「Windows10への強制アップデート」により、作業へ支障をきたした人や、慣れた操作ができなくなった等、多くの人が怒りを覚えているようです。なぜ私達は今回の出来事に怒りを覚えるのか?その理由は「説得の心理学」のキーワードである「コントロール感」で説明できます。ウィンドウズの対応を反面教師として見ながら解説いたします。
Windows10への強制アップデートに皆が激オコ
最近、フェイスブックやツイッターのタイムラインをにぎわしているものの一つに、「Windows10への強制アップデート」があります。
作業途中に突然アップデートが開始され、作成中の書類がおじゃんになったとか、朝、パソコンを立ち上げたら、知らないうちにWindows10になっていた等など。
強制アップデートに見舞われた人の「うわー」「ぎゃー」といった悲鳴が聞こえそうなタイムライン投稿が見られます。
さて、このWindows10の強制アップデートに対して、多くの人が「怒り」を覚えているわけですが、なぜ、私たちはこれほどの怒りを覚えるのでしょうか。
「そんなの当然でしょ」と言わず、心理学的に奥深い人間心理に迫ってみましょう。
人間は誰かにコントロールされるのを嫌がる
「いかに人を説得するか」を心理学的な視点からアプローチする「説得の心理学」のキーワードのひとつに「コントロール感」があります。
専門的すぎる内容は避け、簡単に説明すると、「コントロール感」とは、自分が判断・決定したことによって、自分が予期した、望ましい結果が得られたという認識のことを言います。
様々な研究から、「コントロール感」とは人間にとって極めて重要な認識であることがわかっています。
すなわち、人は「自分のことは自分で決めたい」生き物であり、自分のことを自分で決める自由が失われることは、人間にとってとても嫌なことで、怒りにもつながりやすい現象なのです。
ですから、基本的に説得の場面においては、相手の「コントロール感」に配慮した対応が必要だと言われています。
Windows10の強制アップデートは、「アップデートをするか・しないか」という意思決定の機会が与えられなかった、すなわち「コントロール感」を奪う行為であり、マイクロソフトのブランドイメージを更にに悪化させることにつながる、残念な企業行動だったと言わざるを得ません。
コントロール感に配慮した説得のテクニック
では、ついでながら、「コントロール感」に配慮した、適切な「説得のテクニック」をご紹介しましょう。
「説得」とは、相手に対するなんらかの働きかけ、コミュニケーションを通じて、こちらの望む判断・行動をしてもらうことです。
命令して、強制的に自分の意のままに動かすことができる相手に対しては、そもそも「説得」する必要がありません。
しかしながら、現実の交渉場面では、自分の意思を無理やり押し付けようとするケースがしばしば見られます。
これは、相手の「コントロール感」を奪う行為ですから、激しい抵抗にあい、交渉が決裂する可能性が非常に高くなります。
そこで、交渉上手、説得上手の人はあたかも、相手が自分の意思で判断したかのような話の展開にして、うまく交渉締結に持っていきます。
すなわち、相手の「コントロール感」を奪わず、むしろうまく利用するのです。
例えば、こちら側の案を受け入れてもらいたいとき、YES/NOで迫るのではなく、複数の代替案、たとえばA、B、Cの3案を示して、どれがいいですかという話にする。
これは、実質的に「NO」という自由を縛っていますが、見かけ上、3案からの選択の自由を与えられているため、「コントロール感」を奪われた気がしないというわけです。
コントロール感を理解すると人間関係は円滑に
最後に余談ですが、このテクニックは、女性をデートに誘う場合でも非常に有効です(笑)
「今度、ディナーに行きませんか?」
このように切り出すと、YES/NOしか選択の自由が無いため、デートに誘っても断わられる可能性が高まります。(皆さんはこれやってませんよね?!)
ここで、
「私のお気に入りのレストランに、イタリアンのお店と中華のお店があるのですが、どちらかに今度ご一緒しませんか?」
と誘えば、NOという選択肢の存在が弱まり、どちらに行くかという2択からの判断になりやすいため、デート成立の確率が高まることでしょう。
コントロール感について理解すると、ビジネスにおいてもプライベートにおいても、人間関係を円滑に保ちつつ、より自分にとって好ましい状況を作ることができるようになります。
今後も、「コントロール感」についても、様々な事例をご紹介していきますね!