従業員がオーナー社長や、知人などから「名前だけだから」と頼まれ、会社の業務にほとんど関与しない、いわゆる「名前だけ」の役員(取締役)になることがあります。
認められた感じがして、少し良い気分になるかもしれませんが、すぐに承諾することには大きなリスクが着いて回ります。
「迷惑はかけないから!」と言われても、即答することはお勧めできません。
名前だけでも役員になるのは悪い気がしない
従業員がオーナー社長や、知人などから「名前だけだから・・・」と頼まれ、会社の業務にほとんど関与しない、いわゆる「名前だけ」の役員(取締役)になることがあります。
場合によっては、「代表取締役になって欲しい」と言われるケースさえもあります。
立場上断れなかったり、どこかで『取締役』や『代表取締役』という名称に心が揺れるのか、就任承諾書に判を押すことがよくあります。
取締役や監査役などの役員は、株主総会の決議など法的に適法な手続きに従って、選任(就任)されていれば、簡単にその立場に立つことが可能です。
オーナーが100%株主の場合は、なおさら簡単なこと。
しかしながら、リクエストを受けたとしても、その場で「役員になる」ことは、絶対に許諾しないでください。
その理由をご説明します。
名前だけ役員も係争では訴えられる立場になる
名前だけでも役員になるメリットとしては、社会的地位の向上があります。
自分が名前を貸している会社の業績が著しく向上し、社会的知名度が増したりすれば、そのメリットは更に活かせるものとなります。
しかしながら、役員になることには、デメリットも着いて回ります。
名前を貸した会社が、トラブルを起こしたり、トラブルに巻き込まれたりした場合、「名前だけ役員」という言い訳(抗弁と言います。)は通るでしょうか??
答えはなんと、「NO!」なのです。
なぜなら、実際に役員としての任を担っているかなどは、係争の相手方には重要でないからです。
名前だけ貸していても法律上は、他の取締役の業務を監視する義務(善管注意義務)があり、その任務を怠った結果、取引先などに損害を与えれば、それを賠償する責任が生じます。
「報酬も貰ってないのに?」と抵抗しても、それは「一定の考慮をしてもらえる可能性がある」程度です。
法が保護するのは、『無責任に名前を貸した者』ではなく、現にその会社から損害を受けている相手方なのです。
絶対に迷惑をかけない!と言われたらやること
- 「絶対迷惑かけないから!」
- 「名前だけだから!」
という言葉を信じたために、損害を被ったケースは跡を絶ちません。
「役員会で承認されたことを証明するために、この契約書へ判子を押してくれ」なんて言われ、後になってみれば回収不可能な負債の連帯保証人になっていた、という人も多くいます。
『名前だけの“役員”』という甘い言葉の裏には、何が潜んでいるかわかりません。
もし役員になるようリクエストを受けたとしても、現在会社の財務状況に問題がないか確認すること、会社がトラブルを抱えていないか調べること、また役員になった後もこれらを確認できる状況にあるかどうかなど、よくよく熟慮してから返答することが賢明です。