時価総額とは、株価✕発行済株式総数という形ではじき出される企業評価の一指標であり、自社の株式時価総額の最大化を目標とする会社経営を時価総額経営と言います。日本でもソフトバンクをはじめとして時価総額経営を経営スタイルとして取り入れる企業が増えていますが、そこにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?解説いたします。
時価総額とは?時価総額経営ってどんな経営スタイル?
時価総額とは、株価✕発行済株式総数という形ではじき出される企業評価の一指標です。
この指標に重きを置き、自社の株式時価総額の最大化を目標とする会社経営を時価総額経営と言います。
米国では基本的な経営スタイルとして古くから取り入れられてきましたが、日本でこの経営スタイルが取り入れられ始めたのはここ最近の話。
その旗手は、ソフトバンクや楽天、その他ITベンチャーなど新興の企業です。
しかし、未上場企業には市場評価された株価がないため、なぜ彼らが時価総額経営を採用するのか、いまいちピンとこない方もいらっしゃることでしょう。
そこで本稿は、時価総額経営のメリットとデメリットをご紹介しようと思います。
時価総額経営を取り入れるメリットとは?
1)買収を重ねる毎に会社が強くなる
株価は利益額の程度だけなく、財務内容や成長性によっても左右されます。
ソフトバンクや楽天は本業の利益が出ていなくても、急激に成長している会社や成長が見込める会社を次々に買収して傘下に収めることで、グループ全体の成長性を期待させることで株価を押し上げる戦略を進めていました。
時価総額を大きくする際に必要な要素は、株価が上昇し続けることを前提として、発行済株式総数を如何に増やすかというのも一つの要素として必要とされます。
企業買収には発行済株式総数を増やす効果があるため、買収を重ねる毎に時価総額は大きくなっていきます。
時価総額が上がればM&Aの際も、交渉を自社にとって有利に展開することが可能になり、更に買収等がしやすくなるという循環が生まれます。
ソフトバンクが買収によって大きくなっていったのを見ていただければ、この意味がよく理解できると思います。
2)株主にとってプラスの施策
株価が上がるのは株主にとっては当然メリットです。特にキャピタルゲインを狙っている株主にとっては、大きな利益を獲得するチャンスが生まれます。
但し配当金を目的とする投資となると、日本で時価総額経営を取り入れている会社は、配当を抑制し内部留保して、新たなM&Aの原資に回す傾向が強いため、リターンはそれほど期待できないことが多くなります。
時価総額経営を取り入れるデメリットとは?
1)長期的な経営目標の設定がおろそかになりがち
時価総額経営のデメリットは経営戦略が短期的な視点が多くなるという点です。
目先の利益を追い続けたり買収を繰り返したり、株価を上げ続けることが目的となってしまう結果、会社組織全体の構造的な問題が置き去りにされ、5年先10年先の会社をどのような方向にもっていくのか長期的な目標が立てられない状況に陥ってしまいます。
あげく、無理な経営がたたって資金繰りがショートする、損失を隠すために粉飾決算に走る、といったことで破綻まで追い込まれてしまった会社もよく見受けられます。
2)外部要因に大きく左右される
また、株価は自社の要因だけでなく国内外の経済状況や政治的問題、地震などの災害など外部の要因でも大きく動きます。
あまり時価総額ばかりに焦点を当てていると、外部の変動要因に対して組織や事業の柱がしっかりしている会社でなければ株価の下落がそのまま経営危機に直結しかねません。
時価総額経営はメリット・デメリットが諸刃の剣状態の経営スタイルであり、実践する経営者に高度な実践力が求められます。
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