中国は過去もこれからも自らを中華と名乗り続ける

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小説『ワイルド・スワン』は、完全なる社会主義国家・中国を描き出す一大叙事詩である。しかし現在の中華人民共和国は「王朝」の役割を成す共産党の支配を維持するためだけに社会主義を敷いているのが現状だ。国としての姿勢は王朝時代と何ら変わらず、増し続ける国力は紀元が始まって以来中華思想の根幹を成している。4,000年間彼らは何も変わらない。

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小説ワイルド・スワンの舞台は過渡期の中国

 『ワイルド・スワン』(Wild Swans: Three Daughters of China)は、1991年に発表された中国人女性作家ユン・チアンの自伝的ノンフィクションであり、全世界で1000万部を超えるベストセラーになった。

 1993年には、日本、スペイン、イタリア、韓国、デンマーク、ノルウェー、ハンガリーで出版されている。(中国本土で出版される見込みはまったくない。)
 
 纏足(てんそく)を強いられた最後の世代で、15歳で軍閥将軍の妾になった祖母、日本の過酷な占領政策を体験し、夫とともに共産党で昇進する母、家族ともども文化大革命に翻弄されたが、イギリス留学を果たす著者、の中国女性3世代の人生を同小説は壮大に描き出す。

 更に同小説が興味深いのは、人々の心の裡にある嫉妬や不満をうまく煽りたてて騒乱を作りだし、自分の権力を盤石なものとする毛沢東の天才的な政治手腕が事細かに描かれていることだ。

 無知を賛美し、知識人を農村に追いやって農民の無知を学ばせる。

 学校の生徒を扇動して教師達に「ブルジョワ学術権威」のレッテルを張って暴行させる等、ルサンチマン(弱者が強者に対して、「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情を持つこと)を思う存分吐き出させるように毛沢東は「庶民」を煽る。

 普段は「皆が不満を持っている」という形でしか不満を表明できないような臆病者達が、自分のルサンチマンにお墨付きを与えられ、やりたい放題の限りを尽くす恐怖もあますところなく描かれている。
 
 この頃の中国は完璧なる社会主義の共産主義国であった。なぜ中国は現在のように資本主義寄りの社会主義政策を取るようになったのだろうか?

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4,000年続く中央集権体制に変化は一切なし

 中国は現在、憲法で自身の経済体制を「社会主義市場経済」と規定している。

 もちろん、これは形容矛盾で、本来社会主義と市場原理は両立しない。

 何故なら、市場原理は私有財産制、自由な契約、価格競争などを前提とするが、社会主義ではこれらを基本的に否定するからだ。

 何故、このようないびつな体制をとっているかというと、共産党という王朝の指導を正当化し維持するためだ。

 社会主義をそのまま適用すると行き詰ることはソ連解体を見れば明らかであり、死に体の北朝鮮ですら多少の改革を行おうとしている。

 しかし、社会主義を否定すれば、社会主義を指導する政党である共産党の正当性も否定することになる。建前上、社会主義は正しいとしながらも、実際には市場経済を導入せざるを得ないのだ。

 中国共産党は現在の「社会主義市場経済」を、中国に合った社会主義だとして説明しているが、実際は「共産党指導下の資本主義」とぐらいに思っておくのがいいだろう。

 「王朝」が「党」に変わり、皇帝が国家主席に変わった以外に、中国の中央集権体制は4,000年の歴史を経て何も変わっていない。

 多少歴史的な話をすると、名実ともに社会主義だった中華人民共和国の分岐点は、1979年の第十一期三中全会に始まる。

  鄧小平の改革開放路線が中国の方針となり、現在に至っている。

 その移行過程の中、国有企業の払い下げで、不当に利益を上げた者や、生産請負制の中で突然豊かになった者、こういった人々が中国の富裕層をなしている。

 しかし、他方でそういった利益にあずかれなかった大半の人々は、安価な労働力として単純作業に従事している。

 外資が誘致された都市部ではそのような単純労働も可能だが、内陸部の農村では変わらぬ貧しい生活が続いている。

 これも勃興する王朝時代が織り成した4,000年の歴史で、何ら変わることはない。

 爆買いなどほんの一部、昔で言うなら士大夫層が行っているに過ぎないのだ。

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中華思想の根源をなすのは全体としての国力

 現在も西欧的な意味での言論の自由はなく、国の意向にそわない声を上げる者は政治犯として、その人物とその家族共々逮捕されて酷い目にあう という状態は変わらずだ。

 このあたり中国はワイルド・スワンの時代と何も変わらず、国民全体の倫理水準も相変わらず低い。

 しかし中国は国としては、下記の「歴史的国別GDP」を見てもわかるように、紀元1世紀からインドと双璧を成して、世界の経済で中心に居続けた国だ。
節約社長
The economist China’s economy overtakes Japan’s in real terms
 日本はどうだろうか?

 世界経済第三の大国とは言われているものの、国全体の国力においては歴史的に中国はずっと日本を上回り続け、中国を追い抜いたのは太平洋戦争後、一瞬で過ぎ去った数十年の間だけなのである。

 中国に追いぬかれたことに日本人は驚くが、中国人にしてみれば「小日本」に抜かれていたこと事態が屈辱だったわけである。

 成長が鈍化しているとはいえ、共産党の支配体制はしばらく終わりそうにもない。

 彼らを単純に敵とみなすのは簡単だが、どのようにその力となるべく戦わず、知恵を持って付き合うべきかと考えることも、日本が生き残るために重要な施策と言えよう。

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