マーケティングオートメーションやAIの「チャットボット」のように、人とのコミュニケーションを代行してくれるサービスが普及しつつあります。しかし、コミュニケーションに心がこもってなければ顧客の心は逆に離れていきます。どんなにテクノロジーが進化しても、コミュニケーションの本質が、「人と人との間の気持ちの交換」であることを忘れてはなりません
自動配信「おめでとう」メールに顧客は白ける
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
誕生日月、あるいは誕生日当日になると、個人情報を登録してある様々なオンラインサービスやECサイトなどから、「お誕生日おめでとうメール」が届きますよね。
あれ、受け取ってどう思いますか?
誕生日月だけに使える割引クーポン付きならまだ許せます。しかし、単に「おめでとうございます」というメッセージが送られてくるだけだと、たとえ華やかなアニメーションが展開されるものだったとしても、なんか白けませんか?
白けてしまうのは、まさに「どうせ、プログラムで自動配信されてるんだな」というのが明白、「心」がこもっていないメールだからです。
質の低いコミュニケーションは取らないほうがまだマシ
私はずいぶん前から、企業が登録者に対して送信するお誕生日メールはやめたほうがいいと推奨してきました。
なぜなら、マーケティングにおけるコミュニケーションは、相手の信頼や好意、購買意欲を高めるために行うもの。そうした効果が薄いものはやる価値が低いからです。
通販コンシエルジュとして有名な村上らむねさんは、つい先日、日経MJのコラムで、心のこもらない「お誕生日メール」について「怒りを感じる」とまで書いていました。
怒りを感じるユーザーもいるとなると、送らないほうが良い、というより「送っていけない」と進言すべきだと、私は思いました。
さて、近年マーケティングオートメーション(以下、MA)の導入が加速化しています。MAは、見込客・顧客とのコミュニケーション、主にeメール配信を「シナリオ」を組むことによって自動化してくれる機能が含まれているツールです。
上記のお誕生日メールの配信設定も簡単にできますし、それ以外にも、ユーザーがサイトに訪問するたびに、おすすめ商品をお知らせするメールを自動配信するといったことも可能です。
私自身、MAの導入・運用支援サービスを提供している立場なのですが、MA活用によってコミュニケーションが自動化され、運用の手間が軽減される一方で、「心のこもらないメール」が増加してしまうのではないかという危惧をいだいています。
また、MAでは、顧客一人ひとりのお名前をメールに差し込んで送れる機能も標準で装備されています。一斉配信のメルマガであっても、「松尾様、いつもありがとうございます」といったパーソナライズされた文面が送れるのです。
メールを受け取る側は、こうしたこともプログラムで機械的に行われていることは当然ながらわかっていますが、とはいえ自分の名前を呼ばれて悪い気はしないものです。
ただ、メール配信時に設定を間違えて、「様」を追加し忘れると
「松尾、いつもありがとうございます」
のように、呼び捨てと感謝が組み合わさったわけのわからない文章が届いてしまいます。
実際、この間某MAベンダーから届いたメールでは、メール本文ではなく、件名に「松尾、最新情報をお伝えします」みたいな呼び捨てが入っており、失笑したものでした。
テクノロジーが進化してもコミュニケーションの本質は変わらない
MAだけでなく、人工知能、すなわちAIも「AIチャットボット」のように、人とのコミュニケーションを代行してくれるサービスが普及しつつありますが、プログラムだけに任せていると、多くの場合「心」がこもらないものになります。
コミュニケーションとは、本来人と人との間の気持ちの交換でもあります。
この点は、どんなにテクノロジーが進化しても普遍的な部分なのではないでしょうか?
MAやAIの導入にあたっては、「どんなコミュニケーションを行うのが良いのか」「どんなコミュニケーションはやっていけないのか」にたっぷりと時間を投じる必要があります。
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