吉田松陰とジャック・ウェルチに学ぶ眠れる才能発掘術

経営

 今年の大河ドラマで副主人公として活躍する吉田松陰の開いた、田舎の貧乏私塾「松下村塾」は後に近代日本の基礎を作る人材を数多く輩出する。「才能ある人物は元からいるのではなく発掘し育てることで生まれる」を信念とする人材発掘・育成に対する考え方は、アメリカの伝説的経営者ジャック・ウェルチにも通ずる。採用活動が本格化する今、改めて彼らのあり方に学ぼう。

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大河の主人公・文(ふみ)は吉田松陰の妹

 今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公は、明治維新の精神的指導者・理論者として知られる吉田松蔭(しょういん)の妹、文(ふみ)である。

 ドラマの視聴率は、主人公の文が歴史の表に出てこなかった人物だったからか、10%台前半と振るわない。

 しかし筆者は週末の「花燃ゆ」視聴をいつも楽しみにしている。

 文の視点を織り交ぜながら、近代日本の礎(いしづえ)を築き上げた人物の躍動が、細かにみずみずしく描かれているからだ。

 3月8日(日)の放送では、吉田松陰の教え子たちへの名言「諸君、狂いたまえ!」がついに飛び出し、大いに興奮させてもらった。

 まるで、スティーブ・ジョブズの名言「Stay hungry, stay foolish.」を彷彿させるではないか!

 この言葉は自らを「狂愚(きょうぐ)」と称した吉田松陰が、実際に語ったものと言われる。

 3月現在、ドラマの舞台は、設立当初の「松下村塾(しょうかそんじゅく)」をイキイキとした姿で描いている。

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維新の偉人はなぜ松下村塾から生まれた?

 松下村塾とは、江戸時代末期(幕末)に長州(山口県)藩士の吉田松陰が講義を行った私塾である。

 松下村塾の最大の功績は、久坂玄瑞、高杉晋作、伊藤博文、山縣有朋、吉田稔麿、入江九一、前原一誠、品川弥二郎、山田顕義、と言った倒幕、明治維新、を通じて近代日本を作っていく錚々(そうそう)たるメンバーを輩出したことだ。

 なぜ小さな松本村(現・萩市の一部)で松蔭が開いた貧乏私塾に、これほどのタレント(才能)が集まったのであろうか?

 実はこれらメンバーは、集まった時点では何かを成し才を認められる存在でも、エリート(高杉晋作を除き)でもなかった。

 松蔭が集まったメンバーの才能を発掘し、育てる環境を作ったからこそ、彼らは世の中を動かすタレントとなったのだ。

 ヒントは松蔭の言葉に凝縮されている。

 「世に材なきことを憂いず、その材を用いざるを患う。大識見、材気の人を待ちて、群材始めてこれが用をなす。」

 現代風の口語にすると、「有能な人材がいないと嘆くのは、人材を上手に活用できないことへの言い訳でしかありません。人材を上手く活用できない事が重要な問題であり、優れた判断力や知識を持つ人間の采配があれば、多くの人材が活躍できるようになります。」という意味になる。

 長州藩にはもともと、明倫館というエリート養成の藩校があった。ただし明倫館は士分(侍)と認められた者しか入学できず、町・農民はもちろん、武士に仕えながら卒(卒族)、軽輩と呼ばれた足軽・中間なども入学できない場所である。

 松蔭は明倫館と対照的に、自分の元へ教えを求め訪れる人間があれば、「何のために学ぶのか?」を問いただし、自分の解を持つ者は、松下村塾へ身分隔てなく受け入れた。

 後に初代総理大臣となる伊藤博文(農民・後に士分出自)、「日本軍閥の祖」であり総理大臣にもなった山縣有朋ら(足軽以下の中間出自)は、明倫館に入れる身分ではなかったが、松蔭は彼らを松下村塾へ身分の別け隔てなく受け入れた。

 教え方の最大の特徴は、「武」の高杉晋作と「知」の久坂玄瑞の育て方に現れている。それぞれの長所短所をきちんと把握しながら、荒削りな二人をライバルとして意識させ、競わせ、それぞれの長所(才能)を伸ばす教育を施したのだ。

  朝から夜中まで続く講義は、対話を中心とするもので、学ぶことに意欲を持つ塾生は、自らの意見を積極的に発言することを求められた。二人も議論を大いに重ねたことだろう。

 後に二人が倒幕運動を背負い、長州藩のリーダー的存在となっていくことを、小童(こわっぱ)の時点で、松蔭以外に見抜いた人物は少なかったはずだ。

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ジャック・ウェルチにも共通する人材概念

 人材活用の観点で、松蔭と同じイズムを有する人物がアメリカにいる。
 
 ゼネラル・エレクトリック(以下、GE)を巨大なコングロマリット(複合体企業)に育て上げた、アメリカの伝説的経営者、ジャック・ウェルチである。

 彼は著書「ウィニング 勝利の経営」で人材採用にあたり、「賢い人材はどの学校の卒業生にもいる」と記述している。

 実際にウェルチは、採用の時点で本人の眠れる可能性を重視し、アイビー・リーグ(米東部・名門古豪)よりもビッグ・テン(米中西部・新興大学)や、軍隊出身者を積極採用し、自ら膨大な時間をかけて積極的にトレイニングし、コングロマリットを形成する人材に仕立て上げている。

 ウェルチも松蔭と同じように、「才能ある人物は元からいるのではなく、発掘し育てることで生まれる」ことを信念として人材発掘・育成を行ったのだ。

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目線を少し変えるだけで光る原石が現れる

 3月1日(日)から、今年度の就職活動が解禁された。

 会社説明会や面接の解禁が昨年より4ヶ月後倒しされたため、「短期決戦」で若者たちは目まぐるしく就職戦線へ挑みをかける。

 一部大手企業では、合理的かつ効率的に優秀な若者を大量採用すべく、学歴をメジャーな指標の1つとするだろう。

 実際に厳しい受験を切り抜け難関大学へ入ったことは、見える大きな実績のため一理ある。

 しかし、中小企業が同じ方法で積極的に採用活動を行うことは難しい。

 社会に眠る隠れた好人材と出会うために、「才能を有する人材を見つける目線」で採用活動を行うのではなく、「人材の眠れる才能を引き出す目線」で採用を行ってみるのはいかがだろうか?

 吉田松蔭とジャック・ウェルチのあり方がそうであったように。

 少し目線を変えるだけで、貴方の前にとてつもなく秘めたタレントを持つ人材が現れるかもしれない。

画像参照

ウィキペディア「吉田松陰」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E6%9D%BE%E9%99%B0

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