上下関係も、売上目標も、予算すらないにも関わらず、従来の組織論のアプローチに見えている限界を突破し、圧倒的な成果をあげる組織が世界中で現れている。それはティール組織である。ティール組織に中央集権的なリーダーは存在せず、従業員が組織の目的に合わせて自ら考え自ら動き責任を持つ。ユニークな実例を紹介しながら新しい組織形態について紹介する。
上下関係も、売上目標も、予算もないティール組織
上下関係も、売上目標も、予算もない。
従来の組織論のアプローチに見えている限界を突破し、圧倒的な成果をあげる組織が世界中で現れている。
ティール組織“Teal Organization”(青緑色の組織の意)である。
ティール組織とは、マッキンゼーで組織変革プロジェクトに携わったフレデリック・ラルー(以下、ラルー)が、世界中の組織について2年半に及ぶ調査を行い発見した新しい組織形態のことである。
ティール組織が出来上がるまでに、歴史上で組織形態は以下のような変遷を辿った。
- レッド組織:力と恐怖により支配する組織:マフィア、ストリートギャングに見られる権威主義体制
- アンバー組織:身分制度をもとに統治される組織:政府機関、カトリック教会
- オレンジ組織:イノベーションと利益の追求を目的とする能力至上主義の組織:BMW、エクソン、コカコーラなどの大企業
- グリーン組織:組織を家族と見立て、ステークホルダーの平等と幸せを追求する組織:ザッポス、ベンアンドジェリーズ
参考:Lean and Agile Adoption with the Laloux Culture Model
これについで出現したのがティール組織であり、この組織形態が今後世界中に広がっていくであろうとラルーは考えている。
これまで最新型だったグリーン組織の限界とは
現代の企業組織はオレンジもしくはグリーン組織の形態を取っていることが多い。
ただし、グリーン組織は、従業員に多くの裁量を与える一方、ステークホルダー間に固有の闘争と階層を取り除くことができない。
これに対してティール組織は、中央集権的なこれまでの組織構造とは異なり、自律分散的で、組織は個々が創造性を発揮するのを助けるプラットフォームとして機能している。
トップが表に立つ必要もなく、階層を取り除くことに成功しており、それぞれが組織の目的に合わせて自ら考え自ら動き、それに対する責任と決済権を持つ。
日雇い労働者にすら決済権を与えるトマト加工会社モーニングスター
たとえば、ラルーがティール組織の代表例としてあげるのが、世界最大のトマト加工会社モーニングスター“THE MORNING STAR COMPANY”である。
モーニングスターでは、従業員が全員マネージャーであるため上司が一切存在しない。従って、部長、課長などの肩書もなければ昇進制度もない。
従業員は全員、「トマト関連の製品やサービスを提供して、品質や対応の面でお客様の期待に確実にお応えする」という企業理念に基づき、自分と関係のあるメンバーと相談し、自らのミッションステートメントを明確にしたうえで行動計画を作成し、公の合意書へ落とし込んで会社に提出する。
合意書は全ての従業員が閲覧できる状態で公表され、合意書に基づく行動に対して、従業員には全ての決済権が与えられる。
どのように動こうが、会社は一切従業員に口出しすることがない。アドバイスも従業員間で自律的かつ相互に与え合うものとされている。
たとえば同社の日雇い労働者が、業務に欠かせない機械について「修理が必要だ」と考えた場合、誰かの決済を仰がずとも彼は勝手に修理へ出すことができる。誰か上の人間にお伺いを立てることは一切ない。
これが価値ある行為だった場合、彼の行為は決済権を有効活用し、会社の付加価値を高めたとして賞賛されるのだ。
報酬は合意書に対するその従業員の実践状態について、彼の事業に関わる他の従業員が客観的に評価する形で、公正かつ透明に決まる。
一見すると成り立たないように見える組織形態に思えるかもしれないが、モーニングスターはティール組織の形態で、20年以上に渡り売上と利益共に2桁成長を遂げている。
モーニングスターに代表される、個が主役であり、自律分散型のティール組織について、その実態を記す、「ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」が1月24日に和訳出版される。
この組織形態は、通貨概念や労働者の働き方に劇的な変化を起こすと考えられているブロックチェーンともすこぶる相性が良い。
優秀な仲間を集め、5年後10年後の働き方にフィックスした組織を作りたいリーダーには、ぜひ一読をおすすめする。
英治出版 (2018-01-24)
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