葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とした機能性表示食品販売事業者16社に対して、11月7日に景表法措置命令の処分が下りました。今回の事案については、各社が措置命令処分前に異例のお詫び社告を出したことで注目を集めていました。消費者庁はこれをどう判断したのでしょうか?お詫び社告を出すタイミングはいつが最適か解説いたします。
「葛の花」機能性表示食品販売事業者16社に景表法措置命令の処分が下る
今日は、「お詫び社告のタイミング」について考えてみたいと思います。
皆さんも既にご存じかと思いますが、葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とした機能性表示食品販売事業者16社に対して、11月7日に景表法措置命令の処分が下りました。
参考リンク:葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の販売事業者16社に対する景品表示法に基づく措置命令について (消費者庁 平成29年11月7日)
「葛の花」と言えば、措置命令処分前の異例のお詫び社告騒動で、6月頃から注目を集めていましたが、ついに行政の判断が出た!というところです。
機能性表示食品で初の景表法措置命令であり、食品分野で過去最多の16社一斉措置という点でも、業界にとって大きなインパクトを与えています。
消費者庁の大元慎二表示対策課長は会見で、「本制度は中小企業の活用を促すことも目的としているところ、今回の処分は制度を活用する上で萎縮を招かないか。」との記者の質問に、「(届出の)データをしっかり見ておけば(今回違反となったような)表示は当然できない。中小といえどもデータを読み解けないということはない」と、バッサリ切りました。
措置命令処分前に相次いだ異例のお詫び社告が誤認排除措置と認められる
今回の事案で注目されたポイントの一つが、措置命令処分前に相次いだ異例のお詫び社告でした。
景表法の措置命令では誤認排除措置として、処分を受けた事業者に対して社告を命じます。(慣例では、日刊新聞紙2紙への掲載)
この措置命令を受けた後の社告というのは、消費者庁長官の承認が必要な事項となっており、その社告の内容については消費者に対して誤認の排除に足り得るのかという観点で確認された上で行われます。
一方、措置命令を受ける前の自主的な社告等は、事業者の判断によって行われるものであり、消費者庁が関知するものではないということ。
社告の方法や内容は企業判断に委ねられますので、「誤認排除措置」として認められるか否かの保証はないものの、ある程度自由裁量があると言えます。
今回の「葛の花」をめぐる措置命令前社告掲載では、措置命令後の社告であれば必ず入るであろう、違反となる広告に記載した「具体的表現への言及」がないものや、自社Webサイトでの掲載のみで日刊新聞紙2紙への掲載は行わないケースもありました。
幸い、今回、措置命令前に社告を行った12社は全て、誤認排除措置を講じたとして認められ、消費者庁は再発防止及び不作為のみを命じています。
お詫び社告は早いに越したことはない
今回の一連の流れを総合的に考察すると、もし、消費者庁の調査が入り、根拠データの不足など、措置命令を受ける可能性が高いと判断した場合は、ジタバタせずに早めにお詫びの社告を行った方が良いかもしれません。
それは、以下のような理由からです。
- 社告方法や内容をある程度自由裁量で行える
- 社告掲載が誤認解消措置と認められれば、課徴金対象期間を短縮できる可能性がある
- 企業の過失をいち早く認め一般消費者に周知することで、真摯な消費者対応として評価される可能性がある
今回の社告に対する企業判断に、課徴金制度が影響を与えた可能性があると言われています。そうであれば、制度の副次的効果として良いことだと私は思います。
Photo by ktsugita on Visual Hunt / CC BY-SA