「今は不景気だから、安くしなければ売れないよ」売れない店舗の店主たちの主張をまとめると大体こうなります。しかし、これって本当でしょうか?多くの場合、安いものしか売れない理由は、高いものでも買っていただくための説明を行っておらず、顧客との関係性作りが希薄なことにあります。中小こそバリューセリングに活路を見出す必要があります。
「安くないと売れない」これが店主たちの口癖だ
商品の価格設定は、極めて重要です。
競合より安い価格設定で事業を運営すると、忙しいばかりで、ちっとも利益は出ない、いわゆる「働けど働けど猶わが生活楽にならざり」型の経営になってしまいます。
でも、利益が少なくても、売れるうちはまだマシです。
そのうち、自社より安い商品が出てくると、売上げ自体がバッタリと下がってしまいます。
では、価格設定を高くすればいいのか?というと、それもそれで難しいと感じる人のほうが多いようです。
今まで20数年間、私は商店街の店主からこんな声ばかりを聞いてきました。
「今は不景気だから、安くしなければ売れないよ」
「この地域の客は高いものには手を出さないよ」
「安売りのスーパーに客を奪われて、商店街は閑散としているよ」
つまり、売れない店主達の主張は、
「安くないと売れない」
ということなのです。
「安くないと売れない」は思い込みに過ぎない
しかし、商品の完売に成功し売れている店は、必ずしも安い店ばかりではありません。
私が、神奈川でプロデュースをしている夕市でのことです。
青果を販売する店が2店出店していました。
一方は、スーパーで良く見かけるような野菜を安く販売していました。
もう一方は、無農薬で栽培した、あまり見掛けない付加価値の高い野菜を販売していました。
決して安い価格ではありませんでした。
どちらの方が良く売れたと思いますか?
この記事の流れからいったら、後者の方だと見当が付きますね。
そうです。決して安くない野菜の店が、ほぼ完売状態となったのです。
お客様は安いものだけを望んでいるわけでない
「安くなければお客様は商品を買ってくれない」というのは、単なる思い込みでしかありません。
ならば、どうして安い商品が売れるのでしょうか?
その答えは簡単です。
高い方の商品を選ぶ理由が分からないからであり、その原因を作っているのは、高い商品の背景について説明をしない店舗自らにあります。
だから、安い方が売れるのです。
その商品の価値が分かれば、お客様は高くてもその商品を買ってくれるのです。
夕市でほぼ完売した店は、売り方が違っていました。
- 無農薬で栽培する際、害虫からどのように守っているのか?
- どんな食べ方をすれば美味しいのか?
こんな話をお客様との会話の中で伝えています。
一方の店は、「これをちょうだい」と言われると「はい、ありがとうございます」と言って売っており、ほとんど会話はありませんでした。
売り方の違い、これ明快ですよね。
「プロダクトセリング」と「バリューセリング」
かくいう私の妻は、毎日スーパーのチラシを見て、1円でも安い商品を狙って買物に出掛けています。
スーパーで売っているような商品は、どこで買っても同じような品質なので、安いものを買い求めますよね。
これは「プロダクトセリング」と言って、大量仕入れで原価を安くし、販売価格も安くしてお客様を獲得する方法です。
この方法は、量が多くなればなるほど安く仕入れられるので、大きな会社に有利に働きます。
それでも、昨今の大手スーパーマーケットの業績を見ていると、人口減少の時代に入り、この手法が日本国内では限界を迎えていることが理解できます。
一方、徹底的に提供する価値を高めて、お客様満足度を高める方法のことを、「バリューセリング」と言います。
これからの時代に「プロダクトセリング」という方法をとって、価格競争に巻き込まれていったら、消耗するばかりで息切れどころか倒れてしまうでしょう。
だからこそ、これからの中小企業には、「バリューセリング」という販売方法をとることが求められています。
価値を伝えるには「関係づくり」が欠かせない
あなたが提供する価値に対して納得できれば、お客様は高い商品でも購入してくださいます。
そのためには、価値を伝えることが必須です。
しかし、お客様との間に信頼関係がないと、なかなか価値は伝わりません。
そのためには、商品の価値と共に、私たち自身を知ってもらうことが必要です。
毎日、どんな気持ちでビジネスを行っているか?
どのようにお客様に喜んでいただきたいのか?
このようなことを伝えていくとともに、自分の出身地、趣味、好きな食べもの、こんな本を読んだ等々の情報を、積極的に自己開示する必要があります。
これらのことを行うことによって、お客様は貴方に親しみを感じてくれます。
商品が良ければ、更にお客様は貴方を信頼してくれるようになります。
このようにしてお客様との「関係づくり」を行うことが、価値を伝えていく前提となります。
そのための手段として、発展し続けるインターネットを利用した、ニュースレター、ブログやSNSなどを使わない手は、もはやありません。