ヒット商品の裏には必ず「情緒価値」がある!バラの泡が出るカネボウの洗顔料に学べ

マーケティング

 テクノロジーが発達した現代、商品の機能そのもので大きな差を生み出すことは非常に難しくなっています。そこで、ヒット商品を生み出すために重視され始めているのが、消費者の5感に訴える顧客体験を兼ね備えた「情緒価値」の高い商品を開発することです。カネボウの泡がバラの形で出るエビータ・ビューティホイップソープは、その好事例と言えます。

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「機能価値」のない商品は基本的に売れない

 こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。

 今回は、ヒット商品を生み出すうえで、「五感に訴える」ことの重要性が高まっているということをご説明したいと思います。

 さて、商品は、そもそも対象顧客が抱えるなんらかの問題の解決、もしくは欲求の充足を果たすものでなければなりません。

 例えば、貸し手としての銀行は、顧客の「資金が足りない」という問題に対して、「融資」「ローン」という解決策を提示します。その対価として、手数料や貸付金利を得るわけですね。

 また、ファーストフード店は、「手早く、安く空腹を満たしたい」という欲求に対し、ハンバーガーや牛丼、うどん・そばといったメニューを提供することで顧客の支持を得ています。

 こうした、顧客の問題解決、あるいは欲求充足できる製品・サービスの価値は「機能価値」と呼びます。商品は、第一に「機能価値」を提供できていなければ意味がありません。

 すなわち、お金が足りなくて困っている人にとって、「お金を貸せない銀行」は無価値ということですね。(借り手の審査はさておき)

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近年重視され始めた「情緒価値」とは?〜カネボウ・エビータの事例〜

 従来、商品価値においては、「機能価値」を高めることに重点が置かれてきました。

 顧客の購買意思決定の判断基準が、

  「最も優れた機能価値を提供している製品・サービスであるかどうか?」

 に置かれていたからです。

 しかし、現代は、およそどの製品も「機能価値」に大きな違いがなくなってきています。

 もちろん、製品によっては、すぐ壊れるものと壊れにくいものなど、品質に歴然とした差があるものの、私たち消費者がよく知っている大手メーカークラスになると、どこの商品を買ってもたいした差はありません。

 すなわち「機能価値」だけで言うと、どのメーカーの商品を選んでも同じ、ということになります。(極論ではありますが)

 こうした状況の中で、ますます重視されるようになってきたのが「情緒価値」です。

 「情緒価値」とは、わかりやすく言えば、「かわいい」「美しい」「楽しい」「おもしろい」「ワクワクする」などの感情を喚起することができる特徴のことです。

 情緒価値が以前より重視されてきた商品カテゴリーもありますが、近年は、情緒価値があまり考慮されなかった一般消費財(日用品や家電品など)においても、情緒価値を高めることによって、他社製品に対する「競合優位性」を確保しようとするところが増えてきました。

 直近の例を挙げましょう。

 2016年9月1日発売のカネボウの新洗顔料、「エビータ ビューティホイップソープ」は、ボトルの両側のレバーを押すと、「バラの花」の形で泡が出てきます。

節約社長
エビータ・ビューティホイップソープHP

 泡がどんな形で出てこようが、「顔の汚れなどを除去する」という機能は変わりません。しかし、「バラの花」であることは、ユーザーの気持ちを和ませます。単なる泡を見ても心は動きませんが、バラの花だと心が動く。

 カネボウで、同製品の開発を担当した方は、

  “毎日の洗顔でワクワクしてほしい”

 と述べています。

 また、同製品はバラの香りがします。「視覚」だけでなく、「嗅覚」を通じても気分を高揚させることができるのです。

 「エビータ ビューティホイップソープ」は発売されたばかりですが出足好調、視覚、嗅覚にに訴える魅力的な洗顔料であり、一定のユーザーを獲得するのではないかと私は思います。

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購入の“プロセス”で五感へ訴える顧客体験を

 さて、エビータの例でもおわかりのように、これからのヒット商品を生み出す鍵は、優れた「顧客体験(カスタマーエクスペリエンス」」を提供できることです。

 すなわち、商品を購入することでの問題解決、あるいは欲求充足といった「結果」だけでなく、商品を利用する「プロセス」を楽しく、ワクワクものになるような工夫をすること。

 それは具体的には、視覚、聴覚、嗅覚、肌感覚、味覚などの「五感」に訴えることのできる「情緒価値」を付加することです。

 今度、ドラッグストアやスーパーなど、小売店に行ったら、それぞれの商品がどんな「顧客体験」を創出しようとしているのかを考えてみてください。

 そうした観察を続けることは、あなた自身が優れた顧客体験を提供する商品の開発ができるようになるための基盤となるでしょう。

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松尾 順

株式会社ジゾン
コンサルティング準備室 室長

早稲田大学商学部卒。マーケティング・プロデューサー。
ニールセン・ジャパン、CRC総合研究所でマーケティングリサーチ、コンサルティングに従事した後、電通ワンダーマンで、データベース・マーケティングやCRMの企画・プロデュースを経験。さらに、ネットベンチャーの立ち上げにも執行役員として参画した。

現在は、心理学、行動経済学といった消費者心理・行動の理解に役立つ学問分野の研究を活用し、売れる商品づくり、効果的なコミュニケーション開発に取り組む様々な企業をマーケティングリサーチからマーケティング施策の企画・運営までトータルに支援している。

株式会社ジゾンでは、CMSシェアナンバーワンのソフトウェア「HeartCore」の導入に伴うマーケティングコンサルテーションを担当している。

【著書】
『ブランディング戦略―ブランディングの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ) 』誠文堂新光社
『[実務入門] 営業はリサーチが9割! 売上倍増の“情報収集”完全マニュアル (実務入門)』日本能率協会マネジメントセンター
『先読みできる!情報力トレーニング (ビジマル)』TAC出版

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