名宰相ビスマルクの「賢者は歴史に学び愚者は体験に学ぶ」という金言にあるように、過去の歴史から自分たちのこれから行くべき道を効率的に学び取るのは得策だ。
金融緩和によるインフレーション、国際貿易の自由化、愛国主義の膨張、僕達が生きる現代情勢は幕末のそれとよく似ており、これからを生きるヒントが満載だ。
日がまた昇り沈むように歴史は繰り返す
戦後70年を経過し、今までのやり方で日本が右肩上がり経済とならないことは自明の理である。少子高齢化により人口はこれから減少し、終身雇用・年金制度の崩壊した格差社会化も進むため問題は山積みだ。
一生を通じて自分自身が経験できることはわずかであり、自分が経験してきたことだけで物事を判断するにはあまりに難しい時代が待ち受けている。過去の歴史から効率的に学び、自分の行く道を決めることは懸命な一つの手段だ。
世界NO1ベストセラー「聖書」のコヘレト1章9節には
「かつてあったことは、これからもあり、かつて起こったことは、これからも起こる。太陽の下、新しいものは何ひとつない。」
とある。
またドイツ帝国の礎(いしずえ)を築いた鉄血宰相ビスマルクも
「賢者は歴史に学び愚者は体験に学ぶ」
と述べている。
そして僕達が生きる時代を取り巻く情勢は、まるで幕末の時代に生きていた人達が経験していた時代と酷似した部分が多いのだ。ぜひ2つの時代背景を比較してみよう。
僕達の生きる現代は江戸時代幕末とよく似ている
「幕末」という時代に明確な年代定義はないが、黒船来航(1850年台)から江戸幕府崩壊(1968年頃)までの情勢は現在の情勢と酷似している。
自治体は慢性赤字
300有余を超える諸藩が諸国を経営していた江戸時代末期に、自力で藩経営を黒字化できていたのは、薩長土肥に長岡藩くらいの片手であまるほどだった。現在の日本では、大規模な補助金バラマキによって地方自治体が全体で黒字化しているように見えるが、実際の純粋収入額を支出額で割り出した財政力指数では全ての都道府県が収入よりも支出が上回った状態となり、全体で1,000兆円を超える借金を背負う。すなわち「赤字」である。
国際貿易の自由化を迫られている
ペリー率いるアメリカの黒船が浦賀に来航した後、貿易条約と開港が実現し、日本の鎖国は約200年の歴史を終えた。江戸幕府ではそれまでに「鎖国状態」で様々な経済改革を行っていたが、自力の経済成長はもはや無理と判断した結果であった。現代の日本は当時と比較し、国際的にも有利な地位を築いているが、自力(国内)のみでの経済拡大は難しく、TPP(環太平洋連携協定)加盟への国際的圧力を拒むことが不可能な状態となっている。
愛国主義が膨張している
西欧諸国の帝国主義による侵略に対する恐れや、鎖国廃止による自由貿易化に反対し「天皇を尊び、外敵を撃退しようとする」尊皇攘夷運動が1850年台の幕末を席巻した。現在でも、中国・韓国といった隣国との間で領土争いが起こっていることも影響し、思想が「愛国主義・外国人排除」に偏る風潮となっている。
金融緩和によるインフレーションが起こっている
幕末には自由貿易による金の流出を防ぐために貨幣が大量に発行され、インフレーションが起こった。1850年台からの10年で日本人の主食である米の価格は約10倍以上に跳ね上がったという。現代の日本でも異次元金融緩和措置がこの3年で二度行われ、インフレーションが起き始めているが、今はまだ入り口でしかない。
幕末後何が起きたか新しい時代がはじまる
赤字の解消に向けた待ったなしの大幅増税、TPPによる大幅な国際貿易の規制緩和など政治/経済分野で、痛みを伴う試練が待ち受ける。
規模や実績に関わらず、新たな仕組みや制度に対応できない旧来型の企業や人材が、淘汰されるだろう。それはまるで明治維新で旧来の幕藩体制が消滅し、士農工商制度がなくなったときのように、インパクトのある変化かもしれない。
歴史は繰り返すという原則で再度幕末の日本を振り返ると、鎖国の終わりをきっかけとした倒幕運動、その後の明治維新に至る大きなうねりの中、坂本龍馬、西郷隆盛、伊藤博文、といった若い人材が数多く歴史の表舞台で活躍した。また、名はなくとも時代の風を読んだビジネスマン達が世界に飛び出し、近代国家日本の基礎を作った。
大きな時代の変動をつかみとり、変化に対して柔軟に対応できるものが、次の時代を切り拓いていくはずだ。
※トップ画像Wikipedia「黒船来航より」