CRMの概念が登場して20年、未だ「既存客の維持」という施策は軽視されがちです。
新聞業界もまた、既存客より新規顧客を大切にする業界ですが、奈良県で新聞販売店を経営していた青木慶哉氏は、真心を込めたCRM施策を実行し、15年で10倍の顧客を獲得することに成功します。
CRM施策を実行するで大切なことは一体何なのか考えてみましょう。
CRMの概念が登場して20年経つも既存客の維持を行わない企業は未だ多い
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
私の専門は「CRM(Customer Relationship Management)」です。
CRMは日本語では「顧客関係性管理」と訳されますが、簡単に一言で説明するとしたら、「新規客の獲得」よりも、「既存客の維持」を主目的とする営業&マーケティング活動のことです。
また、既存客維持を目的とする営業&マーケティング活動を支えるITシステムは「CRMシステム」と呼ばれます。
CRMという概念が登場して既に20年以上が経ちましたが、残念ながら、未だ「既存客の維持」よりも、「新規客の獲得」にやっきになっている業界・企業が多いのが現実です。
既存客を大切にし15年で購読世帯を10倍に伸ばした新聞販売店
さて、「新聞業界」もまた、ほとんど「新規獲得」にしか注力してこなかった業界のひとつでしょう。
日々、販売員の方が家庭を個別訪問し、
「6カ月購読無料にします、洗剤つけます、野球のチケットあげます・・・」
などと言いつつ、あの手この手、プレゼント攻勢でなんとか新規購読契約をゲットしようとしてますよね。
こんなふうに、CRMとは無縁に思える新聞業界においても、既存客を大切にすることで大きく業績を伸ばした新聞販売店があります。
現在、MIKAWAYA21取締役を務める青木慶哉氏が15年にわたり、奈良県生駒市で経営していた新聞販売店がそうです。
地元での評判が悪く、今にもつぶれそうだったこの新聞販売店を引き継いだ青木氏は、当初の購読世帯数1,190軒から、15年後には、その10倍の12,000軒にまで拡大することに成功しました。
青木氏が既存客へ心を込めて行ったCRM活動
青木氏が採用したさまざまな営業・マーケティング施策を、ご本人は明確に「CRM」とは意識されていなかったようです。しかし、話を聞くと、まぎれもなくCRMを実践されていました。
青木氏自身、新聞業界にまん延する新規獲得主体の営業活動に疑問を持っていました。
そこで、まずは、今、新聞を購読してくれている既存のお客様を大切にしたいと考えました。
そこで青木氏は、新規獲得のために渡していた洗剤のようなプレゼントを、既存の購読世帯にも配るということをやったのです。
それは、軽印刷機を購入、青木氏の思いなどを綴った「手紙」を毎日書いて印刷し、新聞と一緒に配るという施策でした。
CRMの極意は、顧客に対してきめ細かなコミュニケーションを行い、顧客からの信頼や好意、愛着を高めることです。
毎朝、新聞と共に届く手紙は、新聞店店主である青木氏の人となりが伝わるものであり、当新聞店のファン(ロイヤルユーザー)を増やすことに大いなる効果があったようです。
実際、購読者の中には、
「旅行などで顧客が不在になるとき、その間の新聞はいらないけど、青木さんからの手紙だけは持ってきて」
という人もいたほど。
また、「まごころ予算」という仕組みも採用しました。これは、当店の全スタッフが月2,000円の予算をもらい、担当のお客様に対してなんらか心づくしのことができるもの。
例えば、集金に行ったとき、高齢のお客様が膝が痛くて玄関まで出てくるのがつらそうなことを知ったとき、まごころ予算で「温湿布」を購入し、そっと郵便受けに入れてきたスタッフがいました。
ありきたりな洗剤や野球チケットではなく、顧客一人ひとりの状況に応じた、心のこもったプレゼントは、お客さまを感激させることができます。
これぞまさに、CRM施策の王道です。
知恵とアイディア・おもてなしの心が優れたCRM施策を生む
こうして、「あなた(スタッフ)がいる限り、新聞は止めないからね」と言ってくれるような、優れたサービスを提供する青木氏の新聞店は、最終的には12,000軒、年商10億と、新聞販売店としては有数の規模へと成長することができました。
私も若いころ、新聞配達や集金のアルバイトやっていたのでわかるのですが、ただ新聞を配り購読料を集めることしかできないのが新聞店だと思っていました。
しかし、青木氏の新聞販売店の取り組み事例を見ると、知恵とアイディア、また「おもてなし」の心があれば、いくらでも優れたCRMとしての「顧客サービス」が提供であり、業績にもつながるということがわかりますね。
青木氏の取り組みの詳細を知りたい方は、以下の本をぜひ読んでみてください。