居城の変更に躊躇が無かったのか?

 他の有力な戦国大名で、これほど自分の居城を変更した人物は、信長以外にありません。

 なぜなら、戦国大名達にとって自分の居城がある国は、戦をするにせよ、何をするにせよ、その資金源として必至の場所だったからです。

 武田信玄は甲斐国の躑躅ヶ崎館、上杉謙信は越後国の春日山城を居城として、戦の度に外征して領地を広げましたが、必ず本拠地に戻り、自らその内政を行いました。

 それでは、信長がどうだったかと言うと、信長は自分が居城を移る度に、元の本拠地を自分の家臣たちに任せて、自らは先述の通り、居城を変え続けました。

 信長が居城を柔軟に変化させ続けられたのは、「一つの領地を支配し続けること」のみに固執せず、常に「天下布武」を目的として行動することを意識していたからにほかなりません。

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自社を市場志向で定義することができてるか?

 話を現代に戻し、読者の皆さんは、自分達の企業を一言で表すと「何をやっている会社」だと人に伝えられますか?

 きっと多くの方は、「◯◯を売っている会社だ」「◯◯を作っている会社だ」とすぐに答えられることでしょう。

 では、もう一つ質問をします。

 「貴方の会社は、将来この社会において、どのようなことを実現しようとしている会社ですか?」

 多分、この質問に対しては、多くの方が回答に窮することでしょう。

 これら2つの質問は、実は製品志向と市場志向を問う質問です。

 製品志向とは、現在自分達が行っている事業ドメインにこだわる企業の志向であり、市場志向とは、時代を超えて普遍的に自分達が社会へどんな価値を提供するかにこだわる企業の志向です。

 信長の事例に戻ると、「あくまでも尾張を自分で治め続けるため、那古屋城を離れない」ことが製品志向であれば、「天下統一を達成するために、居城を変え続ける」ことが市場志向と言えます。

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市場志向は事業ドメインの変化に耐える志向

 近年、私達を取り巻くビジネス環境は激変しています。特にビジネスの変遷は、インターネットの台頭によりスピード感を増しています。

 もしも、自社の定義を、「◯◯を売っている会社」「◯◯を作っている会社」としか捉えられていないとしたら、それに取って代わる商品やサービスが生まれた時、私達は自らを脅かすライバルの存在を見過ごしてしまいます。

 そうなると、顧客が代替サービスにシフトして、今の事業ドメインでどんなに業績が低迷しようと、これまでの事業ドメインに固執し、製品志向を捨てきれずに、確実に行き詰まってしまうのです。

 対して、自社を市場志向で定義づけて考えられているならばどうでしょう。

 例えば、あるタバコ屋さんが自社のことを、「日本一社員が幸せな会社を作り、顧客に最高のサービスを提供し続ける」と定義づけたとします。

 すると、たとえ現在、タバコ屋をやっていたとしても、「健康志向がかつてなく高まっている」「喫煙率が下がり続けている」という事実から目をそらさずに、新たな事業を躊躇なく考えることが可能になります。

  「健康志向が高まっているなら、いっそのこと、立地が良いから、タバコ屋をオーガニックジュースバーに改装しようか?」

  「喫煙者が肩身の狭い思いをしているなら、彼等が快適にタバコを吸える場所を作ったり、吸っても形見の狭くないタバコを作るビジネスを始めようか」

 と事業ドメインを今の形態から徐々にシフトさせ、「日本一社員が幸せな会社を作り、顧客に最高のサービスを提供し続ける」という市場志向を実現できるでしょう。

 何も手を打たず、そのまま衰退していくことを防ぐことができるのです。

 織田信長が居城を躊躇なく変え続けることで、自らの「天下統一」に向けて邁進したことは、現代の私達に市場志向を持つことが生き残りを実現するための秘訣であることを教えてくれます。

 画像:ウィキペディア

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