ある喫茶店を取材したときのこと。店主がこんな話をしてくれました。
お昼時間に良く来店するお客様から、こう言われたそうです。
ここでお昼も食べたいからカレーやチャーハンも出してくれないかな?
「顧客ニーズを聞くべきでない」は正しい判断か?
この店主は、きっぱりと断ったそうです。
彼はその理由をこう言っていました。
ウチは喫茶店です。確かにカレーやチャーハンを出せば昼食の客が来るかもしれない。でも客の言うことを聞いていたらウチは何の店か分からなくなってしまう。
店主は一部の顧客にニーズを聞くのではなく、あくまでも美味しいコーヒーを出すという自分の店のポリシーを大事にしたのです
コーヒーが美味しいという定評と店主の人間性と店の雰囲気で繁盛しています。
オン・ビジネスから見るか?それとも、イン・ビジネスから見るか?
先ほどの喫茶店の店主は、自分の店をオン・ビジネスの視点、つまり、顧客、競合他店、自社に3つから俯瞰して見ていたのでしょう。
店主は、顧客からの「カレーやチャーハンも欲しい」というニーズに対して、それだけでは判断しませんでした。
自店の周りを見れば、昼食用の美味しいメニューを出す店は何店もある。わざわざ、このような店と競合する必要があるのか?
自分は、美味しいコーヒーを出すことには自信がある。でも、カレーやチャーハンは、作ってもまあまあだろう。
つまり、顧客ニーズだけでなく競合他店や自店の強みも俯瞰して、メニューをどうするかを考えたのです。
実は、この喫茶店の、お客様が席に座れば、何も言わなくても好みの味のコーヒーを出してくれます。
店主が、何百人のお客様の好みをすべて覚えているのです。
「凄い記憶力ですね」と言うと「お客様に興味を持っているうちに、自然に頭の中に入って忘れないだけです」と答えていました。
まさにイン・ビジネスの視点でお客様に接していた結果、顧客サービスを極めることができたと言えるでしょう。
オン・ビジネスとイン・ビジネス両方の視点が大事
今回の事例からも理解いただけるように、結論を言えば、オン・ビジネスとイン・ビジネスは両方の視点をバランスよく備えることが大事です。
自分のビジネスの方向性を考えるとき、ビジネスプランを考えるときは、オン・ビジネスの視点が重要でしょう。
しかし、日々の業務では、お客様の立場に立って、どうしたら喜んでもらえるかというイン・ビジネスの視点が重要になります。
両方の視点をマクロとミクロで使い分けることによって、貴方のビジネスは顧客(Customer)、競合他店(Competitor)自社(Company)を見極めたバランスの良いものとなっていくことでしょう。