説明を求められると答えられないのが、「解雇」と「雇止め」の違いです。解雇は会社の一方的な意思により、社員との労働契約を解除するものであるのに対して、雇止めは双方の合意により、期限が訪れれば会社が雇用を止めることが可能な方法です。一見、楽に見える雇止めですが、そこには大きな落とし穴があります。
雇止めと解雇の違いを明確に知らない人は多い
読者の皆様は、「解雇」と「雇止め」の違いを明確に説明することが可能でしょうか?
実は、言われてみると明確にご存じない方が多いようです。
つい先日も経営者の方から、こんな相談を受けました。
「パートタイマーやアルバイトを雇っている時には、雇止めする時には、気を付けた方が良いと言われたました。
雇止めとは聞きなれない言葉ですが、具体的にどのような点に注意したらよいのでしょうか?
また、解雇とは、何が違うのでしょうか?」
解雇と雇止めの違いを把握しておかないと、確かにトラブルが発生する場合がありますので、解説したいと思います。
解雇の定義と3種類の解雇方法の違いとは?
まず解雇とは、会社の一方的な意思により、労働者との間で結ばれていた労働契約を解除することを言います。
解雇には、いくつかの種類があります。
一般的には、労働者の能力不足や病気や怪我等の原因で正常な労働契約を維持することができない場合に行われる「普通解雇」、業績悪化による「整理解雇」、そして従業員が重大な問題等を起こしたことによって労働契約が解除される「懲戒解雇」の3種類が、解雇の種類としてあります。
いずれの解雇も労働者の意思に関わらず、会社の一方的な意思によって労働者は職を失うこととなります。
解雇は、労働者にとって「生活の糧を失う」という重要な問題ですので、労働基準法では、労働者を解雇する場合には、30日以上前に予告するか30日以上分の解雇予告手
当を支払うことが定められています。(この規定により、労働者は、1ヶ月分の収入を確保できる)
雇止めの定義を知ると解雇より楽に見えるが…
対して雇止めは、もともと会社と労働者との間で結んだ労働契約に雇用する期間の定めがあり、その期間が満了した際に、会社契約を更新しないことを言います。
雇用期間に定めの無い正規社員を雇用する場合には、「雇止め」は、起こらないこととなります。
ちなみに、雇止めも労働者が職を失うという状況に関しては、解雇と何ら変わりません。
しかし、雇止めの場合は、期間が満了すれば契約は終了することを予め承知している訳でありますから、解雇のような予告解雇手当等の問題は発生しないこととなります。
ここまで読むと、雇止めって楽そうじゃないか!と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
いえいえ、雇止めはそんな簡単なものではありません。理由をご説明しましょう。
雇止めも5年以上続ければ解雇と要件が同等に
雇用期間に定めがある契約を何回も更新すると、労働者は、当然次回も更新されるものと期待を抱きます。
大手のメーカーが運営する工場に勤めている人など、何十年にも渡って雇用期間に定めがある契約を継続している場合もザラですよね。
ですから、契約が何回も更新され続けた後で突然、「今回は更新をしない」と雇止めをされた場合、労働者は堪ったものではありません。
生活に重大な影響を及ぼすこととなりますので、期間の定めがある契約が繰返し更新され、通算で5年を超えた時には、労働者の希望により、雇用期間の定めが無い労働契約に変更できる等、雇用期間の定めがある労働者を保護するため、法律が改正されています。
つまり、雇止めには、解雇時のような解雇予告手当等は必要ありませんが、雇用契約が一定回数更新されている場合は、解雇と同様に扱われるのです。
この点をきちんと把握しないで、「期間工扱いだから」などと、安易に人を雇用している経営者様は、思わぬところでしっぺ返しを喰らいます。
人の雇用は、どんな形態であっても慎重に取り組むべき課題なのです。