志あるリーダーとして能力のある従業員を叱って伸ばす!闘将星野監督のように、未だにそう考えている社長さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、平成が終わりを告げようとする今、法律的に見ると、そのような考え方の元で、従業員を育てようとするのは明確に「クロ」です。人を雇うことはそれくらいリスキーな時代にあることを私達は認識する必要があります。
従業員さんを叱って伸ばすなんて面倒くさい
今日は、従業員さんを叱って伸ばすなんて考えは止めたほうが良い、というか、そのやり方だと面倒くさい、っていうお話です。
これは子育てなんかも同じなんですが、ちょっと前までは従業員も「叱って伸ばす!」みたいなね、そういうのが主流でした。
先日、お亡くなりになった星野監督のような感じですね。
また、逆の感じですと「褒めて伸ばす!」みたいな、そういう感じが良いよね〜、という流れの育成方法が流行ったときもあります。
時代時代に部下の育成方法にも流行りがあったわけです。
ただ、今は法律の問題があって、”叱って伸ばす”なんて絶対にやっちゃいけないような世の中になってきましたので、社長さん方にちょっと注意を投げかけておこうかなと思ってお話します(笑)。
人を雇って初めて分かる事っていうのは、特に一流企業にいらっしゃった方が初めて自分でメンバーを集めて仕事を始めるとね…本当にね〜感じることがあるんですよ。
「こんな事もできないの…?!歳いくつ?!もう30過ぎてるでしょ?!」
とかね、
「少しは頭を使ってくれんかな…!!」
とかね(笑)、
あとは「なんでいつもそんな言い訳ばっかすんの?!」って、でも社員にも言い分があって、「何言っちゃってんですか!私は説明しているだけなんです!!」ってね。
社長になると、こういう人達と一緒にやっていかなきゃいけないっていう現実が実際にあるわけです。
社長たちはやっぱり最初から志が高いですからね、最初はガンガンに叱りつけながら運営していこう!!!なんて思うんですけれど、そのうちやらなくなるのは、これ本当真剣なハナシ言いますけれど、こんな形で叱りつけてたら社長の命が1年もたないですよ、血圧上がりまくって。
ですから、一応頭抱え込んで「ウチにはなんでバカしかいないのかねぇ…タナカちゃん!(泣)」みたいな感じで、あとはもう、ちょっと放っておこうかなっていう気持ちになっちゃうんですよ。
つまり、中小企業の弱い3つ「広告・採用・教育」の「採用」を間違えると、「教育」するその気すら起きなくなるっていう現実があるんですね。
自責の人を採用できることなんてほとんどない
もう少し踏み込んでみましょう。
じゃあどういう人を採用した方が良いかというと、数が少ないんですけれど、自分の人生を自分で選んできたような人たちを採用したほうが良いんです。
自分で責任を取るっていう『自責の人』ですね。こっちの方が数が絶対的に少ないんです。
ほとんどが他責の人で、「◯◯が悪い」ってね、会社に入ってみても「募集広告に騙されたわ〜」とか「社長が悪い」やら「人事部長が悪い」って…しまいには「世の中が悪い!」とか言い出してね(笑)。
とにかく人のせいにばっかりする人がいましてね。
実際、自責の人を雇っている限りは、それほど心が打ちひしがれることはないです。
ところが、実際は他責の人の方が圧倒的に数が多いです。
数が多いですから、人のせいにする人ばっかりを実際集めてしまって、そしたら心はボロボロになっていきます。
向こうにも言い分があるんです。
「私が騙されたんです、あの社長は”悪”なんです!」ってね。
社長としては「いや、そんなつもりは全く無かった。自分が思っていた以上に仕事ができなかっただけなんだ」って。
自責か他責か見極めようにも法律が許さない
でもね、今の世の中だと、そういう主張が法律上は通用しないんですよ。
まずは面接です。
面接の時に聞いちゃいけない事が、とにかく多すぎるんです。
例えば、うっかり最寄り駅の話なんてしたら、それもうアウト!ですからね。
ですからどこから通うのかとか、そういう事さえも聞いちゃいけないし、特に自責か他責かっていうのは、あなたの人生は自分で決めてきた事なのか、それとも親に決められてきた事なのかとか、そうなると家族の事も少し聞いておかないとなってなるわけですよ。
ところが「家族」に関して聞いたら、これ1発アウト!です。法律違反ですから。
懲役と罰金刑かな?ありますからね。
それから「尊敬する人」なんかも聞いちゃだめです。
我々の時代だったら「坂本龍馬を尊敬してます!」とか、スポーツ選手だったら「イチロー選手を尊敬していて、自分もあんなふうになりたいと思ってます!」とかありましたけれど、それも聞いた瞬間にアウト!なんですよ。
それから「愛読書」ね、本もだめなんです。本を読むのか・読まないのかさえもだめなんです。
とにかくビックリするくらい「聞けない」んですよ。
…え?じゃあ結局、名探偵コナン並にね、目の前にいる書類選考を通ってきた人を、色んな形で「推測」するしかないのって。
基本的に聞いちゃいけないんで。
聞いちゃいけない事があまりに多すぎるんです。
一旦”採用”したあとは相当な理由が無いと解雇できない
でもそこで一旦”採用”というふうにしてしまったら、大体試用期間が2ヶ月から3ヶ月くらいは設けられているんですけれど、じゃあ試用期間中に全然働きが悪くてクビにできるかっていうと、実はできません。
一旦、採用通知を出して会社に入ってもらったら、基本的には「解雇権の濫用」を防がなければいけないって法律上はなっていて、要するに事業主側が解雇するなんてできないように法律でガチガチになっちゃってる。
2ヶ月間の試用期間中に、「もうホンットに仕事できないな…。彼・彼女はうちの会社に合わないな」と思っても、2つの理由がなければいけません。
「客観的合理的理由」とか、「社会通念上相当なものである」こと。
何を言いたいかっていうと、結局多数派が、誰がどう見たって雇えないよねっていうふうな判断をされない限り”解雇権の濫用”というふうになってしまうんです。
だから実際訴えられたら、もうおしまいなんですよ。
ですから、盗みはたらくとか、毎日遅刻して会社来ないとか、それだったらみんなも「それはおかしいよね、それなら確かに本採用はできないよね」って、それくらいのレベルで酷くないと本採用せざるを得ないんですね。
法律遵守するなら基本的に無視。叱ったら負け。
話は戻りますが、「こんな事もできないのか!」とか「少しは頭を使え!」とか「言い訳ばっかりするな!」っていうのを試用期間中についつい言ってしまったとしましょう。
もうこの瞬間アウト!ですよね。
要するに向こうも腹立つわけですよ。それで「叱られた!酷い言葉で傷つけられた!尚且つ試用期間でお終いにされた!」って訴えたら絶対に勝ちますからね。
つまり叱っちゃいけないんですよ。
だから、基本的には無視なんですよ、考え方としては。
本当にね〜、法律を守るっていうのは、ここまで今、中小企業っていうのは追い込まれているんですね。
人を採用したらもうアウト。
何億円っていう買い物をですね、相手に何も聞かずに「本当にこの人で大丈夫かなぁ」って、それで試用期間中だとしてもクビは切れない。
このくらい実は危険な状態なんですよ。
要するに「叱らない方がまだマシだ」って話です。